完璧な病室 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 169
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044432

感想・レビュー・書評

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  • 怖いくらい美しく、
    私と弟で完結する世界。
    その完璧な病室は雑然である現実とはかけ離れた
    純粋さしかない世界である。
    私は弟と病室にいることで何事にも邪魔されず、
    また姉と弟という関係であるがゆえに
    そこはまたプラトニックである。
    そして弟を投影しているK医師との関係は
    性的な関係が介入しているにも関わらず
    父性や母性を彷彿させる。
    あまりに生活感を感じる現在の夫との暮らしと、
    不潔感さえ漂うある種の生活感のない母と弟との暮らしと、
    作られたもので囲まれたような弟との完璧な病室。
    その対比がとてつもない狂気に結びついていた。
    それは『冷めない紅茶』でも『ダイウィング・プール』でもどことなく仄暗い思いを抱いた。

  • 短編集。
    小川さんのお話は、いつも甘美て色っぽい感じがします。
    残酷で登場人物達からは、生活臭みたいなのがしないんだけど、人間的なところがある…上手く言えませんが、そんな雰囲気でした。
    どの短編も素敵です。

  • 言葉で表せない出来事があり、言葉でしか現せない何かがある。
    はっきりと見えているのに触ることができなくて、カタチはあやふやなのに重いとか…世の中には不思議と理屈で捉えられないものがある。

    ひとつも断定的に語られていないせいで、いくつもの可能性を思い描いて奇妙な気持ちになる。
    無関係なはずがとても共鳴してしまう。
    ひやりと怖くて、ファンタジーにも思えるのにやっぱりシュール。
    この世界感にしっとりと沈むのが心地よい。

  • やっぱり喪失がテーマの小川氏。ただ、初期短編集ということで、最近の作品よりはもう少し生臭さがあるように感じられました。もちろんそれは作者の意図するところでしょうけれど、初期には生臭さと表裏にあるどこか透明な感情や不安定さを描いていた人が、最近では生臭さを廃した硬質な透明さ(と喪失)を表現していることが興味深いです。

  • 洋子さんの書く、壊れかけた家族像は好きです。

    静謐で温い、透き通った愛情とか、生々しい生活の彼処にあるもの・音とか。

  • 完璧な病室が一番よかった。冷めない紅茶も良い。

  • 静かな空気。
    病室の匂い。
    消えそうな繊細さがものすごくキレイにかかれていて
    イメージしてしまう景色に衝撃を受ける。

    どことなく寂しい雰囲気。
    なのに心地良い流れで、
    読み終わった後も余韻に浸りたくなる。

  • 「完璧な病室」。実に病的なタイトルである。ストーリーは割愛する。この小説の魅力は、日常に潜むグロテスクな一面であり、その美しさであると私は思う。
    日常の裏返しであるそれを生々しく描く、ねじれた美しさを持つ世界観が、読者を日常の水底にまで連れて行く。それは危険な魅力に満ちた体験である。

  • 透明な文章でつづられる、ドロドロな汚い何かを内包した女性の話四篇。
    って書くと何それ、って言われそうですが、私はそういう印象。

    表題作「完璧な病室」は、病気の弟と病室で過ごす時間が、清らかで美しく清潔な透明感に満ちているのに対して、「私」の普段の生活や食事への考え方はドロドロに淀んでいて、汚い。
    特に、旦那がいるのに、弟の担当医に抱かれた辺りに一番嫌悪感を覚えるのは私が潔癖だからなのか。

    他の三篇も清らかで美しい何かと、汚いドロドロしたものを抱え込んだ私、という感じで話が進みます。
    「博士の愛した数式」や「猫を抱いて象と泳ぐ」みたいな、作品全体に漂う優しさはこの本にはナシ。
    透明で清らかな描写と、淡々として汚い女の内側が同居しております。

    ただ、文章はやはり秀逸。
    透明感があって美しいです。好き。

    「猫を抱いて~」を読んだ後にこれを読むと、作者にとっての唇って、何か特殊な器官なのかなあ?と思ったりします。

  • 表題作は、病室で過ごす弟との時間がとても静かに清潔に書かれている。普通なら熱き血潮まで冷たく流れているように感じられる。四つの短篇どれひとつをとっても、欲望というものは汚物のような気がしてくる。特に食べること。食べることに付随する残飯がなくなったらどんなに美しい行いになることだろうと思わせる筆致がすごい。

著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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