馮道: 乱世の宰相 (中公文庫 B 6-16 BIBLIO)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122042827

作品紹介・あらすじ

唐末から宋へと到る戦乱の時代。中小地主の家に生まれながらも、博識多才と人柄を買われ、五朝八姓十一人の天子に仕えた五代の宰相・馮道。宋代の歴史家は、彼を何度も主君を変えた「破廉恥漢」と評する。その評価に疑問を抱き、生涯を捉え直すことで、これまでとは異なる「民を愛した」馮道の実像が鮮やかにうかびあがる。中国史の激動の時代、乱世の政治の表街道をしたたかに生きぬいた希代の政治家の生涯を余すことなく書き記した力作評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 五代十国時代、五朝八姓十一君に仕えた宰相馮道の事績を紹介する。特に宋以降の忠孝という考え方では非難の的となる人物の実際が良く分かり、後世における人物評価の難しさを実感する内容であった。

  • 五代の乱世に文官として評価され渡り歩き生き抜いてきた馮道の人生が、その時代背景とともに描かれる。“君に忠といわず国に忠といい、虚名に誤られることなく、何事にも現実を重視せよと主張した馮道”の方が、馮道を不忠の臣と非難する、名分に凝り固まった欧陽脩や司馬光らの宋代以降の文官たちより、今の世からするとずっと親しみが持てた。争わない性格とされるも、ここぞという時はビシッと諫言したり、遺命に背いてでも幼君を立てなかったり、現帝がいても趨勢を見て有力な皇族を勧進したりと現実主義者ぶりを発揮。ベースにあるのは”軍閥がのさばり歩くこの乱世においては、文官は大多数の人民のために自分のできる範囲のことで、精いっぱい努力するしかほかに道はない”という考え。とにもかくにも馮道の道筋がそのまま五代史にもなっていて、いままでより立体的に五代史をとらえられた。馮道がつくった二日酔いの薬爽団(ハッキリ)の製造法が「清異録」に紹介されてる、てエピソードがまた多才ぶりを示してて好き。

  • 五代十国の変節漢、乱世の宰相として有名な馮道の評伝。
    著者はかなり馮道に同情的な筆致である。
    実際、彼を批難していたのは宋や明など安定した王朝下であり、王朝に忠誠心を持ちようもない大乱世と比較すること自体おかしいことは事実。
    忠誠心を王朝でなく、人民に向けたと書いてあるが、長く王朝の変遷を見ていればそうならざるを得ないだろう。
    それよりも注目すべきは、馮道が次々と新たな権力者に重用されたことか。
    よほど有能でかつ人心を掌握するのにたけていたのだろう。
    フランス革命のフーシェと対比している論もあったが、次々と仕えた権力者を裏切ったフーシェと比較するのは馮道が気の毒に思える。

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著者プロフィール

大谷大学文学部教授・京都大学名誉教授

「2002年 『京大東洋学の百年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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