コンスエラ: 七つの愛の狂気 (中公文庫 ロ 4-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122047396

感想・レビュー・書評

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  • 女性の狂気を孕んだ美しさと、
    そんな女性に翻弄され溺れゆく健気で純真な男性たち
    物語の中で彼女たちはみな身分は異なれどお姫様であって
    男性は憧れを抱き続ける少年で
    結婚をしても結ばれないようなはがゆさ満載の一冊
    表紙も美しくて素敵

  • 愛に関する七つの寓話。その愛の形は滑稽で残酷で、あまりに切ない。読んで吐いた方がいるらしいので、体調の良いときに読むことをお勧めする。(吐いたのはおそらく男性だろう・・・女性は多分大丈夫だと思う)

  • 読んだら気分が悪くなってくる…

  • 恋愛もの短編集。読んで吐いた人がいるという解説にどんな狂気かと思いきや、それほどでもなかった。おそらく想像力の豊かな人はラストの「コンスエラ」の、これでもかという不潔さの描写を具体的に想像して気持ち悪くなってしまうのかもしれない。とりあえず本から悪臭は漂ってこないので私は大丈夫。狂気というより解説の東直子が言う「気の毒」さのほうが私にもしっくり来ました。それぞれシチュエーションは違えど、一方通行の恋をしてしまった男性たちの話で、全員がただ「気の毒」としか言いようがない。

    老教授がミュージカル風に美しい女学生にうっとりする「カロリング朝時代」や、仲の良い二人の男性が同じ女性を好きになる「マドモアゼル・アルカンシエル」あたりにはそれほど毒はない。

    ちょっとえげつないな、と思ったのは、森で出会った謎の女性(すでに若くない)に、なぜか夢中になってしまった若い男が、義眼の彼女に愛を証明するために片目をえぐり出される「ガラスの眼」、それと表題作の「コンスエラ」。金持ちでイケメンの若者に見初められた美少女コンスエラはあまりに美しいがゆえに夫が愛しているのは自分自身ではなく外見だけではないかと疑うようになり、あえて醜く汚くなってゆくことで夫の愛を試そうとする。テーマ的には「ガラスの眼」と同じですね。本当に愛しているか証明してみせろ、という不毛な欲求。

    「ごみ埋立地」のゴミ捨て場に住みつく美少女など、とにかくどの作品でも男性が惹かれる相手は完璧な美しさ、しかし男性側の愛は届かない。完全な美女を描いた絵を見つめながら男たちがどんどん死んでいく「一枚の絵」なんかはいっそ潔い。つまり結局「人は見た目が100%」ってやつですね。

    いちばん好きだったのは「ヴィオロンチェロ」これもチェロを弾く美少女に惚れ込んだ男の報われない末路だけれど、怪しい魔法でチェロに変身させてもらうというのがファンタスティックで好き。

    ※収録作品
    カロリング朝時代/ヴィオロンチェロ/ガラスの眼/マドモアゼル・アルカンシエル/ごみ埋立地/一枚の絵/コンスエラ

  • 「ティモレオン」より前の作品か・・・やや露悪的にすぎる。読んでいてフィジカルに不快になったものもある。それだけパワーがあるともいえるが。短編集の主人公はいずれも純粋な恋する男性たちで、女性側に意図があるなしに変わらず美女に翻弄され、ぼろぼろになっていく。堕ちるさまは徹底していて、時に気分が悪くなる(うっぷ)
    実感として究極の愛に感じ入ることはできなかったのだが、「狂気の愛」の狂い方はとても面白かった。

  • "男と女"が輝きに対してどのような方向性を持っているかが明解に表されている。
    やはり男はロマンチシズムで、はたから見れば幻想を追い続けるものだろう…。
    一方女は男に比べて現実的であるものの、ワールドイズマインであり、この違いを説明するのに難しいが、男女は輝きをすれ違わせていくもの。
    恋愛や結婚、および男女が共にしていくのは、すごくはがゆいのだと思えた。

  • 同作家のティモレオンに感心したので手に入れて読む。こっちのほうが先に書かれたのかと。ティモレオンとは狙いが違うようで同じような物を期待してしまっていた。これはこれで面白いが。愛とエゴのお話。

