黎明に叛くもの (中公文庫 う 26-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (657ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122047075

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めました。奈良の重要人物のひとりだとこの頃特に感じています。極悪非道ぶりにどんびきしてしまって嫌悪感から避けていたけど、逆に徹底した悪役ぶりが不自然に感じたりもして。とにかく読んでみます。

    ↓読後感想です。
    あらすじは、こんな風です ♪
    時は戦国。洛東はるかに、西域は波斯 ( ペルシャ )の暗殺教団“山の長老”伝来の暗殺の法を秘かに伝える山があった。玉のごとき美貌を謳われ、山中深く刺客として養われた一人の稚児が、兄弟子とともに修羅の巷に下りる時、戦国一婆娑羅な悪党の伝説が始まる!天下二分の夢を誓った兄弟子・斎藤道三への想い、昇る日輪のごとく台頭する若き織田信長への嫉妬と憤怒...。舞い踊る傀儡、乱れ咲く毒の花、神秘の霊薬、妖しの法を自在に操り、久秀は迫りくる千軍万馬に、独り立ち向かい続ける。時代に先駆けながら、自らの誇りにのみ従い、時流に叛逆しぬいた男の華麗なる生涯―虚と実の狭間に屹立する、異形の戦国史。 (google books)

    amazonのレビューで ベストレビュアーさんのひとりのhamachobiさんとおっしゃる方がこの作品の外伝に「 彼の作品は伝奇時代小説といったくくられ方をするが、内容自体はもっと深い。歴史を透視するような、正史だけでこの世界が成り立っているのではないことに気づかせてくれる。むしろ、この世界は、彼を始めとするすぐれた歴史家、小説家の想像力の産物なのではないか。」と伝えておられます。まさに、ほんとうに、そのように私も思いました。
    道三は、信長の父(義) 史実です。
    久秀は、道三の弟弟子 ここは不明。
    光秀は、道三と親族(道三の妻の甥かな これは史実です )
    この三人を結ぶ美しい道三の娘が、信長の正妻となる濃姫(帰蝶)です。(史実)
    人形や久秀が持っていた平蜘蛛釜(お茶の道具)がこの小説を動かしてゆきます。
    平釜は、まるでハリーポッターの記憶の泉で、おそろいの釜を久秀からもらった光秀は夢とも現とも言いがたい不思議な夢をみるようになるのです。
    圧倒的な武力と戦略で地方を統一してゆく信長をそれぞれの想いでみつめる3人(この財力と戦略、おそるべし。)ご存知の史実と歴史の流れどおり展開してゆく物語。信玄や謙信まで登場し、彼らは、書かれた史実とは違う結末を迎えます。
    久秀の不思議に翻弄されているのに気づかない光秀、
    いろんな考えを巡らせるチャンスをくれました。

    それから時代の先端を走る人々だけじゃなく、その底辺から這い上がってきた久秀と道三のふたりから見え隠れする時代の風を一緒に感じているような錯覚を覚えました。(このふたり、本当に出自は不明となっています。)残虐さも知り、狡猾さも理解しておかなければ誰もが大切なものを護れないという時代の流れや、誰かのほんの一握りの時やひとことでどれほど多くの人の命が消え、翻弄されてうつろうことになったのかを思うと今の時を大切にしなければ、という思いと、すべては一睡の夢であったかのような光秀の現は、もしかしたら私の現でもあるのかもしれないと思っています。
    この本を読んでから知ることができた久秀の事実からも感じています。
    久秀はクリスチャン大名だったこと、久秀の弟や親族にもたくさんいます。・・・というよりも、戦国武将は、ほぼみんなそうだったんじゃないかと思うことすらあります。
    それから久秀は果心(かしん)というくぐつ(人形)をいつもそばにおいていたのですが、
    家臣と響きがおなじです。それもちょっと意味深です。
    果心の容姿は、白くて黄色い髪なんです。そして、最後には人形なのに自我を持ちます。
    久秀がクリスチャンだったなら、果心を宣教師と重ねることもできるかもしれませんが、私はそれはきっと違うと思っています。
    黎明とは、夜明けっていう意味で、明けの明星とは、夜明け前に一番輝く金星のことです。
    戦国の世を生きた人々は、日輪になることを夢みて力を尽くします。
    道三や久秀もまた夢にみて、星であったと悲しみます。
    でも、たくさんの戦国武将が綺羅星のごとく輝いているけど、
    民のことを思い、民とともに、思いをひとつに身も名も惜しまなかった武将こそが明星に思えるし、
    暗闇の戦国の世の民のこころを明るく照らす明星のほうがぶっちゃけかっけぇ!です。
    この時代のホンモノの明星はだれなのでしょうか。

