ナ・バ・テア (中公文庫 も 25-2)

著者 :
  • 中央公論新社
3.74
  • (328)
  • (427)
  • (590)
  • (38)
  • (6)
本棚登録 : 4212
感想 : 323
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122046092

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 淡々としているんだけど、今まで読んできた森氏の小説の中では一番文体とか好き。続き楽しみです。

  • 物語は淡々と流れて行くけれど、
    その先を見たい、とまた思いました。
    http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-335.html

  • 「僕」を知ったときは、かなり衝撃的でした。

    戦闘シーンが好きです。

    短い言葉だけど、情景が浮かんできます。

    さらっと読めるけど、内容はとても深いと思います。

  • 2度目の読了。
    「スカイ・クロラ」から、数年前の話か。
    「スカイ・クロラ」でカンナミの上司だったクサナギが、パイロットとして飛んでいる。
    「ナ・バ・テア」での語り部である”僕”は、クサナギ。
    女性なのに、”僕”という一人称を用いるのは、何故だろう。
    パイロットに男も女も、子供も大人も関係ない。
    そう言った気持ちからかな。

    初読時にも思ったが、クサナギはペンギンのようだ。
    水の中ではスイスイと器用に泳げるのに、地上にあがったとたんに不器用にヨチヨチと歩くペンギン。
    クサナギは、それと同じ。
    空の上では器用に、そして楽しそうに泳いでいるのに、地上に降りた途端に鉛でも背負ったかのように重々しく動く。
    軽く、飛ぶために生まれてきたんだ。
    クサナギはそう言う。
    空では大声で笑えるのに、地上では微笑むことさえ辛そう。

    大人になることができない子供。”キルドレ”。
    人工的に生み出された子供たち。
    老いることが無く、滅多に病気にもならない。
    大きな怪我でもしない限り、永遠に生き続けるだろう。
    永遠に明日がやって来る。
    どんな気分だろう。
    終わりがあることを知っているからこそ、今が輝くのかもしれない。
    終わりが来ない子供たちは、心に重荷を背負う。

    クサナギは、あまり深く考え込まないようだ。それが自分を守る方法なのか。
    しかし、周りが疑問を突きつける。
    それは、大人だったり、同じパイロットであったり。
    その疑問を投げかけられるたびに、クサナギは考えざるを得ない。自分の”人生”というものを。決して答えが出ることのない疑問。

    他人と距離を置いて生きてきたクサナギが、ただ一人だけ執着する人間がいる。ティーチャだ。パイロットだが、キルドレではない。大人の男。
    最初、ティーチャのパイロットとしての腕に憧れていたクサナギ。
    しかし、ヒガサワという女性のパイロット(キルドレ)が同じ基地に来て、ティーチャに興味を持っていることを知って、クサナギの気持ちに変化が起きたのではないだろうか。自分では気づかないままに。
    嫉妬だ。
    それとなくヒガサワとティーチャについて話をするが、彼女もクサナギ同様、ティーチャの腕に憧れているのだと言う。しかし、本当のところはどうなのだろう。ヒガサワだって、ティーチャに憧れ以上の気持ちを持っていたのではないだろうか。
    確かめる間もなく、事件は起きる。
    そして、クサナギとティーチャの運命のターニングポイントがやって来る。

    解説でよしもとばなな氏が書いている。
    飛行場面に異様なリアリティがあるために、読者は彼らの心の中にすっと入っていけるような気がするが、本当のところは共感しにくいはずだ。本当の意味で死ねない世界はどれほどの絶望に満ちているのだろうかと。

    飛行場面は気持ちがいいほどのリアル感に溢れている。
    しかし、死ねない”キルドレ”たちの気持ちに、共感はしにくいだろう。
    それでも、クサナギの厭世的な生き方や絶望、悩みがリアルに心に迫ってくる。
    大人たちに向ける嫌悪感が、胸に突き刺さってくる。
    著者の描く力は凄まじい。

    「スカイ・クロラ」での謎が、徐々に解けていく。
    霧が少しずつ晴れていくように。
    次の「ダウン・ツ・ヘヴン」へ進んでみよう。
    もう少し、遠くまで見渡せるかもしれない。

