雨の匂い (中公文庫 ひ 21-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 193
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049246

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  • 癌で入院中の父親と寝たきりの祖父、二人の介護とアルバイトで日々をすごす大学生の柊一。本心では人間関係の煩わしさやしがらみを嫌いつつ、その感情に蓋をして淡々とクールに過ごしている。表面上の会話では決して相手を否定しないのに、「都合良く」人が次々と死んでいく様が不気味で作者らしい展開。柊一の感情を、丁寧に描かれた情景や行間で間接的に表現しているのも秀逸で、独特の世界。いつもながら、料理や家事の几帳面な描写に牧歌的な会話、静かに含んだ毒に至るまでたっぷり堪能出来る一冊。「ピース」が好きな方には是非。

  •  一応大学生ではあるものの、家でほぼ寝たきりの元塗装工の祖父と、末期癌で入院中の父親の両方の面倒を見ながら、夜はアダルトビデオ専門のレンタル店でアルバイトをしている柊一。淡々と過ごす日々の中、向かいの家の鈴木ハツを通し、昔祖父が手掛けた緒川家の塀の塗り直しをやってくれないかと頼まれる。その家の向かいは近所でも有名なゴミ屋敷だった。

     本当にこの男は大学生なのか?と思うほど、達観しているというか、すでに諦めの境地なのか、祖父や父親の介護を本当に淡々と、文句も言わずに完璧にこなす柊一。読んでいる間中、その姿の内側に何か暗いものを溜め込んでいる印象をずっと抱いていたのだが、物語後半の行動で「あぁ、やっぱり」と妙に納得してしまった。この話は犯人探しの物語ではないので、この後柊一がどうなったかはわからない。誰か、彼の内面を救ってくれる人は現れるんだろうか。

  • 樋口有介の作品でこれが一番好き

  • 久し振りに面白い小説に出会えた。

  • 再読。
    癌で入院中の父親と寝たきりの祖父、二人の介護とアルバイトで日々をすごす大学生の柊一。
    淡々となんでもないように家事・介護をこなす柊一、樋口氏の中では異色作。

  • 淡々とした主人公が逆に怖かった。

  • 末期癌の父と,寝たきりの祖父を介護しながら暮らす青年の話。
    ひねくれたような達観したかのような,オッサンくさい主人公は魅力的だったが,事件がなかなか起こらず,終わり方も中途半端で,今まで読んだ樋口有介作品ほどには楽しめなかった。

  • 『ピース』『枯葉色グッドバイ』『月への梯子』に続き、樋口作品読了四冊目。 『ピース』に感動した理由の一つである作品に流れる樋口氏の正義感・倫理観が、この作品では『ピース』以上に強く感じられて大変満足しました。 『ピース』での正義感・倫理が美意識に基づいていたのだと、この作品を読んで理解できました。 『枯葉色グッドバイ』と違い、読後感はかなりビターな味わいでしたが、その美意識のために不快な感じがしないのもいい味わいだったと思います。

  • かなりフカカイな小説である(- -

    前半、「事件」が起きるまで
    かなり長いこと淡々と主人公の日常が描かれる。
    途中で「これは一体何の小説だ?」と不安になる(- -;

    後半、立て続けに「事件」が起きるも、
    何一つ解決しないままに終わってしまう(- -
    何というか、カフカのような消化不良感(- -;

    主人公の若い男性は、樋口氏お得意の
    「ひねくれ者」「韜晦」キャラ。
    周りの登場人物も、一癖も二癖もある人が多い。

    これと好対照に、「近所のおばちゃん」とかは
    まったくのオバチャンキャラとして登場するので、
    振れ幅が広くある意味リアル。

    が、事件にしてもツッコミ処は満載だし、
    いったいこれは何が言いたかったのか...
    いや、特に「言いたい」ことはないのか...

    変な意味でいろいろ考えさせられる一作(- -;

  • 何と無く理解は出来る気がするが主人公の感情の無さが気色悪いし気分が悪かった。 警察側からの小説やと穴だらけの犯行に感じる。穴が無くても色んな接点で怪しまれる気がするので余計な事をし過ぎちゃうかなぁ?人生を捨てたって事かなぁ?自分の読解力では分からん。

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著者プロフィール

1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』で第103回直木賞候補。著書に『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の思惑』、「船宿たき川捕り物暦」シリーズの『変わり朝顔』『初めての梅』(以上、祥伝社文庫刊)など。2021年10月、逝去。

「2023年 『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の策略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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