猫の縁談 (中公文庫 て 1-10)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051720

感想・レビュー・書評

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  • 短編集であって、いずれも丁寧に描かれたミステリーともいえる作品が連なる。ただ、しっかりと自分を作中に取り込まないと、置いてきぼりに合ってしまう。巧妙が過ぎて、一読では秘められた魅力が見えにくい。

  • 猫と本が好きな人には堪らない!
    一気に読んでしまいました。
    知識も豊富、テンポも良く、品の有る筆致と安定した質。
    読んでいてとても楽しかった!
    あとがきを含めくまなく楽しめる一冊でした。

  • 作者の出久根達郎氏は「古本屋さん」である
    杉並区で「芳雅堂」っという「古書店」を営んでいる
    そのかたわら、作家活動をし
    1993年に『佃島ふたり書房』で第108回直木賞を受賞している

    出久根氏の実話なのだが…
    フラリと「芳雅堂」へ立ち寄ったある男が、ココで自分が探していた古本と出会う
    速攻で買いたかったのだが、持ち合わせがなく「この本を買いますから」っと
    約束して帰って行くのだが、男は本を買えずに帰郷してしまう
    数年後、男が「芳雅堂」へ立ち寄ると…出久根氏はサラリとアノ古本を男に差出し
    数年前と同じ値段で男へ渡したのである
    そんな「古本屋さん」が書いた小説なので…どのお話しも、どこか温かい

    「猫の縁談」

    古本屋を営む私の店に、ある日、ヨボヨボの爺さんが現れた
    3冊の大層珍しい奇本を持ち込み語るのである。
    「この本をウチに居る3匹の猫の持参金としたい」っと…。

    つまり、奇本は売るが…猫も一緒に引き取ってくれなければ売らないという。

    3匹の猫は雑種。しかも成猫。そして…デブ。

    古本屋の主は困った。
    自分が3冊買ってもいいが、猫は大家との約束で飼えない。
    こういう面倒な話に乗って、良い結果が出たためしがない。
    断ろうか?っとも思ったが…猫の将来を心配している爺さんが可哀想になった

    そこで古本を収集している常連さん2人に、声をかけた。
    皆、奇本に目が眩み、渋々猫を引き取った。

    2匹の猫にそれぞれ奇本をつけ、奇本の代金も懐に入った爺さんはホクホク…
    っと思いきや…爺さんの元へ残った一匹の猫が家出をした
    急に寂しくなった爺さんが「猫を返せ」と言い出す

    奇本が目的で、渋々猫を引き取ったはずの常連さん2人。
    爺さんの話しに喜ぶかと思いきや…「そりゃ、困る」と言い出した
    なぜか…お二人さん。本より猫にメロメロとなってしまっていたのだ(笑)

    ちょっと変わった爺さんも、古書店の店主も、常連さんの二人も
    いい歳をした男性4人が「古書より猫がイイ」と言い出すのだ
    さすが、目が利く4人である
    さて、どうなることやらってなお話しである(アハハハハハ)

    こんな風に、実話が混じっている?っと思わせるようなお話しが数個載っている
    文体も時代背景も少し古いので、慣れていないとスラスラいかないかもしれんが
    気がつくと、ドップリ古書店に入り込んでいるようで、少し面白い。

    さて、猫話しついでに…

    子供の頃、私は「タマ」という猫と暮らしておった
    白いメスの雑種猫で、その様子がサザエさんに出演の猫のタマに似ていたので
    「なんて名前にする?」っと親に聞かれた瞬間、「タマ」っと名づけた
    アノ頃の私は純粋だったな~~
    今なら「大福」とか「マシュマロ」とか白い食い物の名前を付けるだろうに。。。

    タマはメス猫なもんで、子供な私を自分の子だと思っておった。
    半殺しにしたネズミを持ってきては「ほれ、逃げる前に捕まえろ」と言うし
    風呂に入っておれば「ソコをもっと洗え」と風呂場に顔を出して叫ぶ
    ケガをすれば傷口をなめて心配そうに手当てする
    まるで、エライ手のかかる子を持つ母のようであった

    最初、猫をもらってきたのは母であった
    弟は動くものなら何でも好きだという猿世代だったし
    私も母が二人になったようでウザかったが、猫は好きだった
    しかし…父と祖母は猫が大の苦手で、どちらかと言えば犬派であった(笑)

    先にも述べたように、タマは賢い猫であった
    猿な弟には一切目もくれず、猫としてモノになりそうな姉を教育し
    飯をくれる母には媚を売っていた

    そして自分を明らかに嫌っている父に対しては
    廊下ですれ違う時など、先に道を譲ったりしながら可愛らしく笑顔をふりまき
    時間をかけながら少しずつ、父との距離を縮めていっておった

    絶妙なのは、父の側に近寄っても怒られなくなった頃でも
    父の足のつま先にチョンと前足を乗せ
    「これだけでも私は幸せなの」的な日陰の女を演じていた姿である

    最後には「タマや~」っと猫なで声を出していたのは、父の方であった(笑)

    むしろ男な父は簡単に手玉に取れたのかもしれん
    苦労していたのは祖母との関係であった

    笑顔も媚も日陰の女も効かない祖母には、だいぶ手を焼いていた雰囲気がある
    しかし、飯をくれる優しい母と、自分を毛嫌いしていた祖母とが
    同時にタマを呼んだ時には、必ず、祖母の方を優先し飛んで行っていた姿には
    「嫁姑問題」をシッカリ熟知していた様子が伺える(笑)

    そんなタマが、沸かしていた風呂の蓋で寝てしまい、落ちて死んだ時に
    全てをキチンと処理したのは、祖母であった。
    微妙な距離をお互いに保ってはいたが…
    祖母のハートもタマはガッチリ掴んでいたのだろうと思う

    猫は、自由奔放そうに見えて、その実、シッカリと現実をみすえ
    惜しみない努力を、ソレと解らないようにさりげなく行う

    ほんまかいな~っと疑うことなかれ。

    猫を一匹飼ってみれば、スグ解る。彼らは癒しの天才である(笑)

  • 一人暮らしの老人が年寄り猫達の行く末を案じ、稀覯本と共に引取先をみつけようとする話。これだけ読むとほのぼの美談のような感じだが、話はそこから奇妙な具合になっていくのが面白い。古書店を舞台にした短編集を「いろんな厄介な客がいる」と頷きながら読ませてもらった。ちょっと古くさい雰囲気がまた古本屋さんにマッチしているんだなあ…

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著者プロフィール

出久根達郎(でくね・たつろう):1944年茨城県生まれ。中学卒業後、上京、古書店に勤務する。73年から古書店・芳雅堂(現在は閉店)を営む傍ら、文筆活動に入る。92年『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞、93年『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞する。2015年には『短篇集半分コ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『おんな飛脚人』『安政大変』『作家の値段』など多数がある。

「2023年 『出久根達郎の古本屋小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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