陛下 (中公文庫 く 11-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041776

感想・レビュー・書評

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  • 「久世さんの二・二六事件」とでも呼ぶべき小説。

    金木犀の香りとともに現れる美しい人の幻影…「恋闕」と呼ぶには些か甘美…に取り付かれた
    主人公の陸軍中尉剣持梓と 彼に大きな影響を与え又自身も同じ幻影を抱いている北一輝、
    剣持の家族、彼が出入りするうらぶれた女郎屋の娼婦たち(特に梓とおなじみになる弓)の物語。
    主人公の中尉は反乱を起こして、天皇の逆鱗に触れ殺されたいと願うようになる。
    現実を逆手に取ったような設定。
    2月25日浅草花屋敷での梓と北一輝の別れの言葉、「百年経ったらまた会いましょう」も良い。

    以前読んだエッセイ集「花迷宮」所収の「金木犀の窓の下で」「大いなる幻影」などが思い浮かぶ。
    金木犀の香りと掲げられていた御真影が渾然一体となったような久世さんの幼児体験。

  • 「陛下!」の一言に尽きる。
    義眼の裏側に描かれた陛下の肖像画…昭和天皇ってなんだろうな…。
    本当に声も動いているお姿も知らない方だからかもしれないけど、どうしてそんなにも多くの人にこんなにもお慕い申し上げられていたんだろう…と純粋に思う。
    今の私達が平成天皇を見ると理由もなくいとおしくなってしまうのと同じ”力”なんだろうか…。
    令和生れの人にも聞いてみたいな…。

  • ストーリーが大きく転がるタイプではなく、なんかこう、リリカルというか耽美というか。
    美しい表現なんだけど背景が背景だけにどこか自己陶酔的。
    目の前の光景か幻視か幻想か、それらが混じりあって読む者を幻惑する。
    しかし、戦後生まれの民間人に、久世光彦が描く戦前の青年将校や革命家の心情は胸やけを起こしそうに甘ったるい。

  • 2012.04.10

  • 久世光彦らしい艶かしい文体で、第二次大戦初期の遊女とその周りを描いた小説。遊郭の内部を中心に日本軍とクーデター、残された家族などを描くのだが、なかなか起伏が掴みづらいので、文学を読んできた人でなければ、読みづらいであろう。ただ、現状の描写と比喩、さらには夢や空想がお互いに絡みあい、どうにも色っぽい文になったうえ、脳内で自ずと映像化される辺りが久世文学の醍醐味である。ま、子供向けではありません。

  • 陸軍中尉・剣持梓は、「陛下」への思いをつのらせていた。戦死した兄が慕っていた北一輝との交流を通じて、梓もまた、叛乱へと身を投じてゆく。

    プラトニックといえば、この上ないプラトニックな恋愛小説。
    これは同性愛とも忠誠ともいえない不思議な恋愛小説でした。時折現れる陛下に関する追憶が真実なのか虚構なのか私にはわからず……。ですがその部分をあえてつきつめて考えようとも思わないのですが。
    弓がとても魅力的だったので、彼女の行く末が気になります。

  • 北さんがなんと言えばいいのか、圧倒的。すばらしい
    そして弓がかわいい

  • 久世さんの本は感覚に訴えるものが多い気がするけど、これは特に嗅覚を刺激する本だとおもう。一番好きな本。活字ではじめて酔った。

  • 読みやすい。

  • 「とんでもない本読んでしまった」というのがまずはじめに思った感想です。衝撃が強すぎて正直何書いていいのかわかりません…。

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著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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