室内と家具の歴史 (中公文庫 こ 44-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122045859

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    家具は盲点であった.
    なぜ家具が見えていなかったか,あるいは見ないように仕向けられたかについて,本書の中でもその理由のひとつに触れられている.冒頭の「日本の住まいには家具がない」という指摘とともに,必需であった家具は,木製,紙製,布製で腐食や転用もあり遺存がしにくく,史料となるサンプルが少なかったこともあるだろう.古代の石器から土器や陶器までの器物についても取り上げられているが,それらの残るものである.改築,改修,補修で更新されながら伝世される建築(*02)もまた,見えやすい記録ともいえる.
    家具には身近でありながら見えにくい性質がある.著者は,この性質を踏まえた上で,わずかに残された遺物や,古代以降の図像や文書の記録を手掛かりに,原始,古代から近代,現代までの家具をひととおり点検している.
    文体も端整であり,各節も軽快な区切りとなっている.時代ごと,分類ごとの要点をとらえることもでき,著者があとがきで述べているように,教科書としても使えるものとなっている.

    (02)
    建築は動かないが,家具は動かせる.
    近世の車長持の話題は,近世の都市住居の問題に,一石を投じていると思われる.近現代に下るに従い,これが大八車やリヤカーへ,また現代の自動車や災害時の渋滞という道も見えてきている.
    また,建築に占める椅子と寝台(寝るためのスペースと寝具)の位置と範囲についても,古代以来の経歴を本書で追うことができる.内部から建築を見直すために,これらの家具の問題は必須であるだろう.

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著者プロフィール

1933年東京生まれ。登録文化財昭和のくらし博物館館長・家具道具室内史学会会長・工学博士。専門は家具道具室内史と生活史。著書に『家具と室内意匠の文化史』(法政大学出版局1979)、『簞笥』(同1982)、『和家具』(小学館1996)、『船簞笥の研究』(思文閣出版2011)、『「日本の住宅」という実験──風土をデザインした藤井厚二』(農文協2008)、『道具が語る生活史』(朝日新聞出版1989)、『昭和のくらし博物館』(河出書房新社2000)、『台所道具いまむかし』(平凡社1994)、『くらしの昭和史──昭和のくらし博物館から』(朝日新聞出版2017)、『昭和の家事──母たちのくらし』(河出書房新社2010)。
訳書に『イギリスの家具』(西村書店1993)、『図説イギリス手作りの生活誌』(東洋書林2002)。
英文図書Traditional Japanese Furniture(講談社インターナショナル1986)、Traditional Japanese Chests(同2010)。
記録映画「昭和の家事」を制作(2010)。

「2020年 『掃除道具』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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