ミーナの行進 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.96
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本棚登録 : 1812
レビュー : 204
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051584

作品紹介・あらすじ

美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない-ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。あたたかなイラストとともに小川洋子が贈る、新たなる傑作長編小説。第四二回谷崎潤一郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもの頃に経験した夢のようなひととき。
    その時に感じたときめきや切なさ、風景から零れ落ちる匂い、流した涙や汗の温もり。
    2人で過ごした秘密の時間、家族の笑い声が響く食卓。マッチの炎、図書館の貸し出しカード……。

    たくさんの記憶のかけらたちが、時間が経つほどに鮮やかに蘇り胸の奥に根ざしていく……。そんな感覚、かつて子どもだった大人たちにはわかるんじゃないでしょうか。
    まるでミーナと朋子が芦屋の洋館で過ごした季節は、大人になってしまうととけてしまう魔法にかかっているような時間でした。

    時の流れは、例えば祈りのようで。崇高で尊いものに触れることを許されたような気持ちになります。物語をぎゅっと抱きしめたくなりました。

  • 物語の始まり、朋子を優しく迎えてくれた一家はまるで夢の中の住人のように完璧な存在に思えた。
    朋子がお姫様であるかのように接してくれる伯父さん、入学式についてきてくれる伯母さん、優しく部屋に招き入れてくれるおばあさん、愛情たっぷりのご馳走を作ってくれる米田さん、静かに見守ってくれる小林さん、愛らしいポチ子、そして聡明な美少女ミーナも。
    なんて素敵な家族だろうと、朋子と一緒になって感激してしまう。

    物語を読み進めていくと、彼らが最初に考えていたような完璧な人達ではないことが分かってくる。
    そして、夢の住人に見えていた時よりもずっと好きになってしまっていた。

    私はミーナのマッチ箱の物語がとても好きだ。
    彼女の点す美しい明かりを見てみたい。
    朋子とミーナがローザおばあさんと米田さんにバレーボールを披露しているところが見たい。
    出来ることなら参加したい。
    一緒にジャコビニ流星雨を待ちたい。
    2人の少女の宝石のような秘密の時間を一緒に過ごすことが出来たらどんなに素敵だろう。

    …なんてことを考えてしまうけれど、この物語は十分に夢のような時間を与えてくれたとも思う。
    とっても幸せな優しい時間を。

    • takanatsuさん
      はい!きっと大丈夫です。

      「何か面白い本ないか」はなかなかハードルの高い要求ですよね。
      私も自信を持って薦めた本が空振りに終わったこ...
      はい!きっと大丈夫です。

      「何か面白い本ないか」はなかなかハードルの高い要求ですよね。
      私も自信を持って薦めた本が空振りに終わったことが何度もあります。
      最近は、たくさんの人に薦めることが、ダメージから身を守る最も有効な方法のような気がしています。
      1人でも好きと言ってくれる人がいたら、何十人にダメと言われても(実際にそんなに大勢に薦めたことはありませんが)へっちゃらなんです、意外と。(私だけかもですが‥)
      2012/07/14
    • 花鳥風月さん
      あぁなるほど… たくさんの人にすすめる… それはイイですね!
      なんだかいい言葉をもらいました。ありがとうございます!

      職場なんかでもやって...
      あぁなるほど… たくさんの人にすすめる… それはイイですね!
      なんだかいい言葉をもらいました。ありがとうございます!

      職場なんかでもやってみるかなあ。
      2012/07/15
    • takanatsuさん
      「それはイイですね! 」
      そうですか?良かったです。
      是非お試しください♪
      「それはイイですね! 」
      そうですか?良かったです。
      是非お試しください♪
      2012/07/16
  • 主人公の朋子、ミーナ、伯父さん、叔母さん、龍一、ローザおばあさん…

    『ミーナの行進』に出てくる人は皆それぞれ心のどこかに埋まらない隙間のようなものを持っていて、それがところどころに顔を出す。ミーナのか弱さ、叔母さんの病的なまでの誤植に対する執着、龍一の父に対する屈折した思い… その隙間が大きく口を開いていて、そこへ顔を埋めることで充足を得るような物語も世の中にはあると思うけれど、この物語に描かれる隙間は、後で時に笑いを交えながら語ることのできるようなものだ。「この傷、子供の時にちょっと転んだ時のやつ」などと見せびらかすような傷。悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。

    馴染みがある土地が多いのもよかった。伯父さんの工場のある阪神尼崎は親戚が住んでいてよく行ったし、伯父さんの通うマンションのある江坂は自分のホームからごく近い。それゆえに彼女らのことをとても身近に感じた、というのもありそうだ。

    読む前からそんな気がしていたが、たくさんの人に読まれるといいなと思える小説だった。

    • takanatsuさん
      花鳥風月さん、こんにちは。
      気に入っていただけたようでほっとしました。
      「悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。」
      と...
      花鳥風月さん、こんにちは。
      気に入っていただけたようでほっとしました。
      「悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。」
      という言葉にとても共感します。
      どうしてこんなに愛おしいのか不思議です。
      そして、物語に出てくる土地に馴染みがあるのですね…、とてもうらやましいです。
      私もこの物語の登場人物をもっと身近に感じたいなぁと思ってしまいました。
      2012/08/28
    • 花鳥風月さん
      takanatsuさん コメントありがとうございます

      「これはいいだろうな」と読む前から思っていましたが、最後も二人の前向きな手紙で締めく...
      takanatsuさん コメントありがとうございます

      「これはいいだろうな」と読む前から思っていましたが、最後も二人の前向きな手紙で締めくくられていて、事前の予想よりも上回って幸福感の漂う小説でした。とてもよかったです。