  • 再読。
    松永久秀小説の(個人的な)決定版。
    乾いて乾いて求めて求めて、掴んだと思ったら手の中で壊してしまう。
    そんな松永久秀の一生。

    果心と松永のコンビは和む。上杉での喧嘩とか、あれギャグだよね。

  • 松永久秀と斎藤道三はともに、遠く中東の地からニザール派の教えを汲む波山(ハサン)の法を伝えられた美童だった、という設定。そこから戦国の世の裏にはたいてい久秀が噛んでいたという見立てをこれでもかと盛り込んだ伝奇もの。悪名もここまで極めればいっそすがすがしく。著者も確信犯とことわっているとおり、最新の研究が別の方向性を示していても、物語として面白いほうを取った、と。その割り切りと豪華絢爛な絵巻のようなストーリーに少し長いかと思いつつも魅了される。李賀の詩や閑吟集もちりばめられつつ。おのれが日輪になり輝こうと志し、やがて星にすぎぬと自覚する苦さ、そして日輪たる信長がのぼっていくのをただ眺めるにとどまらず、腹をさぐりあい、出し抜きあい、理解し合い、最後はたもとをわかち、しかし意識的にか無意識的にか光秀に託し、と。個人的には、最後の濃姫と光秀の対面は、三島由紀夫「豊穣の海」のラストを思い起こさせた。◆金輪際人を思いやるつもりもない俺には、敵しかおらぬ。おらぬから、かえって迷うこともない。兄者のごとく人によかれと八方に思いをかけるなら、いつかは味方にこそ、恨まれることになる(久秀 p.239)◆久秀は初めて、おのれの一人のみを頼みに何事も片づけてきた自身の半生を悔やんだ(p.246)◆「不可思議を見せたばかりでは、人は驚くだけよ。欲を見せねば、安心すまい」(久秀 p.407)◆老獪さとはつまり、弱さのことである。弱ければこそ、人は紆余も曲折もするのだ(p.615)

  • 松永久秀のかわいいことかわいいこと。
    傀儡・果心との掛け合いや、兄・庄五郎への親愛、信長への憎しみと嫉妬。
    外道の術を扱い、節々で人外らしい評価を得ているのに、その実、誰よりも人間臭い感情を秘めているその葛藤ぶりには、ときめかずにはいられない。
    あの時代、既存概念をひっくり返したという意味では誰にも劣らないのに、どちらかといえば織田信長という傑物に掻き消されがちな松永久秀と斉藤道三が、こんな形で描かれるなんて、夢にも思わなかった。
    しかし、強い光に隠されがちな星が必死に日輪に抗おうとしている傍ら、微塵も己を「日輪か星か」など疑うこともない信長は、本当に、生まれながらの日輪らしい。
    そうなると、たとえ最盛期の霜台であっても、「己は日輪である(あるいは日輪たり得たい)」という発想に至ってしまっていた時点で、明けの明星だったのかもしれないと思うと、冒頭から何とも切ない話だ。

