仕事のなかの曖昧な不安: 揺れる若年の現在 (中公文庫 け 2-1)
- 中央公論新社 (2005年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122045057
作品紹介・あらすじ
仕事格差に直面する20‐30代の真実とは?フリーターや若年失業が増えた背後には、中高年の雇用既得権を優先する構造問題があった。「働く」ことにつきまとう曖昧な不安に対し、いま一人ひとりに出来ることとは…。揺れる時代と冷静にファイトするためのリアルなヒントあふれる一冊。サントリー学芸賞、日経・経済図書文化賞ダブル受賞作品。
感想・レビュー・書評
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若年層が労働に対して抱いている「曖昧な不安」を、各種のデータを手がかりにすることで浮き彫りにしようと試みています。
単行本刊行時は、フリーターやニートになる若者たちの勤労意欲の低下が批判されていました。山田昌弘の『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)も、著者の山田にとっては不幸なことですが、「パラサイト・シングル」という言葉だけが独り歩きするかたちで、こうした論調を強める結果となってしまいました。
その後山田は、若者を取り巻く状況の変化を受けて、『パラサイト・シングルの時代』の議論をあらため、若年層が直面している問題をていねいにすくい上げる仕事に着手しました。そして本書も、「勤労意欲のない若者への批判」に対する反省の機運が高まるきっかけとなった著作です。
とくに目を引くのは、「ウィーク・タイズ」(弱い紐帯)についての議論です。本書の著者は、幸福な転職や独立をもたらすのは資格や語学力といった専門技能ではなく、会社の外に広く信頼できる友人をもつことが重要だと主張し、そうした幅広いつながりをそなえた「コネクション社会」の方向へと歩むことが、若者たちを支えることにつながると論じています。 -
若者の就業を阻んでいるのは中高年の雇用既得権
を優先する構造にある、という主張を展開した一冊。
データも存分に使ってあって、かなりの力作。
スタンスとしては、これから働こうという若年層を応援
するもの。だから、若年層にもっと読まれていいはず。
でも、たぶんこの本はその肝心の若年層にはリーチ
していないんじゃないかという気がする。この題名、
体裁、章立て。
せっかく若年層を応援するスタンスを取っているの
だから、もうひと工夫してリーチする努力をすべき
じゃなかったか。
「十七歳に話をする」という終章で、実際に十七歳と
顔を合わせて話をした時のことが書いてあるが、ここ
でも著者は緊張してうまく話せなかったとある。
とっつきやすさを出すために冗談半分のつもりで書いた
のかもしれないが、う〜ん、これは笑えない。
この力作の価値を若年層に届けられていない。
サントリー学芸賞と日経・経済図書文化賞を受賞したと
あるが、この本は(これらの賞の選考者である)
中高年の支持を受けることではなく、若年層に支持されて
初めて意味があると思う。 -
読んでおいて損はない
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なんか、最近の世の中もやもやしてるなぁ。
そんな気持ちとタイトルがリンクして購入。
どこか社会がおかしいというのを明言できず、
それを個人のレベルでも言語化できない、
まさに曖昧なこの状況の中で、
諸々の統計etc実際のデータを基に言及していくのは、天晴。
分かっているようで、分かっていなかったことが、
きっと読み進むうちに一つずつベールをはがされていくはず。
読みやすいので、社会について興味がある人はもちろん、
普段、こういう話題に触れない方にこそ勧めたい一冊。 -
大学進学における課題図書
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(「BOOK」データベースより)
仕事格差に直面する20‐30代の真実とは?フリーターや若年失業が増えた背後には、中高年の雇用既得権を優先する構造問題があった。「働く」ことにつきまとう曖昧な不安に対し、いま一人ひとりに出来ることとは…。揺れる時代と冷静にファイトするためのリアルなヒントあふれる一冊。サントリー学芸賞、日経・経済図書文化賞ダブル受賞作品。 -
筆者は一度でもいいので民間企業に就職して、人事をやったらいいと思う。
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尖閣諸島問題や北方領土問題における日本の態度を見て「今の日本は本当ダメ」とか言っているご老体がいるけれど、「お前たちが何にも考えずに働いてきたから、こんな日本になったんだろ」と密かにいらだっている私。
専業主婦と育ち盛りの子供を養っている中高年リーマンのリストラ、この設定はとても悲しいから人の目をひくけれど、2005年時点では大卒中高年の失業者数は約5万人で失業者全体のたった1.6%に過ぎない。
「自分たちのことよりその他大勢の方の心配しろよ!!」と言いたくなる数字だ。しかし、いつの時代も歯車を回しているのは働き盛りの中高年で、人を採るのも切るのもホワイトカラー中高年。
経済が停滞して労働力が過剰になった昨今。こんなふうに労働市場が不均衡になったときには、「賃金調整」と「雇用調整」という神の見えざる手が動くというのが経済学の基本なんだけど、労働組合が頑張るから賃金は下がりづらい。だから雇用を抑制することになるんだけど、中高年は自分の首を締めるようなことはしない。さらに日本では世間体を気にしたりリストラするには凄い労力が必要だから、今いる人を解雇するんじゃなくて、将来の社員を切ることになる。そっちの方が手軽で経済的。この保身的行動には他に似ているものがあって、将来の生活が不安だからといって子供を産む事を控える夫婦ととても似ている。新規採用の抑制とは社会人の中絶だ。
このように、中高年の既得権によって若年層の雇用が平然と奪われているけれど、一方で定年を伸ばして老人の雇用機会を増やそうという議論があるらしい。なぜ、若年層の需要は抑制されているのに、老人の需要は増えているのだろうか?老人のほうがワガママを言わないからだろうか?この雇用環境の歪みは、中高年が動かしている歯車では矯正しようがない。法律で人工中絶を禁止するように、採用抑制を禁止するしかないのだろうか。
撃つべきは吉野家や松屋で息子同然のアルバイトに指示されて「ハイッ!」と必死に働いている中高年ではなく、定年までのことしか頭にない、大企業に紛れ込んでる中高年リーマンなのだ。