ロンリー・ハーツ・キラー (中公文庫 ほ 15-1)

著者 :
  • 中央公論新社
3.59
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本棚登録 : 92
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122048515

作品紹介・あらすじ

黄砂舞い降りるメトロポリス。この国を象徴する者が死んだ。世の中から言葉が減り、人々が生きる気力を失う"カミ隠し"と呼ばれる現象が相次ぐ。親友のいろはを通じた出会いにより、この世界の真実を幻視した「俺」がとった行動とは-三島賞、野間文芸新人賞受賞作家による近未来幻想小説。

感想・レビュー・書評

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  • 第2部の、井上とミコトの心中場面辺りまでが一番面白い。
    井上とミコトの関係性からはみ出した形になってしまったいろはは、二人の最後を再現しようとするかのように、行動する。二人の思考を批判していたにもかかわらず。結局は、いろはも仲間に加わりたかったのだろう。分かり合えると思っていたのに、「分かり合える」の中に自分はいなかった。私はむしろ、なぜいろはが井上の辿り着いた答えに共感しなかったのか、ということに疑問を感じるけれども。
    そんな中で、モクレンだけが動じずに現実を見ている。否、何を現実とするかという視点の違いによって、この解釈は逆転してしまうのだけれども、モクレンだけは、井上ともミコトとも、二人に引っ張られるように行動したいろはとも、違う場所にいる。しかし、本当のこととは何だろう。井上が見た世界は幻だったのか。井上が見ることを望んだ世界だったのか。本質を必要とする人間と必要としない人間についてモクレンは言及していたけれど、世界の本質とは何なのか、どこにあるのか。
    示唆に満ちた小説だった。

  • 背筋が凍った。現代(設定は近未来らしいが)日本社会の行き詰まり、出口のない閉塞感、死にたがりのロンリーハート。恐ろしいほど現実に即している。寓話じみたディストピア小説よりこの限定した具体性が怖い。崩壊した共同体、大人になりきれない子供だらけの島国でもなおこの作家は言葉の持つ力を絶対的に信じている。最後のモクレンの台詞に托される。救いはある。

  • 物語の中に意識が沈潜しないよう、ふんばって読みました。

    意識が持っていかれてしまったら、多分思考が閉じ込められてしまうような強い小説だと思います。

    大衆って怖いなぁ・・・とだけ、記しておきましょう。

  • 主人公の意識がいつもこう、暑くるしい。

  • 「俺を生かしているのは自分じゃなくて、この社会の余力だ」

  • 【作家の読書道:第104回 星野智幸】なので読んだ。

  • 1/26
    再読。


    1/27
    不敬小説。
    貨幣システムにも似た、排除された上部構造。
    その三角形の空白を「無い」と認識するのではなく、「空白が有る」と認識することによって人は平面に降り立ち、他者と対等に向き合うことが可能になる。
    という小説。

  • 2008/7/1購入

  • 今読んでる途中。

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著者プロフィール

1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年 「最後の吐息」 で文藝賞を受賞しデビュー。2000年 「目覚めよと人魚は歌う」 で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。『呪文』 『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

「2018年 『ナラ・レポート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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