地獄の思想: 日本精神の一系譜 (中公文庫 う 16-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122048614

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  • 『地獄の思想』
    2024年3月3日読了

    「地獄」が日本人に与えた影響に興味があり、タイトルに惹かれて読んだ一冊。

    本書では日本の思想を流れる3つの原理として、①生命(いのち)の思想②心の思想③地獄の思想を挙げる。日本の思想や宗教をこの3つの原理で考えている。

    前半は釈迦から法然・親鸞にいたる仏教の祖師について、「地獄の思想」という観点から彼らの考えを分析している。文中で何度も筆者が述べているように、仏教思想に精通しているわけではないのだろう。しかし、広範な知識と熱量でもって書き上げられた文章は、試論であるにせよ、地獄の思想を考える上で核となるのではないだろうか。

    本書の本領は後半にいたって発揮される。ここでは『源氏物語』から太宰治に至るまでの日本文学についても、「地獄の思想」という点から分析している。特に、宮沢賢治と太宰治の論が面白い。彼らの文学作品のみならず、生き方や思想にまで言及しており、一つの作家論としても十分な論考といえよう。

    本書の最終ページに記述にドキリとする。
    「…今、世界は地獄に落ちてゆこうとするのではないか。…今や、全世界をいっきょに破壊させるかのごとき武器でもって。世界を地獄に化そうとしているのではないか。」
    令和の時代になっても世界各地で戦争が起こっている。地獄とは死後に落ちるものではなく、現在も世界のどこかにあるものなのだろう。そして、それを生み出すのはわたしたち人類なのだ。

    「世界と人生にひそむ地獄を深く凝視せよ。それのみが極楽への道である。――それが仏教の、大乗仏教の教えた心理なのである。」
    自身の身の回りが平和であるからこそ、世界各地で今起こっている地獄から目を背けてしまう。でも、それでは世界はよくならない。

  • 前半の地獄の思想の系譜が知りたくて読み始めたけど、後半の地獄を切り口にした日本文学の考察もおもしろかった。やや勢い頼りなところはあったけど、その熱量に夢中にさせられた感じはある。独自視点で切り開かれる日本文学の新しい解釈は、事実正否は別としても、論考としてとてもおもしろかった。宮沢賢治の引用されていた詩は特に仏教的世界観との重なりをわかりやすく感じられた。

  • 極楽よりも近くにあり、極楽よりも広い、そして極楽よりもずっと古くからある地獄。仏教が生んだ地獄の思想を、釈迦、智顗、源信、親鸞、法然と、印度から中国、そして日本へと辿り、地獄という切り口で、『源氏物語』を、『平家物語』を、世阿弥を、近松門左衛門を、そして宮沢賢治を、太宰治を論じてみせる。文学とは多様な解釈がありうるのだと分からせてもらえる。いよ! 梅原節! と言いたくなる。

  • まえがき
    第1部 地獄の思想
      第1章 地獄とはなにか
      第2章 苦と欲望の哲学的考察
      第3章 仏のなかに地獄がある
      第4章 地獄と極楽の出会い
      第5章 無明の闇に勝つ光
    第2部 地獄の文学
      第6章 煩悩の鬼ども
      第7章 阿修羅の世界
      第8章 妄失の霊ども
      第9章 死への道行き
      第10章 修羅の世界を超えて
      第11章 道化地獄
    あとがき

  • 原始神道、密教:生命的禮讚。佛教之天臺,淨土教:地獄思想,生命的悲苦。兩者結合影響日本人的性格,增加深度。

    釋迦的原始思想:四苦八苦,來自慾望(想要擁有、活著的慾望和死的慾望)所以要捨棄慾望,方法是藉由正確的修行(道諦)。澄靜理性地凝視"現世",他並不談論來世,也不談論超自然或者迷信。
    地獄信仰:似乎來自幼發拉底河流域(回不來的國),西元前十世紀已經傳入印度,並且生根,釋迦的時代已經深入人心。順隨慾望是苦這件事未必對所有人適用,要讓它更有說服力,就是把因果概念擴大到後世。然後釋迦的說法又和地獄思想體質上很容易結合,因此就往超越現世的因果概念的解釋方向發展。

