スカイ・クロラ (中公文庫 も 25-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 7180
感想 : 710
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044289

感想・レビュー・書評

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  • 戦争がビジネスとなり民間軍事会社に委託される世界を描いたSF小説、スカイ・クロラシリーズの第1巻です。
    1巻目ですがシリーズの時系列では最後の物語となり、映画化もされましたがそれとは決定的に異なる結末となります。
    一定の秩序は保たれつつも退廃的で不気味な雰囲気を持つ世界、戦闘機乗りの函南優一(カンナミ・ユーヒチ)を中心に物語は進みます。
    新薬実験で偶然誕生した思春期後に不老となる人間“キルドレ”と呼ばれるものがあり、彼もその一人です。
    事故死か病死か自死でしか死ぬことがないため、キルドレの死生観はどんどん簡潔になるか考え抜いて狂ってしまうかのどちらかであるようです。
    不老不死は人類の夢の一つと言えるかもしれませんが、もし技術の進歩により実際となった暁には寧ろ悩みが増えるだけのように思えました。
    矛盾を隠さず臭い物に蓋をしないカンナミの生き方は理想に近いのですが、ここまで達観するには人間性を削るほどの苦しみがあったのでしょう。
    読者によって十人十色の解釈や感想となるであろう考えさせられる一冊。
    2巻にも期待します。

  • 所々に素晴らしい比喩表現や、哲学的な言い回しがあり、感動してしまう。
    物語は決して派手ではないが、登場人物の営みが、読者の好奇心をくすぐってくる。というのも、仕草や表情の描写が巧い。
    一方で『どこか読み飛ばしてるのかな』と感じてしまうほど、登場人物たちの思考について謎が多い。意図的に分かりにくくされているのだが、人物像を把握するための情報が、最後まで出てこないのである。ただ冷たい人物とは言い切れず、どこか哀愁漂う彼らは一体何者なのだろうか。いつから、どこで、誰の為に、何と戦っているのだろうか。

    以下、ネタバレ含む。(備忘録)

    現代に近い時代設定である。戦争は公のビジネスとなり、敵とされる相手と戦っている。そこに国家という枠組みは登場しない。あくまで『敵』という描き方である。
    読者として、戸惑うのは、最後までキルドレってのが何かわからないこと。私は不安で不安で仕方なかった。どこかに伏線はあったのか?説明なんてなかったよな?など自問自答しながらも、最後になってようやく理解できた。
    クサナギスイトについては、人間らしさを覆い隠す何かを感じた。彼女の存在は、キルドレとは、という疑問を更に大きく膨らませる。決して定義付けできない何かを感じずにはいられない。
    主人公はカンナミ。彼の主観で物語は進行するが、常に人物像は曖昧であり、つかみどころのない異質さを感じさせる。というのも、彼はキルドレと言われる遺伝子操作された人間であり、記憶すらも操作された存在であった。
    戦う為に、人間らしさを失っているという表現も出来そうだが、主人公の思考は想像以上に複雑であり難解だ。カンナミの主観で進行する為、他の登場人物の思考の真意は測りかねるが、彼らキルドレにも個性があり、自らの存在と葛藤している様がいくつか登場する。特にミツヤ・ミドリとの対話には、核心とも思えるやり取りが含まれている。
    クサナギの内に秘めた想いとは何だったのか。人間らしさ、大人とは、生きる意味とは一体。
    最後にカンナミの行動は、一見すると不可解な結末を迎えるが、これはどう解釈すべきであろうか。何か救われない感情になる。彼は生まれ変わったんだろうか。

    黒猫(黒豹)シンボルの機体に乗る者は一体。続編があるので、古本屋で見つければ購入してみようと思う。
    よい読書ができました。
    読了。

  • 【自由研究】人はなぜ老いるのか?⑤

    「私は、死にたい。今夜でもOKだよ。ねえ、お願いしたら、殺してくれる?」(本書より)
    ***
    本書は不死の子供〈キルドレ〉を描いたSFですが、不死のためか、登場人物はみんな生への執着が少ないように見えました。
    不死は幸せか?
    考えてみると〈幸せな不死〉になるためにはいろんな条件が必要になりそうです。

    健康であること
    配偶者や家族も健康で不死であること
    世界が平和であること
    ある程度仕事があること
    ある程度お金もあること
    人口爆発の対策があること
    食糧問題も解決されていること
    AIに支配されていないこと
    年長者が老害と言われないこと
    ある程度世代交代も進むこと
    死ぬ権利があること…等々

    不死の世界もなかなか大変そうです‥。
    自分は古いタイプかもしれませんが、死が軽くなると生も軽くなる。と思っています。
    生が軽くなると冒頭のような言葉が出てくるのかもしれません…。

