スカイ・クロラ (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044289

感想・レビュー・書評

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  • 人が乗っていても、乗っていなくても、堕ちていくのは飛行機であって、その飛行機の内臓まで考える暇なんてない。

    僕たちは、確かに、退屈凌ぎで戦っている。
    でも……、
    それが、生きる、ということではないかと感じる。

    呼吸さえしていれば、死ぬことはない。食べて、寝て、顔を洗い、歯を磨く。それを繰り返すだけで、たったそれだけで、生きていけるのだ。
    唯一の問題は、何のために生きるのか、ということ。
    生きていることを確かめたかったら、死と比較するしかない、そう思ったからだ。

    どうしてコクピットを開けなかったかって?
    たぶん、死ぬときは、何かに包まれていたかったのだ。
    生まれたときのように。
    そんな死に方が、僕の憧れだから。

    ボールの穴から離れた僕の指は、
    今日の午後、
    二人の人間の命を消したのと同じ指なのだ。
    僕はその指で、
    ハンバーガーも食べるし、
    コーラの紙コップも摑む。
    こういう偶然が許せない人間もきっといるだろう。

    いつ堕ちても良い。
    いつ死んでも良い。
    抵抗があっては、飛べないのだ。

    同じ時代に、今もどこかで誰かが戦っている、という現実感が、人間社会のシステムには不可欠な要素だった。
    本当に死んでいく人がいて、それが報道されて、その悲惨さを見せつけないと、平和を維持していけない。いえ、平和の意味さえ認識できなくなる。

  • アニメにもなった森博嗣の代表作の第1弾。
     
    世界観がちょっと難しい。
    戦争を仕事に永遠を生きる子供たち。
     
    ちょっと私には難しく感じました。
    第2弾がどうなるのか?
    期待したいと思います。

  • 5月に入って晴れの日が続いて、きれいな青空を見ているとなんだか無性に読みたくなった。以前断片的に見た映画の記憶が、晴れた空の映像が多いものとして頭に残っているからだと思う。
    私は小説を読むときはいつも頭の中にそのシーンが映像で浮かぶのだけれど、このスカイ・クロラはどこを読んでいても、浮かんでくるのは青空だった。先入観と映画の情報があって全く初めて読むとは言えないから、まっさらな状態で浮かんだものではないけれど。そんな青い空の下を飛ぶのは戦闘機で、キルドレと呼ばれる戦死でしか死ぬことのない年をとらない子供たちが戦争をしている。私は飛行機にも戦闘機にも全く明るくないんだけれど、何となくコックピットからの眺めが頭に浮かぶ。描写が詳しくて、寝る前に読むと夢うつつな中で空を飛んでいたりする。読んでいると、飛びたくなる。戦争とは、かなしいもの、なのかもしれないけれど、そんな一言で表すことができるわけないけれど、この物語の中には、戦争に生きる意味を、術を見出している人間がいる。そして戦っていない者でも、何も荷担していないとは言えない、そういう世界なのだ、戦争が起こる世の中とは。そんなことが描かれていた。晴れた空の下に広がる物語は、美しく、どこか寂しかった。

  • 死を内包した物語。

    飛行機は、そもそも死を内包した乗り物である。
    それが戦闘機とくれば、死はますますあからさまになる。
    その飛行機乗りとして子どもを乗せる。
    それがスカイ・クロラの物語の世界である。

    空のシーンとした静けさを感じさせるような文章。
    淡々とかすな息遣いで語られる物語。

    主人公の僕“カンナミ”は草薙水素という女性の上司のもとに赴任する。
    ともに大人になるのを拒否したキルドレ。
    出会いから、恋愛めいた空気がかすかにたちこめる。
    しかし、それは、実は。
    僕は優秀なパイロット。
    注意深く、手順を踏まえて、敵を撃つ。

    物語は飛行シーンと地上シーンとで
    異なる空気感を醸す。
    飛行シーンは精密なマシーンのようにマニアックで静謐な孤独。
    地上シーンは人との関わりの中での孤独。

