完璧な病室 (中公文庫)

著者 : 小川洋子
  • 中央公論新社 (2004年11月1日発売)
3.54
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044432

完璧な病室 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 短編集。以下の2つが気に入った。

    「揚羽蝶が壊れる時」
    呆けてしまった祖母を"新天地"という老人ホームに預けることになった。
    しかし主人公は、祖母ではなく自分が異常なのではないかという疑問に支配され続ける。
    それは、一度考えると体中に広がる。自分が正常だとどうして言えるのか―。

    「ダイヴィング・プール」
    幼い孤児リエの泣きじゃくる姿と、学生の孤児純の飛び込みの姿、筋肉だけが自分を気持ちよくしてくれる・・・。
    孤児院を経営する親の元に生まれた彩の歪んだ何かが見える物語。

  • 個人的な好みで言うと、『冷めない紅茶>>>>>完璧な病室>>>ダイヴィング・プール>=揚羽蝶が壊れる時』という感じ。特に、『冷めない紅茶』を読んだのは二度目だったのだけれど、静かで、狂おしくて、さみしくて、うつくしい話だなあと思った。
    小川さんのお話を読んでいると、何だか拷問道具を眺めているような気分になる。残酷で、とてもうつくしい。

  • 初めての小川さんの本。
    全体的にアルコール消毒したような綺麗で冷たい文体の印象です。
    恋は恋と言わないかんじがもどかしくて脆そう。
    『ダイヴィング・プール』が一番好き。水泳男子の胸筋って素敵ですよね〜(^o^)

  • 小川洋子さんの初期作品ということで、後期の作品に比べれば荒削りな印象をうけたが、透明な、それでいてグロテスクな矛盾する2つの要素が彼女の中でまじりあい、静謐さを生み出している描写は相変わらずで引き込まれた。

  • 小川洋子女史の最初期の作品です。

    彼女の文学って、身体のどこかに何かしら欠如部分が有るんです。そこを埋めようと必死になっている様子がどこか切なくて、官能的で美しい気がします。
    標題にも成っている「完璧な病室」は病院という閉ざされた空間で死にゆく弟との時間を描いたもの。隔離された世界で美しくブドウを食べる弟と、外の世界に住む私の薄汚れた食事や生活の対比をすることで、弟の特別な存在感がとても鮮明に浮き上がってくるような気がします。

    他に三篇のお話がありますが、私はなかでも「ダイヴィング・プール」にかなりやられました。やられたというのは、本当に精神的に落ちてしまいまして。

    あらすじは、孤児院で一緒に暮らす純に心を寄せる彩。優しい心と美しく泳ぐ彼に夢中な彼女は毎日彼の泳ぎを見に行くが、彼はけしてそのことに触れようとはしない。けれど、無垢な幼子のリエの愛し方がわからない彩は、泣きだしたリエにいじめ傷つけるという残酷な気持ちを太らせることしかできない。そうして、腐ったシュークリームを与え入院にまで追い込んでしまう。けれど、純には全てを見破られてしまう。「いつも彩ちゃんをみていたから」というまるで愛の告白のような言葉とともに、ようやく後悔と罪深さと自分の澱んだプールの中に純は飛び込んでくれないのだと、思い知る。

    私自身、別に何か罪深いことをしたことは有りませんが、こういった感情に覚えはあります。何より、ここまでの負のオーラで溢れた文章でいて美しい世界を作り出せる作者に尊敬の念を抱いてしまいます。

  • 小川洋子の肉々しい話は苦手だ。すべては即ち生きることの描写なのだけれど、自分がとても醜い肉塊に思えてくる。実際そうなんだろうけれど(食物連鎖のサイクルからはみ出す生物に何の意味がある?)。駅で、駅員と警察を困らせる精神障害の女性を見た。地下通路で、暗いうろのような目ばかり目立つホームレスの男性とすれ違った。私はどちらも怖い。しかし、私とそういった人たちに差異なんてないのだ。アイデンティティという言葉で纏められる。うんざりしてしまう。

  • 2008年11月14日~15日。
    「完璧な病室」「冷めない紅茶」は面白かった。「ダイヴィングプール」はいまひとつ。「揚羽蝶が壊れる時」はちょっと冗長に感じた。

  • 2017年の最後は小川洋子の短編集で。最後の作品を除いて、死を軸としたストーリーである。

    白血病で入院した弟を見舞った際に、食べ物や生活を排除し、すべてのものが無駄なく存在する病室に気づく。日に日に弱っていく弟のしを意識したとき…。

    全体にシンプルに純文学である。つまりは、事件云々ではなく、人生の中の景色の変化を淡々と綴っていく作品であって、起伏の大きなミステリなどを読み慣れている人にとっては、少々物足りないであろう。

    ただ、小川洋子らしく、物事の表現するテクニックを追い求めるんではなく、やはり主体はストーリーであるところは、純文学を苦手とする人にとっても読みやすい部類に入るのではないかと思う。

    だからといって高評価にならないのは、小川洋子の十八番であるところの、ある言葉にフォーカスを当てて、その言葉の持つ寂しさを解剖でもするかのように腑分けする、あの独特の感覚が4篇ともにあまり見られなかった。のは残念である、

    いずれも、「恐怖」はさほど感じないわけで、そのへんも物足りないところかな。

  • 生と死。姉弟。病気。ぶどう。介護。妊娠。図書室。短編集。
    どの話も生と死の話だった。

  • 人間の三大欲求の一つ、「食べること」に対する嫌悪感は、不完全な生活を送る「わたしたち」に対する体と心の警鐘なのかもしれません。もはや裁いてはもらえない小さな罪と嘘を重ねて人は大人になるのでしょう、断罪されたい欲求を押し殺しながら生きるしかないのです。

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