疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 中央公論新社
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本棚登録 : 731
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049543

作品紹介・あらすじ

アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著。

感想・レビュー・書評

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  •  人類の世界共同体化と西洋の興隆において、疫病と免疫が果たした役割の重要性を指摘した著述。これまで世界史というと武器・農機具・移動と生産に関する技術の発展の観点から語られることが多かったけれど、実は生物学的なプロセス、具体的には病原体と人間の免疫の共進化が強い影響力を持っていたという話。
     現代の文明化された人類の共同体ではただの小児病とされていたり生活習慣によってレア・ケースとなった感染症の多くが、古代においては死に至る病だった。あまりに迅速に感染者を殺し、未感染者をほとんど残さない病原体は、子孫を残すことができない。よって、新たに人類に寄生するようになった病原体は、最初は激甚な症状を表すものの、次第に弱毒化していくように進化する。また、人類の側でも共同体内に一定の免疫を維持した状態が保たれるようになっていく。確かに、生物学を学んだものとしては、そういったとこだろうなと理解できる。その理解の単品と、人類の歴史という壮大なプロセスを組み合わせて新たな発見を発見・提唱できるというところがマクニールのすごいところだと思う。
     上述の理解と世界史を組み合わせた場合、それまで交流のなかった人間集団同士が交流するようになった時には一種の無自覚の細菌戦争が行われることが分かる。その時点までにより多くの集団と交流してより多くの病原体と出会っていた方の集団の成員が、他方のインタクトな集団に対して病原体をばらまくことになるからだ。スペイン人がアメリカ大陸に進出した際にインディオを壊滅させた仕組みだ。
     マクニールのすごいところは、上記の仕組みに気がつくことに加えてさらに、膨大な量の史料をあたり、各分野の専門家と議論して、着想への裏付けを取る努力をすること。また、その内容を大著として書き上げる能力。着想・裏どり・記述という一連をこなし、何冊も本を書いている。本当に偉大な学者だ。

  • 感想は下巻で
    ただし印象深い一節があったので引き写しておく
    「死の災厄のうちにわれわれの多くの者が死んでいく。つまりわれわれの多くの者がこの世界から解放されていくのである。この死の災厄は、ユダヤ人と異教徒とキリストの敵たちにとっては、ひとつの禍である。だが、神のしもべたちにとって、これはひとつの幸運な出発である。人の種族の如何を問わず、正しき者がよこしまな者と共に死んでいくこの事実を前にして、あなた方は破壊が善人にとっても悪人にとっても等しいものと考えてはならない。正しき者は新たなる生へと召され、よこしまな者は責め苦に処される。信仰ある者には速やかに保護が与えられ、信仰なき者には罰が与えられる。……(中略)……一見恐るべきものに見えるこの疫癘が、すべての人びとの正しさを探し出し、人の心を検証してくれるのは、なんと適切でなんと必要なことであろう。
    P201より引用」
    251年カルタゴ司教キプリアヌスの当時荒れ狂っていた疫病を賞め讃える一文
    遠藤周作『沈黙』とこの一文を比べて
    宗教が必要とされてきたということにどちらが近いかは
    やはり近代以降の日本人には及び得ないところなのではないかと感じる

  • 経済雑誌のおすすめ。

    決して難解な文章ではない。
    ただ、あまりに膨大な情報量、
    反語表現の多さ、
    時空を超えた例示にキャパオーバーになってしまう。
    自分がどこにいるのか、いつの何の話を読んでいるかを
    見失いがち、とでも言うか。

    そしてついつい、本筋を離れて、枝葉末節の話を拾ってしまう。
    英国海軍が壊血病に効果のないライムジュースを飲んでいて、ライミィと呼ばれてたとか、
    農業が始まってからよりも、狩猟時代の人類の方が、
    健康的で余暇があったとか。

    (下巻に続く)

  • 読了したのはかなり前だが…
    ワクワクしながら、「スゲー!スゲー!マジでー?!」と驚きながら、あれよあれよという間に読み終わってしまったことが印象的。
    ザックリとしていながら、世界が網羅されているという、スリリングで素敵な歴史書です。

    超オススメ!!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「疫病と世界史」疫病との戦いと克服の歴史?
      ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」も読んでみたいと思っているのですが、どちらを先にしよう...
      「疫病と世界史」疫病との戦いと克服の歴史?
      ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」も読んでみたいと思っているのですが、どちらを先にしようかな?
      2012/04/12
  • 書かれてのが、エイズが流行してた時代という古いのはともかく、なんか文章が読みにくい。
    あと、題名から想像できる内容とは若干違う。
    世界史じゃ無くて、「人類史における、権力の発展と感染症との相互作用と、その歴史」とでもいうべきなのか、
    まあ、「ミクロ寄生とマクロ寄生という概念を用いて、ミクロ寄生とは感染症であり、マクロ寄生とはあたかも感染症のようにある人間集団が別の人間集団に寄生している様」であり、興味深くはあるのだけれど。

  • 読み終えたのは年明けだったが、お陰でコロナ禍の今、感染症を正しく恐れる事に一役買っている。

  • 人類と疫病について。
    人類発症の地アフリカは長く人類と疫病が共存することで均衡に達し、人類の人口を爆発的増加を抑止する強力な風土病が多いという視座は興味深い。
    本書のテーマだから仕方ないかもしれないが、歴史の流れを全て疫病で説明しようとしているため、どこか論理的な無理を感じる。

  • 訳が雑でところどころ論理性を欠いている。
    歴史観は斬新でおもしろい。

  • 実証的な裏付けをさほど重視していない点で時代を感じるところはあるが、それにしても40年前にこんなものが書かれていたとは。

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