    キルドレは孤独。
    コクピットも孤独。
    群衆も孤独。

    「理解しようとするほど、遠くなる。
    どうしてかっていうと、理解されることが、僕らは嫌なんだ」

    「死にたいと思ったことがある?」
    「だから、しょっちゅう」

    「電話のベルが鳴ったり、止んだりするみたいなものなんだ」

    「鳴りっぱなしじゃ煩いし、鳴らなかったら、
     電話がどこにあるのか、みんな忘れてしまう」

    そして、キルドレのもう一つの志向は死。

    物語はラストへ静かに加速する。
    フルスロットルで上昇する飛行機のように。

    森博嗣の小説は理科系ミステリーという
    新境地を拓いた。

    理科系の段階的思考を果てしなく積み重ねて。
    あるいは仮説の構築をいくつも繰り返して。
    それらは頭脳の中で。
    そして、熱の少ない、静かな文章を紡ぐ。
    ラストまで一気に。

    静けさ。科学の果てのリリカル。
    それは宇宙飛行士が地球上に戻って見る
    宗教的境地にも似ている。

    このスカイ・クロラは
    空を飛ぶ物語。
    その文章はリリカルで地表を離れて浮遊している。

    カンナミは空を飛んで
    敵を撃ち落とし
    仲間とかすかに触れ合い
    草薙という上司と対峙する。
    永遠は一瞬。
    永遠に大人にならないこと。
    永遠は死。
    大人にならない子どもは
    だから、空を飛ぶ。

  • 映画の原作ということでちょっと気をひかれたので、買ってみました。出張のお伴、2冊目。
    (1冊目は「神様からひと言」荻原浩、3,4,5冊目は「グミ・チョコ・パイン」大槻ケンヂです)

    内容はまぁ、それほどわるくもないし、話のひっぱりかたもそれほど嫌味じゃない。飽きずに読めました。
    でもなー、カタカナ語を「伸ばさない」表記が、非常にイライラします。「カウンタ」「シャッタ」というような書き方ですね。IT関係の人の好きな表記法ですが、日常語までこれをやられると違和感があります。こういう人たちがお酒を飲む場所は「バ」なんでしょうか。(「バー」ではなく・・・)
    そうそう、意地悪を言うようですが、一生懸命そうやって書いているわりに、「ラダー」(飛行機の方向舵)は「ラダー」なのでした。ふふん。それもちゃんと「ラダ」にしないとおかしいんじゃないの!?
    というわけで、内容よりも表記法にいらだったので、星3つにします・・・。映画を先に見ればよかったのかなぁ。

  • 自分を高いところから見下ろしているような,そんな俯瞰的な視点で思考をする主人公。静かな物語と強い言葉。

  • 『スカイ・クロラ』再読3回目
    JKになってお小遣いアップした記念(?)で大人買いしたシリーズ。
    つぅ…とした感じで起伏があまりないストーリーが相変わらず心地よかった。
    確たる自己を持っていないのに周囲に合わせない主人公に魅力を感じてしまい読むにつれこんな人になりたいと毎度思う。2017.7.26

  • 映画があったなー、くらいしか知らなかったのですがふとしたきっかけで読もうと思いました。
    なんですかこの世界観は。詳細に説明されるわけではないけれど、徐々に明らかになっていく状況と、真実と、一緒にほぐされていく物語。死ぬってなんだろう、と考えさせられる一冊です。

  • クールを通り越して空虚な少年少女がすがすがしく格好良かった。途切れ途切れで改行で空白の多い文章も良い。こういうのが鼻につく人もいるのも分かるけど、この軽さは無理やり引き伸ばしたからではないと思う。

  • 淡々と話が進んで最後に大事な説明がくる。
    衝撃をうけたというより不意討ちに近いと思うような話だった。
    この話独特の主人公たちの不毛な会話はなんとなく好きかもしれない

  • いつか来る死を予感しながら飛行機を運転している姿が、日本で盲目的に働いているサラリーマンとリンクしました。これから社会へ出るとき、転職を考えているとき、など仕事での価値観を見つめ直す節目を迎えたときに読みたくなる本です。

