スカイ・クロラ (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.61
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本棚登録 : 6080
レビュー : 663
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044289

感想・レビュー・書評

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  • 『スカイ・クロラ』再読3回目
    JKになってお小遣いアップした記念(?)で大人買いしたシリーズ。
    つぅ…とした感じで起伏があまりないストーリーが相変わらず心地よかった。
    確たる自己を持っていないのに周囲に合わせない主人公に魅力を感じてしまい読むにつれこんな人になりたいと毎度思う。2017.7.26

  • いつか来る死を予感しながら飛行機を運転している姿が、日本で盲目的に働いているサラリーマンとリンクしました。これから社会へ出るとき、転職を考えているとき、など仕事での価値観を見つめ直す節目を迎えたときに読みたくなる本です。

  • 大人にならない子供達が戦闘機に乗って戦闘を繰り広げる。
    子供なのに肝が座ってるし、私たちより大人な気がするけど…主人公たちは子供だと言い張る。
    森博嗣らしからぬ作品とも言えるけど、キャラ達の言葉には森さんらしい言葉が含まれて、やはり、森さんの作品だと再確認できる。
    ミステリー要素はないが、楽しめた。
    専門用語は出てくるものの、そんなのは関係ないので、十分だった。
    そういうのを気にする人には向かないかも。

  • 『僕たち子供の気持ちは、大人には決してわからない。
    理解してもらえない。
    理解しようとするほど、遠くなる。
    どうしてかっていうと、理解されることが、僕らは嫌なんだ。
    だから、理解しようとすること自体、理解してない証拠。
    僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。
    でも……、
    それが、生きる、ということではないかと感じる。
    そう、感じるだけだ。
    違うだろうか?
    生き甲斐を見つけろ、と昔のマニュアルには書いてある。
    見つけられなかったら退屈ひなるからだ。
    つまり、退屈を凌ぐために、生き甲斐を見つける。
    結局、昔から何も変わってはいない。
    遊びでも仕事でも勉強でも、同じだと僕は思う。
    淡々と生きている僕たちは、それがよくわかる。
    僕はまだ子供で、
    ときどき、右手が人を殺す。
    その代わり、
    誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう。
    それまでの間、
    なんとか退屈しないように、
    僕は生き続けるんだ。
    子供のまま。』


    『戦争を知らない大人たちに捧げよう。
    彼らの過ちは、三つある。
    子供たちが自分たちから生まれたと信じている。
    子供たちより多くを知っていると思い込んでいる。
    子供たちがいずれ自分たちと同じものになると願っている。
    それらの妄想の馬鹿馬鹿しさといったら、
    戦争よりも悲惨なのだから。』

  • 戦闘機パイロットである主人公カンナミが、戦場での命の駆け引きや基地の人間関係を通して「生きることとは何か」を考えていく作品。

    まず見応えがあるのが戦闘機の臨場感溢れるアクション。まるで自分も一緒に操縦桿を握って、空を縦横無尽に飛んでいるかのようなスリルと興奮を味わうことができる。ただ映像と比較した時に文章としての価値があるかというと、映像の域を超えてはいないように感じた。なんというか、伊坂幸太郎のスローモーションくらいのものが欲しかった。

    物語の構成としては、序盤から意図的に隠されてきた部分が最後に明らかになって、そこまでの流れに新たな意味が生まれてくるという形。でも謎自体にはあまり驚きはない。この構成自体が物語の間ずっと「謎は何なのか」を意識させ、読み手の想像を誘うからだ。これは作者が謎自体を重要視しているわけではないということだろう。

    また主人公カンナミは戦争を仕事と割り切っているのだが、それが徐々に揺れ動いていく様子が描かれている。ただそれはまだ動き出したばかりで終着した感はない。これは一巻しか読んでいない自分の邪推だけれども、シリーズが終わってないことから考えれば当然で、恐らくシリーズ全体を通してカンナミの物語が語られるのではないだろうか。

    でも「スカイ・クロラ」で描かれているのがカンナミだけだとはとても思えない。それに物語の視点はカンナミに据えられていて、言い換えれば情報がさりげなく制限されているような気もする。とにかく言いたいのは、もう一つの物語、それもクサナギの物語が隠されているのではないかということである。

