十二人の手紙 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.83
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本棚登録 : 2235
感想 : 240
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051034

作品紹介・あらすじ

キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 読友さんの感想を読んで、大好物の書簡体小説とのことで手に取る。昭和初期のノスタルジーに浸るだけではなく、人生ドラマが集約された濃い内容。暗い、怖い、辛い内容なのだが、何故かどんどん引き込まれる。12人の手紙の内容は不倫、偽装、兄弟愛など多様。特に、公的文書(出生届、転出届、妊娠届、、、死亡届)からある人物の人生を視るが、恐怖でしかない。最後の登場人物の”集結”は井上ひさしの小説だからこその不思議な魅力を実感した。書簡体小説は好き嫌いがあるようだが、まずはこの本を読んでから判断をするべきかもしれない。

  • 匠の一品、の一冊。

    書簡だけで綴られ魅せられる世界、面白かった。

    昭和臭はもちろん、予想外、ほんのり哀しみありとそれぞれ単独でも充分楽しめる世界。

    面と向かっての会話とは違う、書簡ならではの表現の仕方も印象的。
    そして、味わい楽しみながら連れていかれたエピローグ。
    なるほど、仕掛けが巧い。

    まるでズラリと仕上がったメニューが並ぶ食卓を見たよう。あ、あの時の食材がここに…あの食材とこの食材がここで見事にこう仕上がったのね…と思い浮かべる感嘆のひととき。

    書簡のみ、構成、仕掛けが巧く調理された匠の一品ってやつかしら。

  • 井上ひさし初読み。昭和感ある濃厚な世界にはまり終わりではたと手紙だったことに気がつく。どんでん返しより人間ドラマに圧倒された。

  • もともと書簡体の小説はあまり好きではなく、これまで手にすることはほとんどなかった。手紙文という形式上、抑揚の少ない文体で綴られていることが多く、ドラマティックな展開になる作品にほとんど出会えなかったからである。

    本作を手にしたのは、書店で「どんでん返し」と書かれた宣伝文句とともに平積みになっていたからであり、さらには著者が井上ひさし氏という期待感である。

    タイトル通り、十二の書簡体での小編からなっている。それにプロローグとエピローグを加えて、正しくは十四篇の作品を集めたものである。書簡体といっているが、中には役所などに提出する事務的な書類への記載で構成された作品もある。これらの集まりで一篇の物語を生み出してしまうのは、井上ひさしという作家の面目躍如であろう。どの作品も、氏らしい趣向がこらされていて、これまで敬遠してきた書簡体の小説が、かくも楽しいものかと再発見できる。

    プロローグとエピローグは、その間で綴られる十二編の物語と関連してくる。ゆえに本作は短編集という体裁になってはいるが、一冊を一気に読むべきである。個々の作品に巧みに織りこまれた作者の企みと作品全体に潜ませた企み、これらをすべて味わい尽くすには、すべてを通して読むしかない。書簡体といっても、著者の滋味豊かな文章でつづられた本作は、単調になるなどということはなく楽しんで読むことができるだろう。

    手紙という形式で、かくも豊かな表現ができるものかと驚いたと同時に、手紙は実は書き手の内面を生々しいまでに晒してしまうものなのだと感じた。

    単なるどんでん返しの繰り返しではない。それぞれの作品に、各々の趣向をこらせて、アイロニーの効いた作品に仕上げている。SNSをはじめとするデジタルデバイスを前提としたツールが氾濫している現代、手紙というアイテムは前時代的かもしれない。だが、今読んでもそうした古めかしさは感じない。それは井上ひさしという偉大な作家の圧巻の筆力に依るものであろう。

  •  ここ最近、『四捨五入殺人事件』などと並べて仕掛け売りをしている書店棚も見受けられ、リバイバルがさて盛り上がるかどうかと再注目されている機運をにわかに感じる、言わずとしれた巨星・井上ひさし。
     そんな、演劇などでも言葉遊びといった趣向に定評がある著者による小説の中でも、とりわけ特徴的な、終始「書簡スタイル」を貫いて書かれているという、若い試みと確かな技巧が光る連作短編集が、この『十二人の手紙』です。

     これを知ったのは10代の時、新書館によるブックガイドシリーズの1冊、池上冬樹編『ミステリベスト201 日本編』で紹介されているのを見て目を引いたからで、気になって割とすぐに入手して読んだように記憶していますが、初版1978年にも関わらず未だその当時の鮮烈な印象は忘れがたいし、再読しては唸らされてばかりという胸に刻まれた一冊に。