  • 退屈を凌ぐことが、生きること。
    大人にならない、年をとらないキルドレにとって、生きることと死ぬことは、いることといないこととも捉えることができる。
    死なないことを願う人もいるが、死ねない時には、死ぬことを願うのだろうか。
    昔読んだ本で、死にたくないという感情を持つ時は、何かやり残したことがある時って書いてあった。
    キルドレにとって、飛行機に乗ることも、相手を撃ち落とすことも、ハンバーガーを食べることも、お酒を飲むことも、いつか撃ち落とされるのを待つ間の退屈しのぎでしかないのであれば、死にたいって思う感情は抱き得るのではないか。

  • 映画を見てから前情報なしで読んだので結末が違うことにびっくり。考察サイト等を読むと作品に込めた思いが原作・映画で違うのではないかというものがあり納得。
    説明過多の時代にぼんやりとした設定を用意しつつ深い入りしない点が非常に新鮮であった。
    映画は基本的に原作に忠実であるが何点か相違点がありそういったところを追いながら読むのもまた楽しかった。
    森博嗣の文体やキャラクタは気取った感じがしてそれほど好きじゃないところもあるが、かっこいいなって思わされてしまう妙がある。

  • 何気にこのシリーズだけは読んでいませんでした。買ってから2年ぐらい寝かしてたかな。
    独特の世界観がなのに、スッと理解できるのが面白い。アニメ版の表紙の方を買ってしまったので、青い表紙の方をもう1冊買うか悩み中。

  • 結局物語のテーマを掴みきれずに読み終わった。テーマが全くないというわけではなく、読み手によってそれは違ってくるだろうということ。しかし、たとえ何かしらのテーマを見つけ出したとしても、それを解釈していくのは相当の労力を必要とするだろう。「難しい」とはまた違う感じ。なんだろう。矛盾しているかもしれないが、透明すぎて(眩しすぎて)かえって「見えない」。僕の表現力だとこう表すのが限界だ。

  • 【よく使う言葉だけどこれは終わりの始まり】

    理解しようとすれば、儘撃ち落される。この物語を楽しむコツは風を読んで上手くその風に乗ることだ。

    ひらひら開いては閉じて。
    上と下はなくなって、ただ白いだけの空と、ただ暗いだけの空の間で踊るのは、ワルツ。

  • この透明感溢れる世界観はなんだろう?
    「戦闘機乗り」の特殊な感覚や感情は判らないけれど、「空」を飛びたいという気持ちは素直に共感できる。「地上」に戻りたくないという気持ちも。
    だから、彼(彼女)らは永遠の子供なのだ・・・と思う。

  • 絵画のような風景。映画のような情景。美しい文章と世界観が相まって形作られる世界。大人にならない永遠の子供、キルドレ達を通して、生きるとは何か静かに語りかけてくる。彼等は言う。大人には飛ぶことはできない、と。まだ僕はこのような美しい世界を見たことはない。まだ見れていないのか、それとももう見れないのか。どちらなのだろう。

  • 大人にならない子供達が戦闘機に乗って戦闘を繰り広げる。
    子供なのに肝が座ってるし、私たちより大人な気がするけど…主人公たちは子供だと言い張る。
    森博嗣らしからぬ作品とも言えるけど、キャラ達の言葉には森さんらしい言葉が含まれて、やはり、森さんの作品だと再確認できる。
    ミステリー要素はないが、楽しめた。
    専門用語は出てくるものの、そんなのは関係ないので、十分だった。
    そういうのを気にする人には向かないかも。

  • 灰色。
    ここにある世界は全体が灰色に包まれていて、
    過去も未来も遠くに霞んでいる。
    特別な子どもたち。彼らはその運命を知りながら、闘い続ける。
    映画も見たけれど、淡々とした言葉の中に、微かに心が揺らぐ場面ーそれはそっと風が髪を揺らす程度の場面ーが印象に残っている。
    幼さと大人びた感情という相反する感情の表現がとても上手く描かれた作品。

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著者プロフィール

森 博嗣(もり ひろし)
1957年、愛知県生まれ。作家、元研究者。名古屋大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程修了を経て、三重大学工学部助手、名古屋大学助教授。名古屋大学で工学博士を取得し、2005年退職。学会で数々の受賞歴がある。
作家として、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、同作で作家デビュー。S&Mシリーズとして代表作の一つに。『スカイ・クロラ』シリーズは本人も認める代表作で、2008年アニメ映画化された。その他にも非常に多くの著作がある。

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