    天臺ー自省的宗教。為日本增加自省的元素。智顗編經典年代表認為最頂點是法華經。創十界概念(六道+四個佛的さとり世界),十界中更各有十界("十如是","十界互具"),三界中更各有千界(三千世界),一瞬之心中有三千世界(一念三千),對於這些人類性格的陰暗面反省,提出止觀修行的概念。要有人生是"空",是"仮",但也是"中"的澈悟,努力過生活(意即不偏虛無主義但也不要太過現實,是為"三諦圓融"。仔細觀想十界,獲得三諦圓融的智慧)。
    源信ー專論六道是苦,想像力的訓練(天台本身就有這種觀想訓練,可是是觀想十界,從小處到大處。這裡也是從小到大,從白毫想像到阿彌陀如來想像到整個極樂世界的練習)。講述淨土的美反而讓人感受到哀愁,悲しさ+甘さ作者認為是"日本的情念(日本的センチメンタリズム)"的原型。正是源信,讓天臺的地獄思想和淨土的極樂思想(淨土教是西域傳進中國和道教結合, 產生曇鑾道綽善導等思想家)結合。觀無量壽經。
    法然(他力略)
    親鸞ー把阿彌陀佛從死者的佛詮釋成是生者的佛,重視大無量壽經、涅槃經(惡王得救),極惡罪過也可以在生時即得救。再者,他引用末法燈明記,內容為當時既然正是末法時代的開端,所謂末法是無戒律的時代,就沒有破戒跟遵守戒律的問題了,因為根本沒有戒律(正法和像法時代才有)。既然末法時代人人都是惡人,唯一要做的就是尊敬穿僧衣的人。但親鸞進一步的詮釋是自己罪惡的無藥可救,然而阿彌陀的他力卻拯救自己的喜悅,人要自己得救是妄想。阿彌陀的光拯救人,所以他改稱為不可思議光如來,盡十方無礙光如來。認為自力的人去的是假淨土即化佛土,不管惡人窮人只要他力信仰就可以去真佛土(教行信證化身土卷)。地獄在人心中。

    佛教中地獄和人息息相關,源信也說我們就是住在六道的苦中。西方有信仰則不會墜入地獄所以但丁可以用那種不關己事活該的態度來看地獄的人,也不會是和人本質相關的存在。東方是苦惱的文明,西方是罪惡的文明。

    佛教形成日本人魂的根底,但中國人根底還是儒教的人間主義、現實主義。而日本開始從中國接收文化的時候,正好是中國對現實主義人間主義感到厭膩很認心地將超人間主義夢幻主義熱心地引進的時期,因此日本對佛教更熱心地引進!!!!!

  • アホなので初めて梅原さんを読んだ。いや多分どこかで読んだけど忘れてる。うーん同意できる部分もあるけど、やっぱりちょっとそれはこじつけではないだろうかと思う部分もあったり。宮沢賢治って凄い人だと思うけど私はそこまで神格化したくないというか、むしろ人間らしいからこそああいう文章が書けるんだと思うのだけどな。さくさく読めたしおもしろかったです。現代版地獄の思想もあれば読みたい。

  • 日本文化論の教科書に使用。

    仏教思想とはどういったものなのか。
    日本の文学、芸術などに影響を与えている仏教思想について詳しく書いてあってわかりやすく、日本文化を理解するのに役立ちました。

  • 人が死ぬと、生前の行いによって、極楽に行く人と地獄に行く人があるらしいと聞いたことがあるでしょう。信心を忘れた現代人の多くが行くであろう地獄とは、どんなところなのでしょう。その疑問に答えてくれる名著です。(2010:上野麻美先生推薦)

  • 浅学にしてまともなレヴューが書けません。が、面白かったし為にもなりました。

  • 数ある先生の本の中で一番最初に手に取った本です。

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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