疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

制作 : William H. McNeill  佐々木 昭夫 
  • 中央公論新社 (2007年12月1日発売)
3.89
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  • 31レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049543

作品紹介

アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著。

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)の感想・レビュー・書評

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  •  人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。
     現代の文明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すものの、次第に弱毒化していくように進化する。また、人類の側でも共同体内に一定の免疫を維持した状態が保たれるようになっていく。確かに、生物学を学んだものとしては、そういったとこだろうなと理解できる。その理解の単品と、人類の歴史という壮大なプロセスを組み合わせて新たな発見を発見・提唱できるというところがマクニールのすごいところだと思う。
     上述の理解と世界史を組み合わせた場合、それまで交流のなかった人間集団同士が交流するようになった時には一種の無自覚の細菌戦争が行われることが分かる。その時点までにより多くの集団と交流してより多くの病原体と出会っていた方の集団の成員が、他方のインタクトな集団に対して病原体をばらまくことになるからだ。スペイン人がアメリカ大陸に進出した際にインディオを壊滅させた仕組みだ。
     マクニールのすごいところは、上記の仕組みに気がつくことに加えてさらに、膨大な量の史料をあたり、各分野の専門家と議論して、着想への裏付けを取る努力をすること。また、その内容を大著として書き上げる能力。着想・裏どり・記述という一連をこなし、何冊も本を書いている。本当に偉大な学者だ。

  • 経済雑誌のおすすめ。

    決して難解な文章ではない。
    ただ、あまりに膨大な情報量、
    反語表現の多さ、
    時空を超えた例示にキャパオーバーになってしまう。
    自分がどこにいるのか、いつの何の話を読んでいるかを
    見失いがち、とでも言うか。

    そしてついつい、本筋を離れて、枝葉末節の話を拾ってしまう。
    英国海軍が壊血病に効果のないライムジュースを飲んでいて、ライミィと呼ばれてたとか、
    農業が始まってからよりも、狩猟時代の人類の方が、
    健康的で余暇があったとか。

    (下巻に続く)

  • 読了したのはかなり前だが…
    ワクワクしながら、「スゲー!スゲー!マジでー?!」と驚きながら、あれよあれよという間に読み終わってしまったことが印象的。
    ザックリとしていながら、世界が網羅されているという、スリリングで素敵な歴史書です。

    超オススメ!!

  • 新書文庫

  • 著者のマクニール氏は当然歴史家ですが、これを読むと科学者でもあると思うのです。
    この本では「世界史」で詳細に触れていない疫病について述べているのですが、数少ない古書を紐解くにしても医学や生物学などの自然科学の知識がないと、感染症ついては到底推測できないからです。グローバル化した現代社会では地球の裏側で発生した感染症が忽ち全世界を脅かす危険に曝されています。最近ではパンデミック寸前だったエボラ出血熱が記憶に新しいところです。今日の人間を脅かす感染症の元となる出来事は、人類の祖先がはるか昔、アフリカの大地から各地に移動していったことに寄ります。熱帯雨林での多様なミクロ寄生の網の中で他の生命体と絶妙なバランスを維持してきた環境から抜け出した人類は、各地で様々な特異な性質を現し、他の動物を圧倒し食物連鎖の頂点に立ちます。爆発的に人口も増えて行くのですが、これにより人体内部の寄生体(微生物)の多様性も失っていたのです。宿主と寄生体のアンバランスが病気を発症させるという基本的な考え方を思い出すと、脆弱なミクロ寄生の環境に身を置いた人類がその後、幾度も目に見えない病原体の侵入に曝され、急激な人口減少を繰り返したのも必然の成り行きなのでしょう。冒頭でアステカ帝国が少数のスペイン人により制圧された要因が疫病にあると推測していますが、これまでの歴史家が焦点を当ててこなかった部分で学際的で納得がいきます。疫病の流行がキリスト教や仏教の布教に影響したというのもなるほどね〜と思いましたし、以前に読んだ孔子の時代をテーマにした小説で南部の地方の医者が薬の処方や治療に長けていると言う記述があったのは理由があったことに気づきました。マクニール氏によると、天然痘の根絶に成功したとWHOが高らかに宣言したとしてもそれは「人類の手による生態学的な混乱のひとつ」であるから、われわれは「依然として地球のエコシステムの一部」であるという人間の本質的な条件に変わりはないといいます。微生物側からするとちゃんちゃらおかしいということなのかもしれません。下巻では 黒死病など具体的な疫病についての考察があるようなのでこれも楽しみです。ネイサン・ウルフの「パンデミック新時代」という本とこの本を並行して読むと尚理解が深まるのでお勧めします。、

  •  歴史を動かす究極的な力(要因)は何なのか。神の摂理? 超越的な人間の能力? 技術力の発展に伴う経済構造の変化? 単なる偶然と運がすべて? それとも複合的原因による多重的決定? いやいや、それを前にしては免疫を持たぬ人間など全く無力な、未知の(あるいは既に抑止できたと思われていた)感染症・疫病!の力を忘れてはならない。中世の黒死病(ペスト)がなかったら、我々は現在、我々の知る世界とは全く違った世界を眼にしていたであろう。ホーキングが敢えて「絶対に人類は未知との遭遇をしてはならない」という理由もそこにある。我々の運命は、愚か者の手中などではなく、知られざるウィルスに握られているのかもしれない。同時に「同じ意味で」ジョン・W・キャンベルの『影が行く』も必読書である。

  • 医療の歴史より、疾病の歴史の方が面白い。医療の歴史の主人公が 強い人間なのに対して、疾病の歴史の主人公は 弱い微生物が多い

    ヒトは 食べられて進化してきたことを実感した

    他のレビューにあるように 読みづらい。

  • 面白いけど読み進まない…上巻は具体的な病名も出てこず、導入だった。

  • マラリア、ペスト、天然痘、結核、コレラ、梅毒。古来「神の怒り」と怖れられてきた疫病は、個人と共同体の運命を翻弄し、時に歴史を大きく塗り替えてきた。遊牧帝国の繁栄とペスト、インディオを絶滅寸前に追いやった旧大陸の感染症。ハンセン病に割かれた頁は多くはないが、重度の皮膚病がすべてこの名で呼ばれ一様に隔離されていた時代や、近代戦の開始に伴う疫病学の発達など、本書は社会の変容と疫病の関係を多元的に描き出している。

  • ときどき日本語が変なんだけど、そこは仕方ない。
    歴史を学んでいると、よほどでないと病気の話ってでてこなくて、この本を読んで震えた。
    地政学を読んだ時、自然の境界を越えたとき、国は滅亡するってあったんだけど…これ、病気もあるんだろうなぁ。

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