雛の家 (中公文庫 く 11-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 63
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049635

作品紹介・あらすじ

ふたつの大戦の狭間、遠く軍靴の響きをききながら、それでも世の中がほんの少し凪いでいたころ。日本橋の老舗人形屋「津の国屋」の美しい三姉妹、ゆり子、真琴、菊乃が織りなす、それぞれの狂おしい恋愛を描く。

感想・レビュー・書評

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  • たちこめる、むせかえる。そんな匂いの表現が浮かび上がる不思議な筆致。

  • 昭和16年前後の物語。16年までの、荒れ始めた世間を知らずに安穏と過ごす姉妹。16年からの嫌が負うにも世間の荒波にさらされていく姉妹。自分たちの生き方の変化と世間の変化のリンク。助け合い、語らず、そして助け合う姉妹。男性作家が何故、このようなきめ細かい女性像を書けるのであろうか。

  • 一番、大切な本の次にはこれが好きと言える。
    三姉妹の凛々しくて、強かな姿。霧の中を、ただ一点だけを見詰めて歩き続ける後姿。
    秘めた決意であったり、狂おしい恋情であったりを胸の内に仕舞って、互いにそれを静かに見ている距離感が凄く好き。
    三者三様の恋愛模様もいい。真琴の恋愛には、あまり共感できなかった(好みの問題)けれど、菊乃が鶴吉と対峙するときやゆり子と結城の最後の逢引なんかは本当にドキドキした。
    鶴吉や結城の息遣い、菊乃やゆり子の胸のざわめきなんかが聞こえてきそうな文章だった。

    濃厚な物語。薄い頁が人肌みたいで、細い文字が吐息のように思える繊細な文章。
    とても綺麗。狂おしさが生きている。

    最後の100頁くらいは、止まらなかった。
    少し、泣いた。

  • 東京の老舗人形店の美人3姉妹の恋愛話です。すごく個性的な3人の女性が時代背景の中で結構どろどろの恋愛を繰り広げますが・・・老舗お嬢の品格保ちつつ美しく描かれてます。私は好きです!

  • 大好き。

    それぞれに苦しい恋をした三姉妹。
    でもきっとあの娘たちは、世界がもっと広いということも、また別の恋をするであろうことも、
    頭のどこかでは想定済みなのだろうと思う。
    少女は夢見がちで幼く、且つ現実的でしたたかで、矛盾しているのだ。
    その矛盾が見事に描かれていて、切なくてうっとりする。

  • 道尾秀介さんが、新聞の対談記事でこの本を紹介していたので借りてみました。対談相手の大沢在昌さんは、久世光彦さんを「日本一文章がうまい」と言っていました。たしかにうまい。初めの数ページに出てくる、戦前の日本橋界隈の描写を読むと、自分がそこにいるかのように風景や空気が伝わってきて、すぐに物語に引き込まれました。人形屋さんの三姉妹の恋物語なのですが、その恋が、ちょっと倒錯気味だったり、耽美な感じなのに、三姉妹の明るさ、華やかさでドロドロした部分が相殺されている。読んでいると光と影両方に心が浮き沈みして、読み終えたあとはその余韻で不思議な感覚を覚えました。

  • なんとも、久世さんらしい。
    と、言える程、たぶんこの人の小説を読んでいないけど。
    それでも酷くこの人らしい小説だなぁ、とか思った。

    女の人は強いなぁ。
    なんだか、3姉妹が3人とも、どこまでも正気。
    強い。自分の願望にもとても素直だ。
    変わっていくけど、根本がまっすぐぶれない。ような。

    だから美しいのか、と思ったりしました。

    描写がいちいち艶っぽくて、
    だからより美しいなぁ、と思った。

    昭和を懐かしむ人が見たいのは、
    きっとこんな風景なのかな、となんの脈絡もなく思いました。

  •  昭和14〜20年ごろの話。日本橋の老舗人形屋の美しい三姉妹の恋模様。長女ゆり子は右翼の男、次女真琴は抗日運動の朝鮮人、三女菊乃は言葉を話せない住み込みの美少年人形師とそれぞれ恋に落ちる。……濃い恋模様だ(笑)
     文体も丁寧だからよけい濃い! 話の筋とか作者は何が言いたいんだーとかではなく、この濃密な雰囲気を楽しむのがよいのだと思う。でももっとエロスでもよかった(笑)
     「罪」とはなんだろうか。『こころ』みたいに、「恋は罪悪ですよ」ってことかな?

  • 東京日本橋の老舗人形屋の美人三姉妹の恋と生き方を、昭和14年から昭和20年の東京大空襲まで描く。


    菊乃の二人の姉への疎外感や、三姉妹の祖母・お吟さまのパリッとした態度が、脳梗塞をきっかけに徐々に衰えていく様子や、お吟さまのという大黒柱の死や三姉妹の悲恋、戦争が熾烈になっていくにしたがって寂しくなる家の様子の表現は逸脱。

    《以下ネタバレ》
    ようわからんかった。

    はじめは、華やかな三姉妹がキャッキャしているけれど、だんだん暗い話になっていく。
    長女・ゆり子は年の離れた右翼の男と関係を持ち、男の起こした事件により警察から嫌疑をかけられる。男が殺される現場に居合わせ、自殺を図る。
    次女・真琴は左翼の中国人の彼が強制送還され、シングルマザーになる。
    三女・菊乃は聾唖の奉公人の心をもてあそぶ。奉公人は離れていく菊乃の気持ちを知って、自らの目を潰してしまう。
    こわいよこわいよ。
    530

  • 三人姉妹に惹かれます。そして頭師に惹かれます。なんでこんなに妖しいんだ。で、鶴吉の美少年っぷりが凄いらしい。想像がつかない…。

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著者プロフィール

久世光彦

一九三五(昭和十)年、東京生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。TBSを経て、テレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。九三年『蝶とヒットラー』でドゥマゴ文学賞、九四年『一九三四年冬――乱歩』で山本周五郎賞、九七年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、二〇〇〇年『蕭々館日録』で泉鏡花賞を受賞。一九九八年紫綬褒章受章。他の著書に『早く昔になればいい』『卑弥呼』『謎の母』『曠吉の恋――昭和人情馬鹿物語』など多数。二〇〇六年(平成十八)三月、死去。

「2022年 『蕭々館日録 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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