完璧な病室 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044432

感想・レビュー・書評

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  • 表題作の他、「揚羽蝶が壊れる時」、「冷めない紅茶」、
    「ダイヴィング・プール」の4篇が収められています。

    表題作は、21歳で不治を宣告された弟と、結婚している看護婦の姉のふたりの、病室でおくる日々を描いた作品。

    無機質な病室での暮らしが描かれていながら、登場人物の食べる姿、手術の回想、主治医の様子は肉感的で、時とともに変質していく有機体を生々しく感じます。
    それにより、成長が、病いが、衰えが、死が、有機体の変質の一課程として色や体温をもって際だちます。

    どの作品も、静謐で透明度の高い印象の文章は、リアルな描写で、音を失った映像として再生されてきました。

    主人公たちは、みな、有機体=生身の人間の側に完全に身を投じきれないまま、無機体に重心を残したように距離を置いています。

  • 怖いくらい美しく、
    私と弟で完結する世界。
    その完璧な病室は雑然である現実とはかけ離れた
    純粋さしかない世界である。
    私は弟と病室にいることで何事にも邪魔されず、
    また姉と弟という関係であるがゆえに
    そこはまたプラトニックである。
    そして弟を投影しているK医師との関係は
    性的な関係が介入しているにも関わらず
    父性や母性を彷彿させる。
    あまりに生活感を感じる現在の夫との暮らしと、
    不潔感さえ漂うある種の生活感のない母と弟との暮らしと、
    作られたもので囲まれたような弟との完璧な病室。
    その対比がとてつもない狂気に結びついていた。
    それは『冷めない紅茶』でも『ダイウィング・プール』でもどことなく仄暗い思いを抱いた。

  • 姉と弟の濃密な時間が描かれてます。独特の空気感。
    短編集ですが、どれも同じ雰囲気の作品で統一感があります。姉と弟というのはやっぱり何か特別な存在なのかなぁと考えさせられます。

  • 初期の短編集らしいですね。


    主人公がみんな何か病んでます。


    私が一番印象に残ったのは最後の《ダイヴィング・プール》。


    彩が純を見てたように、純も彩を見ていた。
    リエにしていたことも全部知っていたことを告げるラストにぞくりとしました。

  • すごく読んで後味の悪い、気持ち悪い本だった。
    気持ち悪いというより、不愉快という言葉がしっくり来るかもしれない。
    誰もがそういう状況になってもおかしくないという状況を、淡々というより、よりグロテスクに表現しようとしている感じが不愉快であった。
    全部で4作収録されているうちの2作目の「揚羽蝶が壊れる時」は、不愉快すぎて途中で読むのをやめてしまった。

    孤児院を経営する家族で生まれたという設定の登場人物、そして食べ物を汚いと思う登場人物が4作品中2作品に登場しており、悪い意味で期待を裏切らない。
    そして、全体的に、不幸にひたりたいタイプが主人公を務める。
    この先も、ずっと同じ作風なのだろうなと思った。

    4作目の「ダイヴィング・プール」も非常に後味が悪い。

    題名からして、気持ち悪く借りるのを迷ったが、借りた後で、「博士の愛した数式」の作者だと見て納得。映画自体を見たことがあり、気持ち悪かったので。
    不幸好きの方にはいいかもしれないが、一般人にはお勧めしない作者だと思った。私はもう二度と、この人の本は読まないと思った。

    作者の経歴が、医学薬学系出身でない人には、もっとよい就職先があるであろう大学であるのに、病院ということで、色々な意味で納得させられる。

  • 最高に美しい文章。
    久しぶりの絶品です。

  • またしても短篇集。
    ・完璧な病室
    ・揚羽蝶が壊れる時
    ・冷めない紅茶
    ・ダイヴィング・プール
    の4作。

    繊細な文章と綺麗な表現がとても好き。
    どの話も主人公が少し病的で、冷たさを感じる。

  • 静かで透明感のある描写なのに、なぜか光の射さないどんよりとした空を感じる。第三者への視線の冷たさに肌寒さを感じる。人間の中に澱んでいる、身勝手なものを、ほら、と見せられて、たじろいでいる。

  • 「彼女の異常さを認めるのは怖い事だわ。自分の正常さが揺らぐんだもの」

    「切り抜かれたのは彼女の方なんだけど.じゃあ切り残しの部分.つまり
    わたしの居る場所が本当に正常な現実なのかっていうと、自信がない。
    だから同じ独り言を飽きもせずに繰り返しているのよJ

    「それはきっと・・・」
    彼は続けた。
    「十八人分の死の、涙とか悲しさとかつらさのせいだと思うんだ。そんな
    ものが.喪服を優しくしているんじゃないかって= Tl

    ぴったりの場所が見つかると、そこから彼女を眺めていた。ある日、彼
    女が本当に眠っているんじゃないかと、心配になってきた。吸い込まれそ
    うなくらい深い眠りだ。放っておいたら、すうっと渦の目の底に沈んでしま
    いそうだった。だから僕は彼女に近寄って、肩に手を触れたんだ。彼女を
    掌で確かめたかったんだJ
    「彼が触れてくれた時、ことん、って鍵がはずれるような感じがしたわ」
    彼女は小さな声で言った。
    あらかじめ用意され、磨き上げられたような会話だった。

  • 短編集。「ダイヴィング・プール」の彩が昔の私の行動パターンと心理パターンをなぞりすぎていてぞっとした。
    弟に謝りたくなった。

    難病の弟は完璧な病室にはいなく、ワーカホリック気味に働いておりますが。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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