- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122039278
作品紹介・あらすじ
あなたに会ったのも、会わなかったのも、すべて、この世界のなかでだった-。それぞれの孤独が共鳴しあい、日常生活を映すガラスの破片のような人々の世界が語られる、夜のように美しい小説。
感想・レビュー・書評
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途中で登場人物の誰が誰だかわからなくなったけれど、離れて存在している人間のことを一瞬でも思う人間がいることの美しさに貫かれた小説だと思う。思い出すということは、その相手が生きていようが死んでいようが、ひとしなみに生かすことになる。
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『季節の記憶』がほとんどの人が人生において必ず経験する一般的・普遍的な体験についての思案だとしたら、『残響』はその時その場所で誰々という一人の人間の身に起きた完全に個人的な体験についての思案だという印象を受けた。そういう意味でその二つの作品は相補的な関係だと言えるように思う。どちらの作品からも、作者は地動説的なものの見方を持っていて、自分中心ではなく宇宙の一部品として自分を捉えていることがうかがえる。俯瞰的でどちらかといえば冷たい見方だとも言え、そのため文章の温度は低く、共感に強く訴えることもほとんどない。しかし、そういうプラスの感情にたよらないものの見方でも、住んでいる世界の素晴らしさを見出すことはできるのだということを、人や物や生き物を介した人間関係の連鎖・交錯・共存を描くことでこの作品は表現しているのではないかと思った。私は共感に頼りがちな感情タイプの人間だが、こういう理知的・物質的な考え方に対する憧れもあり、とても感心する思いで読んだ。異なる視点を与えてくれる力作なんじゃないかなあ。
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保坂和志「残響」http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163170008 … 読んだ、すばらしい!何も起きない、粗筋にできない。他者へ伝わらないその他者本人について思いを巡らすことの意味は?思考による他者の存在と、不在の存在の確認。個人に閉じた思考を介して一人ひとり世界はつながっている(つづく
誰かのことを考えるとき、そこに居なくても、見知らぬ人でも、その人は確実に存在するし自分と関係がある。「コーリング」は小説内では社名だけれど、「残響」とのセットで、誰かのことを考えること=そこに居ない(伝わらない)相手への思考を介した呼びかけ、の意味のようで、いいタイトル(おわり -
保坂和志「残響」http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163170008 … 読んだ、すばらしい!何も起きない、粗筋にできない。他者へ伝わらないその他者本人について思いを巡らすことの意味は?思考による他者の存在と、不在の存在の確認。個人に閉じた思考を介して一人ひとり世界はつながっている(つづく
誰かのことを考えるとき、そこに居なくても、見知らぬ人でも、その人は確実に存在するし自分と関係がある。「コーリング」は小説内では社名だけれど、「残響」とのセットで、誰かのことを考えること=そこに居ない(伝わらない)相手への思考を介した呼びかけ、の意味のようで、いいタイトル(おわり -
「コーリング」と「残響」の2作品を収録。
最初、どう入り込んでいいのか分からなくて、戸惑ったけどかなり面白かった。何度か読み返したいと思わされる小説。 -
この文庫には、『コーリング』と『残響』の二編が入っている。『プレーンソング』『季節の記憶』を読んだあとに、この本を読んだ。最初に読んだ二つが、一人の人間の主観的な視点(それでも冷静で客観性を備えた人物が中心に置かれていたけれど)から描かれているのに対して、『コーリング』も『残響』も、映画のカメラのような、客観的な視点で描写が行われる。
特に、『コーリング』は、文章の感じも、一文一文が短くて、これまでとは異なる感じが強かった。かなり淡々としている印象を受けた。『残響』は、『コーリング』と比べると、文章の長さや感じは『プレーンソング』『季節の記憶』に近く、より一層、描かれる個人がどういうことを考えて生きてる人物なのかということが、詳細に述べられているように思う。
これまで、「ある考え方を持つ個人」が捉えた世界に焦点が当たっていたのに対して、「ある考え方を持つ他者と他者」で構成される世界ということが中心になった。そうすると、人と人との隔絶感というか、「わかりあえない」という前提が生まれて、そこからどう関わり合いをもつのか、自分ではない他人との関わりというのは、どういうものなのか、ということが問題の中心になってきたように思った。主観を持つ個体と個体がどんな関係を持っているのかを俯瞰して見ている気持ちになる。
自分の考え方に対する興味を深めていくと、だんだんと他者と自分との関わりということに関心が向いていくのだろうか、ということを思った。 -
残してきたものを響かせ合えるか。
響かせ続けられるか。 -
解説がやや押し付けがましかった。
小説自体の内容は観念色を前面に押し出した保坂和志作品といった感じ。