  • 副題の如く 7つの愛の狂気 の物語。

    「カロリング朝時代」は、三十年間、個人指導を行ってきた老教授が女子大生の美しさにとろけてしまいそうになる話。
    教授が、歌うように話す講義内容が音譜つきで小説のなかにいれこまれていて面白い。
    美しい学生も旋律にのせて老教授に別れを告げる。

    「ヴィオロンチェロ」は、愛する人に抱かれ、奏でられたいという願望を果たし、楽器に我が身を変えてしまう短編。
    ギリシア神話にはよく見られるメタモルフォーゼと少し似ていて現代版のギリシア神話的ストーリーだと感じる。

    「ガラスの目」 前に読んだ小説で、名前は忘れてしまったが、こんな話があった。
    義眼の女性が、義眼を入れるのを忘れてある日出勤した。
    すると、寝室に残された彼女の義眼は、留守中、夫が連れ込んだ女との情事の一部始終を離れている場所の彼女に見せる。
    この話も不思議で悲しい物語だったが、「ガラスの目」は、もっと残酷であからさまに人間の深淵に迫る。
    ひとりのあまり若くない女性がいて、彼女は今までに800人ほどの恋人ができたがどの相手ともうまくいかなかった。
    今度の彼は、彼女より年若い男性で、彼は彼女のことを愛していた(愛している気がしていた)。
    彼女の目の片方は義眼で、そのことを彼は気にしておらず、それも含めて愛していると彼女に訴えるのだが、彼女は、その愛情を証明するために彼の眼球を差し出せという。
    義眼なんて気にすることないよ。 という言葉を繰り返し、彼女への愛情を表現したきた彼は、たいしたことないなら、あんたの目も義眼になりな という彼女の考えとの狭間で、彼の眼球をえぐるためにスプーンを持って迫る彼女と男はどう対峙するのか。

    「一枚の絵」 森で、完璧に美しい女性をカンバスに描いた画家は、自分の描いた絵の中の女性に恋をしてしまい、その絵の前から離れなれなくなり、衰弱して死んでしまう。
    たまたま森に現われた村の三人の男も同じようになって死んでしまい、彼らを探しにきた村の男全員が同じく死んでしまう。

    「コンスエラ」 表題のこの短編は、ストーリーは違っても「ガラスの目」の主人公の女性と似通った強迫的な部分を感じる。
    コンスエラは、所謂、玉の輿結婚をしたのにもかかわらず、月日がたつほどに、どんどんどんどん想像を絶するほど彼女は醜くなってゆく。それはなぜか。

    ダン・ローズは、1972年生まれのイギリスの作家。
    処女作の『ティモレオン』で自国でも高い評価を得る。『ティモレオン』は、日本でも「ダ・ヴィンチ」のプラチナ本に選出されたりしている。
    本書、『コンスエラ』は、ダン・ローズの二作目の作品で、単行本は、2004年の暮れに初版発行。今年の秋に文庫本化された。

    残酷で、悲しく、切なく、一見平和な恋人たちにもある小さなきっかけで忍び寄るかもしれない恐怖がダン・ローズの本のなかで、ひらひらと手をこまねいている。

  • 7/6 読了。
    「ティモレオン」に完成度では落ちるが、おとぎ話ふうのロマンスを巧みに再構築して、人間の感情の残酷な部分を切り取っていく。その語り口がちょっと類を見ないためらいのなさで、あまりにスパッと切ってしまうものだから、読者もそこでハッと目を醒ますのだ。

  • 七つは多かったかな・・・
    1,2作なら良かったのだけれど、7作も、こういう、まさに「狂った」男の話が続いちゃうと、余程の筆力がない限り「狂い」にいやらしさ(やりすぎ感)が出てきてしまう。

    はっきりと醒めてしまったのが、7作目、表題作でもある『コンスエラ』と『ガラスの眼』の相似。

    相手が男への疑念ゆえに醜く変えてしまった姿を明かしても、
    相手どころか自分自身にさえも「愛」を説得せざるを得ないとか。
    (ここまで説明的にされてしまう時点で、作品としては終わってると思う。)

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