  • 2010年11月15日読了。2010年119冊目。

    空の上での戦いの描写がスピード感があって
    どきどきした。
    用語はわからないものが多いけど、楽しめた。

  •  主人公の、いわゆる「普通」の世界に対する嫌悪感がギシギシ伝わってくる。当の本人は口で無関心と言っているあたり、空中分解するんじゃねえのと思うほど不安定。
     でも、主人公地震飛行機・パイロットともに矛盾を含んだ存在であるべきと言うように、不安定で空気の流れに同化できる能力が、主人公のような境遇に置いては求められるのかな、とも思う。一切ぶれない氷のような心だとしたら、自分ならとっくに自殺してる。
     ただ、前作スカイ・クロラを読んでイライラする人は、これを読んでもイライラすると思う。私はイライラした。おもしろいのにイライラ。

  • 時系列はスカイ・クロラより昔。このテンポが好きと言えば好きなんだけども、この作品は共感はできなかったかな…。。あえて書いてないであろう部分に注意力をそらされ続けて、最後までのめりこめませんでした。

  • スカイ・クロラシリーズ2冊目。

    この本が物語の一番最初にあたるらしい。

  •  前作のイメージの発展系。内容は補完的。

     ちょっとした叙述トリック。さりげなく約束事を裏切る。わりあい気持ちよかった。ただそれが、物語の中ではほとんど意味を持っていないあたりが悲しい。

     ひとつの物語として完結しているかということが疑問である。前作を呼んでいないとほとんど意味を持たないし、いずれ出るであろう3作目以降で補完していかないと、やっぱり意味を持たないんじゃないかという気がする。

     ムードが好きな人にはお勧め。本音を言えば、完結してから一気に読みたい。その上で思い切り裏切られる可能性があるとしても。
    2005/3/12

  • 本作は、当シリーズ最終作である
    「スカイ・クロラ」の主人公カンナミの
    「上司」に当たるクサナギ視線の物語。

    天才的な戦闘機乗りである主人公が、
    まだ天才と呼ばれるようになる前の
    「若き日」のストーリー。

    「若き日」と言っても、クサナギはキルドレ。
    歳を取ることはない。
    年齢的な「若さ」ではなく、
    経験の浅さ、とでも言うべきか。

    部隊の上司として出会った、
    こちらは本当に「天才」と呼ばれる
    伝説の戦闘機乗り「ティーチャ」に対する
    あこがれと、畏れと、愛憎と...

    キルドレではない、普通の人間で、
    戦闘機乗りを務めているティーチャ。
    その特殊な立場故か、部隊の中でも
    特殊な立場に立つ。

    そのティーチャとの「特別な関係」に悩むクサナギ。
    が、ティーチャはクサナギを置いて、部隊を離れる。

    ...という大筋に、もっと大きな事件が絡んだりしつつ、
    でもクサナギ視線でたんたんと物語は進む。

    空を飛んでいる間だけ、自己のアイデンティティを
    確認できる戦闘機乗りという特殊な立場の人々の、
    我々からすると「特殊な」死生観の中、
    飛び続けること、戦い続けることに執着するが故の
    心の揺れ、現実との折り合いのつけ方を、
    繊細で丁寧な筆致で淡々と綴る作者。

    ティーチャから、色々な意味で
    「想像し得なかった仕打ち」を受けたクサナギに、
    ラストシーンでは「最高の」プレゼントがある。

    (我々の)常識からすると、とてもじゃないが
    考えられないような「幸せ」を噛み締めるクサナギが、
    なぜかとても愛おしく感じられるのが作者の力量か。

    このシリーズ全体を通して言えることだが、
    自分で読まなければ絶対にこの魅力は分かりません。

    あらすじを読んでも、人の感想を聞いても、
    この世界観やスピード感、心の振幅の大きさなど、
    本作の魅力は分かち合えないと思います(^ ^;

  • 『スカイ・クロラ』の続編。
    空を飛ぶ詩のような小説。キルドレの純粋さが羨ましく哀しい。

  • 静かで透明な物語。たくさん出てくる戦闘シーンでさえも静寂に包まれているような感触。

    子どものまま永遠を生きることを運命づけられた子どもたちはどのように「生きる」ことができるのか。あるいは、そこには僕たちが想像するような「生」と「死」の概念はないのかもしれない。すべてが夢であり、同時に全てが現実なのかもしれない。

    彼らにとって、戦闘機に乗って空に舞い上がること、死と隣り合わせでいることは、あらゆる関係性を拒絶しようとする彼らなりの「生」なのかもしれない。それでも、この世に存在している(「生きている」ではない)限り、関係から離脱することは不可能だから...

