敗者の条件 改版 (中公文庫 あ 1-5)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122048188

感想・レビュー・書評

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  • ルネサンス史の専門家が、主に日本の戦国時代における「敗者」について分析した本。本書に出てくるのは、織田信雄・信孝、佐々成政、滝川一益、蒲生氏郷、高山右近、武田信玄、松永久秀、黒田如水など。本書において、「敗者」を見る目は概して優しく、むしろ細川幽斎のように変節を重ねた「勝者」をメッタ切りにしているあたりに、著者の価値観が色濃く反映されていて面白い。この時代は、本人の資質や性格に関係なく、周りの状況次第で「必然的に負ける」しかない人々が山のようにいた時代なのであった。

  • 視点が面白い。著者は西洋史の一番血腥かった時代の専門家であり、日本の同様の時代、戦国時代の敗者を描写するのだが、部分部分に入る感想が、単なる日本史家には滅多に見られない見解だ。
    一言でいうと、戦国日本の甘さを度々指摘するように、人間の見方が、甘くない。著者自身の体験も含め、目線が楽天的でなく、透徹していて、蒙を啓かれる。

    野球の名将野村克也は「勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負け無し」と述べ、近代外科医学の祖であるジョン・ハンターは「私は華々しい成功譚よりも、百度のヘマをまとめた書籍が欲しい。どこで間違い、失敗したか、それが分かる方が研究にはずっと役立つからだ」という要旨の言葉を述べたらしい。

    敗者の条件は裏返すと一方に勝者が居るのだから、勝者の条件にもなりえる、と本文でも述べているが、野村やハンターの言に習えば、現代の主流とは違って、敗者から学ぶ方がより妥当、かもしれない。

  • 足元をすくわれる者には理由がある

  • 「市場原理・自由競争・自己責任・・・そんな時代にこそ」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/detail?rgtn=072658

  • 大東亜戦争敗戦直後のビルマでイギリス人中尉がこう語った。「ジャップは、死ぬことを、とくに天皇のために死ぬことをなんとも思っていない。おれたちは、ジャップの英軍捕虜への残虐行為と大量殺害に復讐する。戦犯(ワー・クライムド)の処刑はその一つだ。だが、信念を持っている人間は殺されても平気だし、信念を変えようとも思わない。そういう人間に肉体的苦痛を与えても、なんの復讐にもならない。だからおれたちは、ジャップの精神を破壊(デストロイ)してから殺すのだ」。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/09/blog-post_90.html

  • 勝つ方法の前に負けぬ方法を知ること。
    書店に行けば経営や営業、コミュニケーションの必勝法の本が所狭しと並べられている。
    しかし負けないため(だけの)方法についての本は少ない。方法というより気持ちの持ち方。今風に言うならメンタリティー。作中では何度かマキャヴェリの「一旦反抗し、自分が処分した人間は二度と容れるなかれ」の言葉が出てくる。なんて耳障りの悪い。後味の悪い言葉。売れる本の殆どが、ヒューマニズムについて語っているというのに。でもそれは絶望的な言葉ではなく、ゆとりと呼ばれる私にとっては、今生きている自由競争社会のなんたるかを示すものであり、また、本当のヒューマニズムとは何かを示すものものでもある、指針のようなものに感じられた。作中では戦国時代の武将を例に出しているため、共感しにくい部分もあるが、今も昔も変わらない競争原理ということなのだろう。

  • 歴史をデータで並べれば研究になるが、エピソードで並べると物語になる。
    本書は戦国時代にルネサンスを少々加えた敗者に焦点を当てた一冊。
    体系的でない以前に、関連性すら薄く、これから何かを学び取ることは難しい。
    単なる敗者を並べた歴史物語ということを楽しめれば十分だろう。

  • こういう歴史書は初めて読んだがとても面白い。俯瞰的な視点から歴史上の人物を解説している。

  • ヨーロッパの中世と日本の戦国時代を比較する。人間性が疑われるような残酷さは共通している。歴史は似通うものだということか。
    これは面白い。

  • ■書名

    書名:敗者の条件
    著者:会田 雄次

    ■概要

    『アーロン収容所』で知られる西洋史家が専門のルネサンス史の視
    点からヨーロッパ流の熾烈な競争原理が支配した戦国武将の世界を描く。
    (From amazon)

    ■気になった点

    なし

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著者プロフィール

会田雄次

一九一六年京都府に生まれる。四〇年京都帝国大学史学科卒業。四三年に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後二年間、英軍捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学、京都大学(人文科学研究所)をへて、京都大学名誉教授。専攻はイタリア・ルネサンス史。著書は『アーロン収容所』『ルネサンスの美術と社会』『ミケランジェロ』など多数。九七年逝去。

「2019年 『日本史の黒幕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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