痴人の愛 (中公文庫 た 30-52)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122047679

作品紹介・あらすじ

美少女ナオミの若々しい肢体にひかれ、やがて成熟したその淫蕩なまでの底知れぬ魅力のとりことなった譲治。奔放なナオミは譲治の背に跨って部屋中をめぐる。女の魔性に跪く男の焦燥と惑乱と陶酔を描く谷崎文学の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 手塩にかけてナオミを育て、妻に迎え入れる譲治が次第にナオミに翻弄され、狂っていく様を描いた歪んだ、そして純粋な愛の物語。

    古典文学は現代の人には読みづらいという固定観念があったけど、谷崎潤一郎は読みやすいし、特にこの作品は場面場面で両者の力関係が移っていく様がとても鮮やかで、色彩豊かな絵画の細部を少しずつ目で追っているような感覚だった。

    色彩のことを引き合いに出したけど、ナオミ自身の肌の色の白さ、ナオミの内面的などす黒さが印象に残っていて、真っ白な絵の具に一滴でも黒の絵具を垂らすともう完全な白にはならず、汚されていくしかないことを思った。ナオミの肌の白さは、内面のイノセントな黒さゆえに一際目立って譲治の前に映し出され、それゆえに譲治は貴重に大事に拝むあまりマゾヒズムへと堕ちていく。

    読む前は肉体的、性的なサド、マゾが描かれるとばかり思っていたけれど、精神的なサド、マゾが中心に描かれている分、ストーリーが深遠なものになっていた。

    もちろん読んで面白かったけれど、純粋に怖く感じたし、好奇心でその怖さにまた触れてみたくて読み直してしまいそう。

  • 惚れたもん負けですよね。勝手に陶酔しててください。(私情挟みまくり、こういう馬鹿で愚かな男が大嫌いだ)
    けれどやはり谷崎潤一郎の作品は読ませる文章。繰り返し出てくる踊り字や色の描写でリズム感と鮮やかさが目の前にありありと。クソウ、いいやんけ谷崎

  • 中盤までは、なんだか話が
    中々進まない感じで、退屈と思ったり、
    ナオミがエラそうでやな感じに育ってて、
    少々読むのが苦痛だった。

    最近、倍速視聴の是非が
    話題になってたりするけど、
    私もどこかせっかちになってるのか、
    読み飛ばしたい気分だった。

    鎌倉で過ごす辺りから、
    急に話が転回して、
    面白くなってきたけど…。

    譲治は、ナオミに散々に騙されていたことが
    明るみになって、ナオミを追い出し、別れたのに、
    一時間くらいで後悔の念が湧いてくるとは…。
    ちょっと呆れた。

    結局は、ナオミの誘惑に負けて、
    堕落した生活に突入。

    目も当てられない。

    私に息子はいないけど、いたとしたら、
    こうはなってほしくない。(急に母目線)

    何も知らずに亡くなったお母さん、
    知らなくてよかったのかも。

    ところで、山田詠美の「賢者の愛」を読んで、
    興味が湧いて「痴人の愛」を読んだのだけど、
    ナオミの奔放な感じは、百合と重なり、
    ナオミにすっかり骨抜きにされてる譲治は直巳、
    譲治を骨抜きにしていくナオミが真由子と重なった。

    途中、しょうもないなと思ったりもしたけど、
    面白かった。

  • 2020年10月のNHK Eテレの100分で名著での、谷崎潤一郎特集で気になったので、読んだ。
    こんな面白い話が何十年も前に書かれているとは。。

    それにしても大正時代はハイカラだったんだなあと改めて思う。
    英語喋ったり西洋人と触れ合ったり。
    カフェをダンスホールにして生のオーケストラバンドで踊るなんて最高だと思う。

  • ナオミは品もないし、女性から見たら全然魅力を感じないような女性。
    それにはまって人生を捧げちゃうなんて…バカだなー…。

    でも、周りからどう言われようとぶれないナオミの強さには、呆れを通りすぎて尊敬すらしそうになったw
    結局、周りから見たら滑稽で最低な暮らしに身を落としていく様に見えるけれど、当人達はそれで幸せなんでしょうね。
    そう考えると、あれはあれで究極のハッピーエンドなのかも。
    自分で自分にブレーキをかけちゃうタイプの私からすると、少し羨ましくもあるな。

  • とても後味の悪い話。ナオミの蠱惑と支配から逃れられない譲治は、はたから見るとひどく滑稽で、やめておけばいいのにという憐れみを誘うのだけれど、おそらくこういう精神状態になってしまったら、抜け出すのは容易でないのだろうと思った。関わり合いになりたいとは思わないし、なりたいとも思わない、そんな女性像だと思う。口と媚びのうまさは見習うべきかもしれん。

  • この本のおすすめキーワード:感動

    精神的被虐を好む人物が主人公の本作ですが,社会において市民権を得ていないマゾヒストが生き生きと描かれることに勇気をもらいました。
    クラット・エービングに出会ったときの谷崎の感動を追体験できる作品です。

    金沢大学附属図書館所在情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA79057140

  • 過去分

    後半のナオミのたたみかけは戦慄を覚える。魔性の女は麻薬みたいなもので、一度ハマると抜け出すのが難しい。一度は離れられたと思っても、目の前てわその快感がちらつかさせられたら、、。譲治も再びナオミの魔性に浸ってしまい、ハタからみるとまさに堕落した生活を送っている。しかし当人たちにとっては幸福そのものだろうと思う。

  • 曝す女の白い喉に噛み付いたことがあるか。そこから開く深い海の底、先の見えない闇の中、取り込まれてしまう前に、首を垂れて許しを請えよ。開いた胸の中に灯る光はまぼろし。身を滅ぼすのは、見事に上せた己のせいだと知っているのに逆えず。女神も天使も清廉などではありません。

  • 756円購入2011-06-16

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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