      舞台になっている洋館のある芦屋は高級住宅地として知られていて、雰囲気のある場所です(ちょっと調べたらここらあたりを舞台にした小説がけっこうあるんですね)

      私は庶民なので、工場の多い尼崎の南側や甲子園に直結している阪神電車などに馴染みがあって、そこらあたりが小説の中に出てくるだけで「おおっ、あのへんか!」となります。

      うちの家族にもお薦めしてみます。
      2012/08/29
  • ミーナの喋る関西弁がリアルに聴こえてくるような気がした。どことなくノスタルジックで、どこか不思議な世界、でもリアリティがある。

    作中に出てくる「ミュンヘンへの道」、作者と同年代の私もミーナや朋子と同様、必死で見たアニメでした。あれで、それまで馴染みのなかったバレーボールのルールとクィック攻撃に詳しくなりました。

    あの番組ってそんなにメジャーだったのでしょうか?でもあのアニメのお陰で、私も作中の家族と同様にミュンヘンオリンピックのバレーボール中継を必死で観て感動したものでした。

    あと、フレッシーってプラッシーから来てますよね。「ジャコビニ流星群」の話も、なんか記憶のかなた夢の中ではありますが、あったなぁとおぼえています。因みに私の場合は、漫画「アストロ球団」のジャコビニ流星打法と繋がっているのですが、、、。

    いろいろありますが、作者の小川洋子さんが作り出された世界はリアルそうでファンタジックな、少女たちの大人への第一歩なのかもしれません。

  • ノスタルジー感溢れる優しい小説。登場人物みな暗い面を抱えているので、起承転結のいつ「転」が来るのだろうかと構えながら読んでいましたが、最後まで穏やかな内容で心地良い余韻を残したまま読了しました。

    「写真を見るたび私はつぶやく。全員揃ってる。大丈夫。誰も欠けてない。」

    非常に心に残った素敵な一文。
    自分の思い出の写真に当てはめて、心の中で呟くとぐっと来るものがあります…。

  • とても優しい読後感です。
    朋子が芦屋の親戚の家で過ごした、不思議でキラキラした1年ちょっと。
    伯父さんの浮気はあれど、ミーナの家の人は良い人ばかりで、ポチ子も愛らしいですし、優しい気持ちになります。
    マッチ箱の物語ももっと読みたくなります。挿絵もかわいいです。
    病弱だったミーナが、ラストに向かうにつれ、健康になり外国でバリバリ働いている、という成長も好きです。
    舞台は日本なのに、外国の空気を感じる作品でした。

  • 日曜の新聞の別刷りに掲載されていたが、その時は読まなかった。週1回だからボリュームもそこそこあって、なんとカラー刷りでイラストが印象的だった。もしかしたら、新聞を読み始めた小中学生も読者に想定していたかも知れない。
    どこか遠い国のお姫様だったのに、と幼い夢想していたとあるけれど、チョッとありそうな話にしたのが、この小説かな。
    親の都合で叔母さんの家に預けられた少女。お婆さんはドイツ人で、その血をひく叔父さんはダンディで飲料メーカーの経営者。住まいは豪邸で、家事を切り盛りするお手伝いさんも家族のよう。そして、病弱で物語の好きな美少女の従妹、ミーナ。
    叔父さん、留学中の従兄、図書館のお兄さん、と男性は存在感が弱い感じがする。少女の夢は男性はハンサムならそれ以上必要ないのかね。
    しかし、何故コビトカバなんだろう。普通なら白馬、少し譲ってポニーが出てくるところでしょう。確かにカバのお尻に寂しさを感じたけれどね。
    マッチの絵からミーナが語る短い物語。こういう小道具がとても効いている。

    内田樹さんの本に、ずっと一緒にいられないという思いを共有するのが家族だとあった。どの本にあったか忘れてしまったし、正確な文言を書けないけれど、この本を読みながら、内田先生の言葉をついつい思い出してしまった。
    だが、巻末にはそれほどの寂しさを感じなかった。素敵な思い出を共にしたという思いがあれば幸せということかな。

    世代的に、ラジオ英会話のマーシャ・クラッカワさんとかミュンヘンオリンピックの男子バレーとか、普通の読者以上にそれよく知っているよと思う処が多かった。

  • おもしろかった。わくわくすると同に心がほっとするような感じ。
    ホラーめいた奇妙な話とか悲しげな話が苦手なので、小川洋子って避けていたふしがある(スミマセン)のだけれど、これはそういう要素がなく(ファンタジーっぽさはあるけど、これくらいはわたしも受け入れ可能)、とてもよかった。
    やっぱり文章が美しいなーと。ときどき、読んでいると、ぱあああっーという感じで目の前に風景が広がるような感じがした。
    小川洋子さんのエッセイとかも読んでみようかな。

  • 完璧なようでそうでないからこそ素晴らしい、そんな家族と過ごした素敵な一年の流れが柔らかく描かれていて、読み終わるのが勿体なくなってしまった。

    ポチ子が死んでしまった後の朋子の少女らしい気持ちに切なくなった。


    「朋子。月が二つ。だってお月様は二つないもの。ないものなのにこうして二つある。同じ大きさで横に並んでる。」
    「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや」
    好きな台詞です。

  • こういう本を読みたかった!
    大人になってふと思い出した時、自分を支えてくれる幸福な思い出。この話は主人公にとって、そういう記憶に違いない。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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