  • 松永久秀主人公の伝奇小説。脇役として斎藤道三、果心(居士)、明智光秀、織田信長が多く出てくる。
    特に道三は久秀の兄弟子という設定で、久秀にとっては大事な存在になっている。子供時分に久秀と天下を二分しようと約束し、互いの道を行くようになる。
    また光秀も光秀を通しての久秀、道三を見せてくれる役割としてよく出てくる。
    率直に面白かった。続きが気になり、飽きることなくどんどん読んでいけた。
    純粋な歴史小説ではないので、そのつもりで買うと想像していたものと違うということにもなるかもしれない。もう少し言うと、久秀や久秀周囲の人間の名前と状況を利用した創作物語と言った所。歴史小説ではなく、創作小説に近い。内容も幻術のようなものが出てきたり傀儡(果心)が自我を持っていたりと、歴史物に比べるとエンターテイメント性が強め。
    一貫して人物個人を追う形になっており、戦や政治等の大局は潔く省略されている。その為三好の家中でのし上がる様子や三好その他とのごたごたはほとんど描かれていない。基本的に描写範囲は広くなく、久秀と道三なり信長なりの個人同士を描いている部分が多い。こういう部分が歴史物ではないと前置きしたくなる理由の一つかと思う。
    例えば作中でよく久秀の評判が悪いだとか極悪人だとか噂されていると出てくるのだが、そこまでのことをしただろうかとスケールの違いで違和感を覚えることがある。
    それでも読み物としてはとても面白い。登場人物にも愛着が持てる。久秀に興味があり、創作伝奇が前提の歴史ものと割り切りって読むなら楽しめると思う。

    この小説の久秀は一般的なイメージの腹黒で非道な人物には書かれておらず、作中で道三が何度も言うように「かわゆい」。年を取ってもかわゆい。兄弟子である道三と仲が良く、二人のじゃれあうようなやり取りが印象的だった。
    道三との天下二分の約束は言ってしまえば子供の約束で、天下取りもまるでどこか遊びのような感覚で行われている。その為か暗殺、将軍殺し、大仏殿焼き討ちは実行するものの策謀渦巻く黒さはなく、どちらかというとさっぱりと描かれていたのが新鮮だった。
    大体分量の半分手前で織田信長が上洛してくるのだが、そこからはそれまでの上り調子の展開から一転、久秀の年齢もありどこか冷えたゆっくりめの展開になっていく。内容的にもここから失速気味になったが、それでも続きを追いたくなる展開が続いた。
    後半は久秀自身の徐々に失っていくい人生が作中の雰囲気と合わせとにかく物寂しく、 個人的にはその空気が非常に好きだった。
    物語が光秀で締められるのが個人的には少し勿体無く感じた。ここはやはり久秀で締めてほしかったかもしれない。

  • 松永久秀主役の時代物作品。フィクションの要素が高めですが、後の反逆者となる明智光秀との交流も描かれている、興味深い作品であります。私の創作にもかなり影響を与えているかと。描写も凄まじくて何度読んでも読み切れない感覚に悶えながらも奮闘中です。癖になる一作です。

  • 松永久秀、斎藤道三、明智光秀あたりが中心の小説。三好主従や道三と久秀の国盗り時代などいろんな意味でぶっとんでて悶える。平蜘蛛や果心などの設定もとりあえずぶっとんでる。歴史ファンタジー系かも

  • 久秀かわいい。
    道三が兄やん^^
    光秀がせつない。
    信長が、もうやらかしてくれる(笑)

  • 宇月原氏の作風が好きなのです。

  •  果心居士という日本史のなかで特異な人物と松永久秀、斉藤道三を「破山の法」をキーワードに結びつけているあたりは、史料の読み込みが凄まじく。その圧倒的な知識量に頭が下がる。
     歴史物でありながら、ファンタジーの要素があり、著者自身が巻末で語っているが、司馬遼太郎「国盗り物語」のオマージュ的作品。
     扱っている内容自体は難解なものながら、文体はわかりやすくされており、時代物だけでなくファンタジー作品が好きな人にも読んで貰いたい作品。

  • 道三(兄者)=オトコマエ、
    光秀=いいひと、
    ヒサヒデ=カッケー

  • 魔性の果心居士・松永久秀。翻弄される?光秀、信玄、謙信。そして日輪たる信長。
    久秀と斎藤道三、光秀と帰蝶の関係がたまらない。

  • カルトでやばくて壮大な歴史小説。
    バリトゥード松永弾正。

  • なんとなく歴史ものかな、と手にとってみてびっくり。伝奇小説だった。これでもか!というくらい妖しげで、新鮮で面白かった。

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