    あと一回続く(予定)

  • 終始、主人公の視点で物語が進行……というか主人公がみたものを、それこそ子どもらしく、みずみずしく描写しているような感じで、すごく澄み切った印象を受けました。ただ、子どもらしい透き通った目線を持ちつつも、どこか達観している、というか飽きている……諦めている?
    その雰囲気をひしひしと感じるのは作者の力量によるものだと思います。
    「わたしたち、永遠にこのままだよ」の絶望感の色さえも透き通った清廉な印象を受けます。
    どこにもいけない閉塞感。なにより自由な空を飛んでいる戦闘機乗りなのに、皮肉ですね。

    映画は既に観ています。押井守が好きなので。
    あれは、やっぱり押井守監督なりの解釈が入って、別作品になっていると思いますが、テーマソングは完璧です。
    なので、テーマソングがずっと読んでいる間流れていました笑

  • 恥ずかしながら、森博嗣先生の作品を拝見したのは今作がはじめてになります。代表作といえばミステリの傑作「すべてがFになる」ですが、このような作品も書かれることを知りました。

    本作「スカイ・クロラ」は、一見戦闘機と少年という若年世代向けに見えますが、実はそこかしこにテーマが散りばめられており、大人に響く寓話テイストの作品ではないでしょうか。というのも、キルドレと呼ばれる「大人にならない少年」を題材にしており、その世界観を存分に生かすことで、大人の知性と少年の矛盾する感情を描くことができているのではないかと思うのです。中でも「僕たち子供の気持ちは、大人には決してわからない。どうしてかっていうと、僕らは理解されることが嫌なんだ」という独白がありまして、これは自身の青春時代と重なるような気がします(当時は言葉にできませんでしたが笑)。このように、不思議な世界観でありながら、どこかメッセージ性が高くなっている印象を持ちました。

    そして、それに花を添えるのは、森先生の高い文章力でしょう。「完成された作家」とあるように、詩のような美しい文章が続きます。表紙の「僕がまだ子供で〜」と続く文を見ただけで購入された方もいらっしゃったかもしれません。

    また、解説の鶴田健司先生が仰っているように、説明がなくスムーズに話が展開されるのも評価されるべき点だと思います。このような説明しない手法は流れが軽やかですが、ときに説明不足を招く可能性もあります。そのような点を一切感じさせないのは、先生の高い実力あってこそだと思います。

    重めのテーマながら、どこか透明感の感じられる「スカイ・クロラ」は、現実から逃避させ、最後に一欠片の教訓のようなものを残してくれます。今困っている人こそ是非、昨今の先行き見通せぬ情勢から逃げ出し、森先生の世界に飛び込んでみましょう。

  • 飛行機の操縦の図解とか見てから読んだ方が楽しめるかも

  • 森博嗣作品との出会い。高校時代に図書室で出会い、何となく読んだ本。大人になり、それが森博嗣作品だと知る。
    今でも理解できていない事が多々ありますが、森博嗣作品は素晴らしい。

  • もりひろしさんの本、シリーズ一作目。
    淡々とかたられる描写には戦争という大きいものに対して何も知らないキルどれからの目線がしっかり書かれている。日常も含め後半に行くにつれどんどん判明していき(複雑さが)明るくなる感じがいい。
    ラストは衝撃だった。個人的に草薙水素が好きだからかも。

  • 人が乗っていても、乗っていなくても、堕ちていくのは飛行機であって、その飛行機の内臓まで考える暇なんてない。

    僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。
    でも……、
    それが、生きる、ということではないかと感じる。

    呼吸さえしていれば、死ぬことはない。食べて、寝て、顔を洗い、歯を磨く。それを繰り返すだけで、たったそれだけで、生きていけるのだ。
    唯一の問題は、何のために生きるのか、ということ。
    生きていることを確かめたかったら、死と比較するしかない、そう思ったからだ。

    どうしてコクピットを開けなかったかって?
    たぶん、死ぬときは、何かに包まれていたかったのだ。
    生まれたときのように。
    そんな死に方が、僕の憧れだから。

    ボールの穴から離れた僕の指は、
    今日の午後、
    二人の人間の命を消したのと同じ指なのだ。
    僕はその指で、
    ハンバーガーも食べるし、
    コーラの紙コップも摑む。
    こういう偶然が許せない人間もきっといるだろう。

    いつ堕ちても良い。
    いつ死んでも良い。
    抵抗があっては、飛べないのだ。

    同じ時代に、今もどこかで誰かが戦っている、という現実感が、人間社会のシステムには不可欠な要素だった。
    本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない。いえ、平和の意味さえ認識できなくなる。

  • 3.6

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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