女妖記 (中公文庫 さ 51-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050518

感想・レビュー・書評

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  • 以前詩集は読んだ西條八十。いわゆる歌謡曲や俗謡の歌詞ではなく、初期の文学詩は結構幻想的だったりして好きなので、こちらも幻想的な短編集かなと思いきや(表紙も耽美に山本タカトだし)、なんと女性遍歴についての自伝的エッセイでした。

    明治25年生まれ、昭和45年に亡くなった八十。いわゆる職業作詞家というものがほとんどいなかった時代にあちこちのレコード会社と契約している売れっ子作詞家で、まあ極端だけど現代で言うなら秋元康くらい荒稼ぎされていたと思われ、当然モテるし、愛人も囲い放題。しかしなぜかちょっとヤバめの女性が多く、次から次へとメンヘラ女性が現れて、もはやメンヘラ48とかユニット作れそう(苦笑)

    実はあなたの娘です(もちろん真っ赤なウソ、なまじ八十先生に身に覚えがあるのが困りもの)といって現れた「今子という娘」、ファンレターや詩を送りつけてきていた女性が病気で余命僅かだというのでうっかり会いにいったら青酸カリ入りの紅茶で無理心中させられそうになる「十一号室の女」も相当怖いですが、病的な盗癖虚言癖があるも天使のように可愛らしくもういっそその嘘をずっと聞いていたくなるという「桔梗の話」の桔梗さんがやっぱ総選挙1位ですかね。

    「ネルケの花」は唯一フランス人女性で、こちらは恋の経緯よりも、1936年のベルリンオリンピックについてのあれこれが豆知識として面白かったです。ヒトラー始めナチスの面々がこぞって観覧に来ていたというから驚き。

    ※収録
    今子という娘/十一号室の女/登山電車の女/桔梗の話/李姿鏡/水戸の狂女/黒縮緬の女/濹東の女/枕さがし/ネルケの花/復讎

  • 西条八十が66歳の時に書いた女性遍歴記です。

     久しぶりに城下町の本屋さんに行って、手当たり次第5~6冊購入したなかの、表紙に魅せられた本。

     「えっ、八十さんて童謡詩人じゃなかったっけ?」という意味のない偏見もあったので、興味ひかれたのもほんとです。

     まことなのか、創作なのか、まあ、つぎからつぎへと艶話。ご本人も尾ひれをつけて語るうち、わからなくなったとぼけていらしゃる。

     そうじてモテモテの話なんだけど、ユーモラスというかいやみがない。古い時代(昭和の初め)だから芸妓や遊郭の女性が登場。(堅気の女性もあったそうだがそれは迷惑だから割愛したそう、って)パリに留学してまた後にも外遊しているから金髪美人もありなのです。

     しかも、手癖のわるいうそつき女とか、姉御肌の女すりとか、なかなか落ちない女とか、いわゆる魔性の女性に惹かれていくご自分をも愛でてもいるよう。

     でも、でも文章や構成がうまくて「くくく、、、く」と含み笑いしながら読んでしまう。

     あげくの果て女って「妖」がないと魅力ないかもしれない、とつくづく思いましたよ。

     半世紀前のを復刊という。軽くておもしろいのをよくぞ出してくれました。

     ああしかし、現代のブログガーたちはこんなのは朝飯前でした。文章力は八十張りではないだろうけど。

  • もー、すごいくだらなくて面白かった。

  • 西條八十。美しき詩を書く偉大な詩人は、女性に優しく、それゆえモテたようだ。取り巻く女、行き過ぎる女たちとの物語。なんでモテたのか、勉強になる本だと思います。

  • 自伝的暴露本のためどこまで脚色されているか不明(著者もそう書いてる)。年月による曖昧さ程度であるならこころに偽りはないはずで、そりゃモテるわ…の一言に尽きる。

  • 西條八十には童謡詩人のイメージを持っていたがガラリと崩された。自身の女性遍歴、しかも女妖と評される女たちとの八十の記憶がつづられている。
    ところどころに八十の詩が挿入されているがいずれも素晴らしく詩集が欲しくなる。

  • 様々な妖しき女性たちが
    何とも言えず面白い。
    自伝的小説とか。

  • 半年ほど前、本屋さんで文庫本の棚をぼーっと見ていて、「・・・西條八十?」と気になっていた1冊。詩人であり、『東京行進曲』などのモダンな歌謡曲で名高かった西條八十の小説ということと、表紙が元ネタと比べてもなかなかデカダンで美しく、ちょいと読んでみようかと手に取りました。

    西條八十自身とお付き合いのあった女性たちに材を採った連作小説。粋筋の姐さんがたや、その界隈では名を知らぬものはいない姉御、はたまたリアル『舞姫』?とまあ、おモテになること!時系列で追っていないのでなんともいえないけれど、お付き合いがかぶっている時期、絶対あるよな(笑)。

    西條八十自身の教養と優美な筆致もあって、生々しい状況も結構詩的にまとめられていたりする。新民謡の依頼を受けての旅先など、仕事がらみの接待でねんごろになったお姐さんがたも多く見受けられ、遊び人ではあると思うんだけど、そのあたりもひどい修羅場になることもなく(ただ、意趣返し的なことはお互いにやってる)、比較的すっぱりとお付き合いが終わっている。実際のお付き合いでも、女性に手ひどい仕打ちはなかったんだろうし、双方にいい思い出として終わっていることも多いのかもしれない。まあ、西條先生サイドの思い出なので、確かなことはわからないけれど。

    個人的な好みでいえば、『李姿鏡』が抜群だと思う。美しいタイトルと、熱狂的な西條ファンの女性が、彼との別れの日に見せる振る舞いが鮮やかで気高い。

    永井荷風没後の玉の井でのエピソードや、自分の詩に作曲してもらう中山晋平とのやりとりなど、同時代の文化ネタも面白かった。タイトルとのからみからいって、正直、「西條先生、これってモテ自慢アーンド『まんじゅう怖い』小説でしょう!」と突っ込んでしまうのが、ちょっとお茶目なところかも。

  • ひらたく言ってしまえば
    いつどこでどんな女と遊んだか、
    ヤッたかの詳細みたいな感じ

    いつどんなときでも、どんな立ち場の女性でも
    大切に扱おうとしているところに好感をもてる

    気前もいいし、この人に女が寄ってくるのも納得できる

  • 帯を作った方に拍手。とても購買意欲をそそられました。そして、当たりでした。ありがとう煽り文句考えた方。
    こんな時代もあったのか、と羨ましいようなこわいような変な感覚に陥ります。良くも悪くも、動いている時代の混乱。

    現実か虚構か。独特な空気の流れる著者の女性遍歴の記述。

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著者プロフィール

1892年東京生まれ。早稲田大学卒。高踏的象徴詩をつくる一方、大正期の代表的童謡詩人でもあった。「東京行進曲」「東京音頭」「蘇州夜曲」などの作詞でも知られ、少女小説や評論でも活躍した。1970年没。

「2023年 『あらしの白ばと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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