安徳天皇漂海記 (中公文庫 う 26-3)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051058

感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマで源実朝が気になって、実朝が出るから読んだのだけど、面白すぎて作者天才か?と思っている。

    あくまでもファンタジーではあるものの、表に出てる史実と辻褄が合うようなストーリー、至る所に散りばめられた伏線を見事に回収していく様は天晴れとしか言いようがない。
    1部に関しては和歌の使い方がとても良い。和歌は場面によって様々な解釈ができると思ってるのだが、ストーリーの流れにあった和歌を持ってくるのがうますぎた。和歌があるおかげで感情移入しやすくなってる感じがする。

    2部は1部とのつながり、そして元ネタとなっている『高丘親王航海記』とヒルコを出してくるのが最高に震えた。

    私は中国の歴史にはあまり詳しくなく、まさか南宋で壇ノ浦とほぼ同じことが起こってるなんて知らなかったので、史実なのか検索して鳥肌立つくらいびっくりした。この二つを繋げたのが本当に天才だと思う。

    そして蜜の沼は『高丘親王航海記』を読んでたらそういうことねーーー!となるし、1部の流れはほぼ太宰治の『右大臣実朝』なので、どちらも読んでいるととても面白い。(高丘親王の方は本書のあとに読みましたが)

    かなりファンタジー要素が強いので万人にお勧めできるわけではないけど、好きな人はかなり好きだと思う。

  • 久しぶりの再読だけど、とても良かったし前回よりも深く心に沁みた気がする。無情で残酷な時の流れに翻弄される高貴な魂が、安らぎの地にたどり着くまでの物語。幼くして入水した安徳天皇、何の実権もない鎌倉幕府3代目将軍実朝。時代に翻弄され無惨に死んでいった彼らの想いはどうなるのか。“怨みも悲しみも自分の一部なのだから大切にしなければならない”という一文が特に印象深い。海も時も超えて一体となり浄化されていくラストに心打たれた。

  • 源実朝と南宋滅亡を安徳天皇が結ぶ筋は歴史小説の面白さ
    だが澁澤竜彦を読んでいないと最後が眠くなる
    現代ではありふれたガラス工芸の現代で突然作者が出てくるのは良いのだろうか

  • 歴史上の出来事について考える時、「正史」と「史実」と「真実」と「事実」という観点がある。
    あくまで自己解釈だが、「正史」と「史実」は近しいもの。
    当時の権力者の下編まれたのが「正史」で、多くの史料に刻まれたのが「史実」。
    「事実」は、実際その時何が起きていたのか。誰の目から見ても「こういうことが起きた」と言えるのが、それ。「正史」や「史実」から見えてくることもあるし、そうでないこともある。
    そして、「真実」は、人々が「こういうことが起きたはずだ」と信じるもの。だから、信じる人の数だけ、「真実」は存在する。
    この物語は、言うなれば安徳天皇の入水と、源実朝の死の「真実」をつづっているものなのだと思う。
    それは「正史」や「史実」とは一致しないし、もちろん、「事実」とは違う部分もある。
    けれど、そこには確かに、一片の「まこと」があるような気がするのです。
    少なくとも私は、特に実朝について、この物語を「真実」としたい。

  • (200904)
    文庫になったので再読。

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