大学という病―東大紛擾と教授群像 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 54
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122048874

作品紹介・あらすじ

昭和三年、三・一五事件で東京帝国大生の検挙者が続出、学内では左傾教授の処分が行われた。左傾認定を受けた大森義太郎は自ら辞任するが、それは十年にわたる派閥抗争の序章に過ぎなかった-。経済学部を壊滅状態に追いやった「大森事件」とその余波を豊富なエピソードとデータを駆使して描き、大学のあり方を問う警世の書。

感想・レビュー・書評

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  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)98
    歴史についての知識で、未来への指針を探る
    東京帝国大学経済学部の内部紛争を大森義太夫助教授を軸に描くことで、制度化された知がはらんでいる問題点を見事にえぐり出している。

  •  一言で言えば、筒井康隆『文学部唯野教授』の実話バージョンといったところ。何より本書で紹介される戦前の帝大教授の生態に抱腹絶倒。こうした暴露話のディテールだけでも十分に楽しめる。
     たとえば自分の著書をひたすら読んで聞かせる教授もいれば、受講生にノートをとらせるが、その内容が「プリントになって売り出されている前年の講義と全く同一」という教授もいる。ノートの手を休めさせるために話す教授の雑談や冗談も、まるで同じ。試しに教授が冗談を言った個所をメモしてみたところ、何とそのタイミングまで寸分の狂いもなかった…。

     なお、「武闘派」のイメージが強い河合栄治郎にホモの気があったらしいということも本書で初めて知った。

     ただもちろん、本書は単なる暴露本ではなく、れっきとした歴史社会学の本。草創期の東大経済学部における泥沼の派閥抗争(この抗争は結局文部省をバックにした「平賀粛学」で喧嘩両成敗に終わったが、かえって行政による大学自治の侵犯として物議をかもし、その悪名を歴史に残す結果となった)を社会学の理論を駆使しながら考察したもの。とはいえ、かなーり柔らかくして説明されているので、「ガクジュツ的」な取っつきにくさはほとんどないはずだ。

     ただ本書を読んで思ったのは、昔の帝大教授と言えどいったん派閥抗争の渦中に入れば、自分の思想信条なんかより目先の勢力争いの方を優先するんだなと。河合を追い落とすための合従連衡で、マルクス派の陣営とファシズム寄りの陣営が結託するんだから、傍から見れば「良心はどこに?」としか言いようがない。
     まあ政治なんていうものは、どの次元でも古今東西そんなものなんだろうが。

  • 10/01/10、ブックオフで購入。

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プロフィール

一九四二年(昭和十七)、東京都生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。京都大学大学院教育学研究科教授などを経て、現在、関西大学東京センター長、関西大学名誉教授・京都大学名誉教授。歴史社会学・教育社会学専攻。九六年に『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会)で第三九回日経経済図書文化賞、二〇一二年に『革新幻想の戦後史』(中央公論新社)で第一三回読売・吉野作造賞を受賞。ほかに『教養主義の没落』『丸山眞男の時代』(以上、中公新書)、大学という病』(中公文庫)、『社会学の名著30』(ちくま新書)、『学歴貴族の栄光と挫折』(講談社学術文庫)、『大衆の幻像』(中央公論新社)など。

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