春の戴冠 4 (中公文庫 つ 3-23)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050631

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  • フィオレンツァの、壮大な叙事詩を読み終えた。

    サンドロ(ボッティチェルリ)で始まり。
    ロレンツォ(メディチ家)に継がれ。
    ジロラモ(サヴォナローラ)で終わる。

    芸術家(サンドロ)が生まれ。
    パテント(ロレンツォ)が育み。
    宗教家(ジロラモ)で影を落とす。

    そんな4部作であった気がします。

    今の世の中、ここまでの長編を読むに耐えれる読者が少なくなっている事もあるとは思うし、同じ言い回しを感じることも遠ざける理由かとは思いますが、やはりここまで長時間読むことに付き合うと、心に残る残像も、全然違ったものになるなーと思いした。

    ただ、求められるからかと思いますが、長編やこんな叙事詩を書ける(挑戦)する文筆家も、なかなか見なくなって寂しい気分も同時に味わいました。

    サンドロの、
    「目をそらすな」
    というセリフがずっと胸のどこかに引っかかったまま。
    それを感じつつの読書でした。

    p.s.
    小説家の飯嶋和一さんの作品も好きなんですが、ここまでの辻さんのような長編はまだ記憶にないので、もし書いてくれたら読んでみたいな、と感じる作家さんの一人。

  • 序盤から破滅を予感させる物語でしたが、むしろその破滅の予感があったからこそ、美しさを感じ続けることができたように思います。

    引用の、無駄と思える美しさをかみしめたのなら、無駄を排すという考え方は賛成できるが、ただ頭ごなし、非寛容に排斥するというのはよくない、というのには共感しました。

    最終巻、栄華を極めたフィオレンツァが破滅していく様、その時の人々の様子は、どこか今の日本を彷彿とさせます。
    なんとなく心に立ち込め、世の中全体を覆っているひっ迫感、不安感。それを感じているとどうしても極端な、わかりやすいことを言って人々を導いてくれる「英雄」を求めて熱狂してしまう。どこかに敵を求めて、潔癖な感覚で、それを排斥することにやっきになってしまう。

    栄華を極めた人も、町もやがては破滅を迎えてしまうのでしょうか。

  • 最後の終わり方がよかった。
    うるうるしてしまった。

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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