    もしも、戦闘機に乗って「殺される」ことだけが、あらゆる関係から解放され、彼らの「生」を「生」たらしめるのだとすれば、こんなにも残酷な物語はないだろう。

  • 1回目は、出版順に読んでしまったのと意味がよくわからなかったので読み直し。

    ストーリーがやっと繋がった。

    解説のよしもとばななの文章もいいですねえ。

  • 僕には森博嗣の文体は向いていないのかもしれない。

    淡々と、事実を羅列。
    淡々と、心理を羅列。
    そこには何の描写もなく、ただただ淡々としているから。

    とても寂しさを感じてしまう。

    ただ、最後によしもとばななの解説があって、それでちょっと納得できた。

    引用
    「続きが楽しみだな」という類のものでもなく、ただ手元にやってきたら心静かに読むのです。
    引用終

    まさにこれに納得してしまい、☆2つの評価に一つ加えさせてもらった。

    ただ、あくまでも僕の好みではないが。

  • カンナミからクサナギへ。
    地上での出来事に執着のないパイロットの視点だから、わからないことだらけ。
    インメルマンターンは覚えた。

  • スカイ・クロラの感想文に続いて、この作品から著者の深層心理を「勝手な妄想で」読み解いてみたいと思う。

    スカイ・クロラでは、森博嗣氏の研究者としての日常が、気づいてか気づかずかはわからないが、比喩的に表されていたのではないかという、かなり挑戦的な解釈を書いた。
    このナ・バ・テアにも、大学での研究生活に重なって感じられる部分がある。
    それは、ティーチャは普通に歳をとっていく大人であるのに対して、他の多くのパイロット達はいつまでも子供のままであるということだ。
    研究者の姿勢が子供であるという意味合いだけではなく、大学の研究室の状況にぴたりと符合する。
    助教、准教授、教授は、毎年、歳を重ねていくが、そこに配属される学生は年度が変わるたびに入れ替わり、常に22-23歳程度だ。大学院生の場合でも、工学部であれば修士で23歳-24歳だ。
    私のいた分野では大学院生は30代前後のことが多かったが、それでも、教員である自分が20代の後半から40代へと歳を重ねていく中で、学生や院生は年度ごとに入れ替わり、かつては同年代か年上であったのに、少し下となり、数年下となり、一回りも下となっていった。
    周りの人間が入れかわっていき、そしてそれが常に子供・・実際には若者だが・・であるというのは、研究者としては幾重にもわかる感覚だ。
    この挑戦的な解釈が、もし、まぐれにも正しかったとしても、森博嗣氏が教員としてのご自分を遠くから・・・つまり主人公の視線から見たのか、学生の頃のご自分を主人公に重ねたのかはわからない。どちらでもあるのかもしれない。

    さて、私は森博嗣氏の著書をまだ数冊しか読んでいないが、概して気になるところは、生に対する執着のなさだ。
    スカイ・クロラにおける戦いと言うのが、研究と言う分野における戦いではないかという考察は、スカイ・クロラの感想で述べた。そこには勝敗の緊張感はあるが、たしかに命の危険はない。
    だが、その考察は今は脇によけておく。
    というのはそれ以外にも、まだ、私の知り得ない何かがあるように思える。
    命の重さを感じない主人公。そうでありながら新たな命を身ごもり、出産を望まなかったにも関わらず、子供は生まれる。命を尊いと感じながらも、同時に虚無感をも抱く。
    これはある意味、真理をついている。命は尊く、生命の誕生には誰をも感動させるものがあり、また個人はかけがえのない個性であって代わりなどありえない。
    その一方で、失われる時は恐ろしくも簡単だ。今の日本において風邪で人が死ぬことは考えにくいが、昭和20年ごろまでは、流行り風邪で大人も子供も簡単に死んでいた。あまりいい表現ではないが、事故でも病気でも、命は失われるときにはあっさりと失われてしまう。