     書簡スタイルと先述したものの、いわゆる広範な意味での「文書」のみという内容で、仕事上のビジネスライクな挨拶文から、便箋(時代的にメールではないですから…笑)で十数枚にも及んで逼迫した経緯を仔細に知らせる親類への手紙、婚姻届や死亡診断書、請願書、作中作としての小説や戯曲、関係者が残したメモなど、多種多様な色合いの「文書」の往復と記録を追うことで浮かび上がる十二の物語は、いずれも手紙の語りから滲み出る感情の起伏や、簡素な届出文書ゆえに無慈悲に示される顛末などによって、時にスリリングに、時に物哀しく、また時に意外な着地に膝を打つようなドラマが浮かび上がり、そのバリエーションの豊かさにも驚かされます。
     さらにラストの13編目では、少しずつそれまでのエピソードの糸を撚り上げて決着させるというミステリ的な趣向としても仕掛けが施されており、その語りの深さとテクニックに感嘆した後、もう一度他のエピソードを読み直したくなること請け合いの、書簡文学のマスターピースだと思います。

     ちなみに個人的な推しの1編は『葬送歌』です。

  • 著名な作家であったがその作品は読んだ事が無かった。
    この作品は初めて読むにはハードルが低い作品だと思ったが、これほど面白いとは良い意味で騙された。
    そんなに目新しい構成では無いが味があって面白い。
    他の作品も読んでみたくなった。

  • 少し前から、ブクログのランキングで急上昇していて驚いた本。

    ん?
    あの”井上ひさしさん”???
    没後10年の今なぜ???

    『十二人の手紙』が出版されたのは1978年、文庫本は1980年。

    ミステリーマニアの間では有名な作品だったらしいのですが…
    40年も前に書かれた本がなぜ今、ヒットしているのか?

    その秘密は…

    「旧作文庫の発掘企画」として、中央公論新社が仕掛けた一冊!
    新聞広告も出していたそう。

    書店員さんが書いたこの”帯”

    まさに隠れた名作ミステリ
    どんでん返しの見本市だ!!

    ブクログのランキング急上昇で気になっていたところ、本屋さんでも文庫本ランキング第2位になっていて、
    ど~んと平積み。
    そして、この帯を見たら…
    もう、買うしかありません(笑)

    さっそく読んでみたら

    面白かった!
    40年前の作品だけど
    面白い!

    解説に書かれていた
    「手紙というスタイルをとることで、なんだか抜き差しならない切実感が読む者の胸に迫ってくる」

    まさに!
    手紙だけのミステリー。
    引き込まれました。

    井上ひさしさんの本を読んだのは何十年ぶりだろう…

    読みたい本はたくさんあれど、読める本は限られている。
    ついつい新刊に手が伸びるけれど…
    ちょっと古い本も読んでみようかな…
    そう思わせてくれた一冊です。

  • 手紙が短編小説になり最後に全て一つに繋がる。
    不思議な感覚に陥ってしまう作品
    一つ一つが読みやすく隙間時間に読むことが出来るのに面白いところが気に入ってしまった。全体的に纏まりがあり好きな作品

  • 劇作家のイメージが強くて今まで読んでいなかった作家。お薦めで初読み。
    短編の全てが手紙で構成されていて
    それぞれの書き手が相手に自分の状況や心情などを
    綴る。
    真心がこもっていたり、傲慢だったり、
    虚飾があったら、それぞれに個性がある。
    劇作家なだけに、文章から情景が浮かんでくる。
    時代がかなり前だけれど、古さは感じない。
    特に葬送歌の中の戯曲はまるで演劇を見ているようでした。
    哀愁を感じる手紙のやり取りで〆かと思いきや
    エピローグの意外な展開も面白かった。

  • 古典…なるほど納得の面白さ。
    巧妙なトリックとか、一気読みの勢いとか、大どんでん返しとか、そゆのではない。
    ただ、坦々と綴られる全く別物の短編のひとつ1つの展開と「ん?」とページを戻してしまう微妙な交差とで二度と面白い。
    40年前の作品なので、伝えたいことが伝えたい人に光の速さで届く時代に生きている私たちには、感情の時間差がもどかしくもそこが味わいとなる。
    SNSありきが当たり前の今だからこそ新鮮。
    今年の17冊目
    2020.6.14

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著者プロフィール

井上ひさし

一九三四年生まれ。上智大学仏語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。小説では『手鎖心中』で直木賞、『吉里吉里人』で日本SF大賞および読売文学賞、『腹鼓記』『不忠臣蔵』で吉川英治文学賞、『東京セブンローズ』で菊池寛賞、戯曲では「道元の冒険」で岸田戯曲賞、「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」で紀伊國屋演劇賞および読売文学賞、「シャンハイムーン」で谷崎潤一郎賞、「太鼓たたいて笛ふいて」で毎日芸術賞および鶴屋南北戯曲賞など、受賞多数。二〇一〇年四月死去。

「2021年 『さそりたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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