完璧な病室 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.55
  • (117)
  • (194)
  • (375)
  • (30)
  • (1)
本棚登録 : 1783
レビュー : 168
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044432

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 短編集。以下の2つが気に入った。

    「揚羽蝶が壊れる時」
    呆けてしまった祖母を"新天地"という老人ホームに預けることになった。
    しかし主人公は、祖母ではなく自分が異常なのではないかという疑問に支配され続ける。
    それは、一度考えると体中に広がる。自分が正常だとどうして言えるのか―。

    「ダイヴィング・プール」
    幼い孤児リエの泣きじゃくる姿と、学生の孤児純の飛び込みの姿、筋肉だけが自分を気持ちよくしてくれる・・・。
    孤児院を経営する親の元に生まれた彩の歪んだ何かが見える物語。

  • 小川洋子さんの初期作品ということで、後期の作品に比べれば荒削りな印象をうけたが、透明な、それでいてグロテスクな矛盾する2つの要素が彼女の中でまじりあい、静謐さを生み出している描写は相変わらずで引き込まれた。

  • 『親しい友人の見知らぬ微笑』

    美しいな、美しい。でも私にはあまりにも高尚すぎて、目が焼けてしまう。理解を求められていないのがよくわかる。でも私の中で少しだけ言葉が浮かんで消える。やはり、美しい。美しいな。

  • 2017年の最後は小川洋子の短編集で。最後の作品を除いて、死を軸としたストーリーである。

    白血病で入院した弟を見舞った際に、食べ物や生活を排除し、すべてのものが無駄なく存在する病室に気づく。日に日に弱っていく弟のしを意識したとき…。

    全体にシンプルに純文学である。つまりは、事件云々ではなく、人生の中の景色の変化を淡々と綴っていく作品であって、起伏の大きなミステリなどを読み慣れている人にとっては、少々物足りないであろう。

    ただ、小川洋子らしく、物事の表現するテクニックを追い求めるんではなく、やはり主体はストーリーであるところは、純文学を苦手とする人にとっても読みやすい部類に入るのではないかと思う。

    だからといって高評価にならないのは、小川洋子の十八番であるところの、ある言葉にフォーカスを当てて、その言葉の持つ寂しさを解剖でもするかのように腑分けする、あの独特の感覚が4篇ともにあまり見られなかった。のは残念である、

    いずれも、「恐怖」はさほど感じないわけで、そのへんも物足りないところかな。

  • 生と死。姉弟。病気。ぶどう。介護。妊娠。図書室。短編集。
    どの話も生と死の話だった。

  • 『冷めない紅茶』が収録されているのか、、、と思っていたら、福武文庫の2作品の再構成なんですな、この本は。誰も悪い訳ではないんだけれども、何か騙された感あり。
    まぁさておきまだ初期の段階では、フェチへの関心がそれほど濃厚には表出しとりませんなぁ。後出しジャンケンでは決してなく、まだまだ感満載な初期作品集であります。

  • じっとりとした、少しずつ病んで壊れていくような短編2つ。息苦しい。出てくる食事が本当に不味そう。生活感のない病室。死に向かう、愛しい弟だけがいる空間。新天地に入れられた祖母。自分の内側に確かにあるもう1つの命。正常と異常、真実と幻想の境界線はあやふやで、誰にも決定できない。

  • 『博士の愛した数式』がすごく好みに合ったので別作品をと思い、こちらの作品を読んでみた。
    ちょっと思い描いていた雰囲気と違う感じで、静かに暗い感じに戸惑った。
    表題作以外は少し合わなかった。

    「揚羽蝶が壊れる時」
    女の体の内部をどろっと暗く表現してるところがあるんだけど、自分も女だから想像するだけで気持ち悪くなってしまう、そんな表現で、気持ちは良くないけど、ある意味「表現がうまい」ということなんだろうな。。。
    自分がわからなくなるってどういう感じなんだろう。
    今は今で今だから、本当に想像がつかない。
    「ダイヴィング・プール」
    今後、このふたりの関係性はどうなっていくのだろう・・・っていうモヤモヤを残す終わり方で正直「うーわー気持ち悪うー」ってなってるんだけど、これを最後にもってくることで、こちらもある意味【読後感】って点では収録順がうまく構成される・・・ってことになるの、かな?

  • いつもの小川さん。

  • 「完璧な病室」「揚羽蝶が壊れる時」「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」の4編。
    小川さんらしい短編集。
    「揚羽蝶が壊れる時」はタイトルが好みすぎる割にはお話は好みではなかったのだけど、アルツハイマーになってしまったおばあちゃんと、同じ施設にいるお年寄りたちと自分、いったいどっちが正常なのか?と、主人公が悩む話。
    「完璧な病室」に出てくる病院の先生と「ダイヴィングプール」の主人公は孤児院をやってる親の元に生まれた実子。本当の親がいるのに、孤児として孤児院で育ち、だけど、自分には里親は一生見つからず、実の親がいるのに自分は一生孤児という不条理。うーん。小川さんっぽい^^
    小川さんのお話には同じ設定がよく出てくるんだけど、この「どっちが正常なのかわからなくなってきて、徐々に踏み外していく主人公」という設定がよく出てくる。

著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

完璧な病室 (中公文庫)のその他の作品

完璧な病室 (福武文庫) 文庫 完璧な病室 (福武文庫) 小川洋子
完璧な病室 単行本 完璧な病室 小川洋子
完璧な病室 (中公文庫) Kindle版 完璧な病室 (中公文庫) 小川洋子

小川洋子の作品

ツイートする