    そういったことと関連するようななにか。
    生きるということに、森博嗣氏自身に妙な諦観があるように感じる。
    虚無感を抱えながら生きている。けれど、どんなに虚無感を抱えようとも、積極的に死なない限り、当面生き続けてしまう。
    虚無感にちょっとした罪を感じてはいる。
    世の中には、生きたくても生きれない人や、過酷な環境や状況で生きなければならない人もいる。そのことを思い、恵まれた自分の人生を思い、虚無感を抱く自分に罪を感じる。
    だけれど、そんな罪をおかしていても、運命は優しく命を奪い取ることはしない。

    虚無感を罪と感じる心と、そんな自分が運命に受容され許されていると感じる心、そしてその奥には、ああ、でも本当は自分で終わりにしてしまえたら楽なのにと感じる心があるように思えて仕方がない。
    自分で終わりにすることは、なお一層の罪である。だからそうはしない。
    でも本当は、虚無感から逃れたい、早く終わりにしてしまいたい。
    そんな、ちょっとぞっとする思いが沈殿しているのではないだろうか。

    スカイ・クロラでは、あえて自殺にしなかった。自殺を望む彼女に向かって、罪に手を染めてでも引き金をひいたのは、意味もなく挿入されたエピソードではもちろんない。
    死を望む自分を、自死という形ではなく解放したいという思いの表れではないだろうか。
    引き金を引いてくれる手は、言葉にすることも憚られる森博嗣氏の願望なのではないだろうか。

  • 個人的にこの巻が一番好きです。

  • クサナギ!

  • 描写の精緻さ、感情のダイナミクス、選び抜かれた言葉。どれも素敵。
    視点を主人公一人に絞りきることで、完成されてなおかつ不安定な世界観が醸成されているのだと思う。
    空を飛びたくなったらまた読もう。

  • スカイクロラシリーズ第2弾。
    今度は草薙視点のお話。
    地上では滅多に感情を表に出さない草薙が空では笑っているところとか好きです。
    そしてなんといっても、「ティーチャ」との出会い。
    草薙にとって憧れの存在で、いつかは乗り越えて行きたい目標で、そしてとても大切な人。
    草薙の中から生まれた「いのち」はいったいどうなったのか?今後の展開が気になります。

  • 「スカイ・クロラ」シリーズ第2作。若き日のクサナギ目線で語られるストーリー。原作も謎だらけ、、それで余計に引き込まれるのでしょうが

  • 何回読んでもよい作品。空への憧れ、人との関わり、自分の存在・・サクサク読めました。

  • 「スカイ・クロラ」シリーズ。時系列的に「スカイ・クロラ」よりも前のお話、とのことなので、こちらを先に読みました。

  • もしスカイクロラより先に本書を読んでいたら、それぞれに対する印象がずいぶん違っていただろうなと思います。解説がよしもとさんで驚きました。「手元にやってきたら心静かに読む」という一文に共感。まさに、心静かに読んでしまいました。

  • どうして、ここまでささやかなことに気づけるのだろう。
    描写に引き込まれる。
    リズム感もステキ。

  • ますます戦闘シーンに磨きかかてるという印象を受けた。文章であのスピードと爽快感は本当にすごい。
    スイトの冷たい考えとは裏腹に、どこか子供じみた言動と孤独。果して子供のままがいいのか、大人になるのが悪いことなのか…。

  • 草薙水素という人間に一気に惹かれた作品。
    相変わらず文章に一切の無駄がなく、ただただ美しかった。
    キルドレ、という運命の残酷さ、ゆえの美しさ。
    空が綺麗だった。

  • 《スカイクロラ2》
     新年度は読みたい本リストを減らす予定が、一日目にして再読本に手を出してしまった。
     ああ、そうだった。クサナギスイトはスカイクロラの頃よりも透明だったんだ。と、思い出すのにだいぶ時間がかかりました。読み始め、「あれー、クサナギの話じゃなかったっけ???」と不思議な感じ。
     初めて読んだ森博嗣モノは、『女王の百年密室』、スカイクロラは2作目という入り方でしたが、この入り方で良かったなと思ってます。多分、M&Sとか、Vから入ってたらスカイクロラは読んでなかったかも。

  • 読んでいるときの気分の違いなのかもしれないけど、今作は前作に比べてそれほど冷たい印象を受けなかった。
    エピローグになって初めて気付いた、物語の繋がりには驚かされたしわくわくさせられた。
    前作から続けて読むと、「僕」の存在に勘違いをするかもしれません。

全323件中 151 - 180件を表示

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×