- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122048010
感想・レビュー・書評
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昭和の外交を読む。幣原外交とは何だったのか。
大正末期から昭和初期にかけて二度にわたり外務
大臣を務め、幣原外交とよばれる国際協調政策を
推進した元首相による貴重な外交秘史。
解説は筒井清忠
本書は、昭和史を作った当事者による回顧録であ
る。その証言は貴重であり、充実したものとなっ
ている。
本書を読むと、イギリスもアメリカと利害が衝突
していた事がわかるが、イギリスは、どんな場合
でもアメリカと戦争しないという国是になってい
たことから、最終的には、衝突を避けていたこと
がわかり面白い。(これと逆の事を、日本の陸軍
はやってしまった訳ですが)
幣原は、満州事変の原因として、軍に対する首切
り、俸給の減額、それに対する不平不満が直接の
原因であったと推測している。
また、政府や軍の首脳が優柔不断であったから事
件がますます大きくなったという非難に対し、鎮
圧策を強行していたら、日本はもっと早く軍事革
命を起こしたかもしれないと言う。
善し悪しは別として、当時の政府首脳には、軍事
革命に対する恐怖があった事がわかる。
筒井清忠の解説も良い。筒井は、幣原外交を評価
しつつも、批判的な見方も紹介している。同時代
の他者の回想録を、意識しながら読むのも面白い。
(重光葵の外交回想録の記述と明らかに異なる部
分がるのがわかった。)
本書を読むめば、戦前日本に対する見方に深みが
増す事は間違いない。お勧めの1冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後初代首相を務めた幣原喜重郎。大局的見地に基づく親米英外交路線、所謂『幣原外交』を展開したその当人が、日露戦争~終戦までの日本外交を回想する。
全編を通じて終始幣原の機知の豊かさと高いコミュニケーション能力、そして何よりも強い彼の使命感に圧倒された。特に腎臓結石を患いながらワシントン会議に赴く姿は敬服の至りである。
もちろん小話のような逸話も多数収録。近代日本を支えた政治家・外交官たちの素顔が浮かび上がる。
圧倒的な臨場感と読みやすさは数多ある外交自伝のなかでも随一ではないだろうか。
是非ご一読あれ! -
幣原は昭和6年に大臣を引退して、戦後昭和20年10月に総理大臣に任命されて、戦後建て直しに奔走した。
戦前の外交舞台裏情報も満載で面白い。 -
「幣原外交」で有名な幣原喜重郎の口述自伝です。外交官として大正〜昭和の激動の時代を送ってきた著者自身の生々しい経験談は一読の価値のあるものかと思います。外交を通じて国際協調を実現しようとする著者の姿勢は一種の理想主義的なものを感じるますが、時代背景を踏まえて考えると考えさせられる点の多いものです。