    クサナギはカンナミの上司として基地をまとめている女性だが、かつてはパイロットだった一面ももっている。さらに作中では少しづつ彼女のプロフィールが明かされていくのだが、最後まで読んでみるとカンナミの将来の姿を予言しているように感じられないこともない。

    だが実際にクサナギが何を考えてどう行動してきたのか、という点については不明なままで、カンナミの知っている彼女の過去と彼女の行動からしか、それを推測することはできない。逆にいえばそれが作者の意図であり、読み手それぞれに想像する余地が与えられている。

    (追記:調べてみると次巻「ナ・バ・テア」ではクサナギの過去が、クサナギの視点で語られるとのこと。これは楽しみ!)

    不親切なまでに語られない。でもそこに味わいがあるのが、この「スカイ・クロラ」のような気がする。

  • 洗練された描写が、読み進める間にも一々趣き深く、変調な比喩表現も実に面白かった。
    “死”と云う無への変革に焦がれる草薙、“生”への思考が欠落した主人公のカンナミ。飛行を生死と捉え、叉人生を様々に比喩し、形容する。動きの無い感情が機械的な場景の中に融和され、繰り広げられる日常の断片を感情の表現に宛がう。
    プロローグとエピローグは夢の中として相互に繋がり、叉その夢は現実より鮮やかに色付けられている。

    戦争を普遍のものとし、死を一つの日常とした本書は、その人物各々に奇特な感性を持たせていて、会話文も心地好い重さを孕んでいる。主人公の思考の流れも、飛行時の描写も面白く、叉美麗に思う。

    詩の様に感情の無い哀愁や懐古を改行で強調しているのは、小説の形としては余り綺麗だと思えないが、それだけの意味や重要性を纏っている。

    読み易く、素敵な一冊だった。

  • この小説をなんと形容すればよいだろう、
    夢のような、真っ白な、線画のような、童話の様な
    綺麗な小説だ。清潔な小説だ。
    人が決して届かない、遥か上空を飛んでいるようなそんな小説だ。

    感情の無い主人公の目線で話が進むからか、
    または、人間がほとんど登場しないからなのか
    無駄な感情や欲望、人間の息遣いがまったくもって排除されている。
    だからこそ、この小説は完成されて美しい。

  • きた。久しぶりにビビッとな。
    正直今までは変なカタカナ英語の人くらいにしか思ってなかったけど、好きだ、このシャープな感じの文章。

    内容は明るくないし、世界の説明がほとんどないので分からないことだらけ。それでも絶妙。

    いやー素晴らしい。

  • 【あらすじ】
    主人公は戦闘機パイロットのカンナミ・ユーヒチ。カンナミが配属された基地には4人のパイロットと指揮官の草薙水素がいた。カンナミは何度か出撃を重ねながらも淡々と日々を過ごしていた。
    カンナミの前任者クリタは、噂によると草薙に銃で撃ち殺されたらしい。キルドレである草薙はカンナミに「死にたい、君も殺して欲しい?」と言う。キルドレとは、戦争のために作られた永遠に生き続ける人間である。
    カンナミは以前いたクリタの生まれ変わりだった。草薙はクリタを愛していたため殺した。そんな草薙をカンナミは銃で撃ってあげたのであった。

    【感想】
    生と死について考えさせられる、何度も読んでいるシリーズ。小説と映画では草薙の結末が異なる。時系列としては5/6番目に当たる。

  • 自分のものになった瞬間に、手が出せなくなる。
    自分のものは、何も壊せなくなる。

    つまらないことに執着するのが大人の特性であり、特権であり、そして役目でもある。

    みんな、僕が早く死ぬことを祈っていただろう。つまり、それが、エースだ。



    前半は、物語の設定を理解するのに少し躊躇う。
    第3章くらいから引きこまれる。
    淡々とした、詩のような文章で主人公の気持ちを表現する。

著者プロフィール

森 博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。作家、元研究者。名古屋大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程修了を経て、三重大学工学部助手、名古屋大学助教授。名古屋大学で工学博士を取得し、2005年退職。学会で数々の受賞歴がある。
作家として、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、同作で作家デビュー。S&Mシリーズとして代表作の一つに。『スカイ・クロラ』シリーズは本人も認める代表作で、2008年アニメ映画化された。その他にも非常に多くの著作がある。

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