- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122046979
感想・レビュー・書評
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今年読んだ中でいちばんすき。日常のしあわせを描写するじんわり温かな表現。まりとはじめちゃんの言葉に表れてる生き方に対する姿勢。とっても美しくて、ほっとする。肩に力が入って苦しくなったら、この本を読もう。
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少し前に映画を観たけれど、映画とは少し違う部分もあって、当たり前のことだけど原作のほうがよしもとばななワールド炸裂だった。
小さな町での、まりとはじめちゃんのひと夏の物語。
ふるさとの西伊豆に戻ったまりは、かき氷屋を始めたばかり。
母親の友人の娘であるはじめちゃんは、大切な人をなくして傷ついていて、ゆっくりとした時間を過ごすために西伊豆にやってきた。
ともに時間を過ごしながら、2人は自分らしく生きる道を探し始める。
基本的にはわがままで独りを愛する部分があるまりとはじめちゃんが、本当は時々お互いを鬱陶しいと思いながらも(そういう描写は出てこないけれど)、一緒の時間を過ごすことで2人でいるのもいいなと思い始めて、しばしの別れ際には本気で淋しいと思う、そういう関係性が素敵だなと思った。
人と一緒に生活するのは鬱陶しいし面倒くさい。でも、それを超えた感情も確かに存在する。
ともに過ごすことで相手の嫌な面が目に付くこともあるけれど、それ以上に相手の良い面を見つけて尊敬したりする。そういうことが自分の生き方を見つめなおすきっかけになったりもする。
おばあさんをなくしたばかりで傷ついているはじめちゃんの言葉や経験で、あぁすごく解るなぁ、と思う部分があった。
人が死ぬと周りが醜く見える、というのはよくある話で、遺産やお金のことで揉めたり、取り合ったり…自分の利益にならないことは押し付けあったりして欲をむき出しにする。
私も自分の父親が死んだときそういう場面を目にして、「自分は欲で醜くならないようにしよう、せめて誰かが傷ついているときだけでも」と心に誓ったことを思い出した。
欲しいものや行きたいところなどの欲は必要なものだけど(それで仕事をがんばろうと思ったりするし)、誰かの持ち物を取り合うような欲は持ちたくない。
はじめちゃんは心からおばあさんを愛していたからこそ目を覆いたくなった。その気持ちは、ものすごくよく理解できた。
スピリチュアル要素は薄く、海辺でのゆっくりした時間を感じられる、癒しの小説。
自分らしさを見つける、自分らしく生きる、って勇気がいるし、一生かかっても難しいものなのかもしれない。
それを得はじめた2人のたくましさがいいなぁと、素直に思った。 -
あるひと夏のなにげない物語。
よしもとばななさんが書く海辺の話、夏の話が大好きだ。
私自身は夏がとても苦手なのだけど、ばななさんの書くぬるい海や空気の濃さや、夜の美しさやだらだらした会話などを読むと、夏もまんざらじゃないと思えてくる。
夏がつらくなったら、この本を読みたいと思う。
ばななさんの作品にでてくる女性たちは、すごい不幸な生い立ちやひどい事件に巻き込まれても、それらに人生のすべてや彼女たちがもつ輝きを奪われることのないしなやかさを持っていて好き。忘れるわけじゃない、受け止めて胸に抱いたまま、強く進んでいく。その過程が、不思議なゆるさで書かれている。
泣かせにくるような盛り上がりや、感動のクライマックスもない。だけど全編を通して、ゆるくゆるく癒されて、赦されてゆく。自由な気持ちになれる夏の一冊。 -
故郷でかき氷屋を始めたまりちゃんの元に、心と体に傷を負った、はじめちゃんという一人の少女が訪れた。人間の欲深さ、現実世界での生き辛さ、たくさんの禍々しいものを抱えてどうしようもなくなるときがある。それでも大切なものやかけがえのないものを抱き締めて、「私たちはここで生きている」と伝えたい。
これは2人の眩しくて、儚い、ひと夏の思い出。
【中央館/913.6/YO】 -
ごくごく沁み渡る、大切な1冊。
普段以上に、生きること、伝えたいことが
いっぱい溢れ出てたのかな、と思う。
覚えておきたいフレーズが多すぎて、
素敵で厳しくて哀しくて優しい
たくさんの言葉たちと、大きな愛に包まれる。
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主人公のまりちゃんの地元が寂れていく過程を読んで、あれどっかで。。。と思った。そして、よくよく考えたら私の生まれ育った故郷が、まりちゃんの地元と同じ寂れ方をしていたのに気付いた。
私の地元は温泉街で観光地。母はそこでずっと育って今も、生活している。母が小さかった頃はまりちゃんの幼少の頃の地元のようにうちの地元も賑わっていて、よく東映のスターなんかが撮影にきたと言っていた。
私の地元に限った事ではなくて現在、日本全国に昔は繁盛していたけれど今はもう。。。という場所って、少なくない気がする。そこでいくとこの本は、そういう場所に対しての1つの警鐘を鳴らしているようにも捉えられた。
そして、まりちゃんとはじめちゃんは驚くほどにシンプルに丁寧に毎日を送っていること。
ちゃんと自分らしく、あるがままに生きている2人。
なかなか難しいけれど、この2人のような生き方が出来たらと感じている。
私は、まりちゃんとはじめちゃんの優しくて温かいやり取りを読み進めていく内に大好きになったし、まりちゃんやはじめちゃんのような友達が欲しいと思った。
文体もとっても美しくてシンプル。
何か素敵な音色を聴いているような。
素直に心に響いてくる言葉。
ページの要所に出てくる版画絵も綺麗。 -
大切にしたい、大事な本。
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南の島でかき氷屋を営み始めたまりと、
祖母の死後、親族同士の遺産相続の
争いから逃れてきたはじめとの、
ひと夏の思い出のお話。
柳が風に優しく揺れる葉音や、砂を踏む感触、
海底に潜むさまざまな魚の彩りと、
照りつける太陽の陽射しなどが強く感じられ、
夏に読むには最適の短くもあたたかな物語だった。
まりにとって夢だったかき氷屋を営む
ということが、実は細々と単調に、地味に日々を
積み重ねていくだけのものだとしても、
彼女のかき氷屋が、毎日海の松林のそばに
あり続けるという事が誰かにとって、
またそこを訪れようと思える、
生きるための励みになる、夢を見つけるきっかけに
なるなら店を持つということの、これ以上の
幸せはないのかもしれない。
この作品の舞台ともなる南の島本来の持つ良さが
現代社会に乗っ取られて、自然が取り壊され、
観光客が減って街の賑やかさが徐々に
消えていく事に非常にナイーブになって
豊かだった昔を懐古するばかりのまりに、
田舎育ちのわたしも通ずるところがあった。
変わらない良さと変わっていく良さの均衡を
保っていくのはなんて難しいんだろう。
夏のエネルギッシュな勢いと暑さに
疲れた体を少しでも落ち着けられるように
秋の風が優しく吹くのだとしたら、季節の
微細な変わり目をもっと深く味わえる、
そういう心持ちで過ごしていけたらいいなと思う。
無欲なはじめとその家族が、新しく始まる網代での
生活の中で田畑を耕し、まりの作った空想の
世界の生き物に物体としての心を宿し、
命を吹き込む仕事を慎ましく送っていけたらと
願わずにはいられなかった。
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読みながら自分の体験や祖母の家の景色と重ねていた。
みんなが自分のまわりの全てに対して豊かであったなら… 響く言葉がたくさんあった。
著者プロフィール
よしもとばななの作品






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