それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

  • 中央公論新社
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  • / ISBN・EAN: 9784122051980

感想・レビュー・書評

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  • ある時飲んだスープが美味しくて、また飲みたいなーと考えてしまう話だと思っていた。
    が、そんな受け身の話ではなかった。

    安藤さんの三つ目の仕事だからサンドイッチ屋で、だから単純に店名がトロワ。
    なかなか美味しいと、人気のある店のようだ。
    主人公はそのサンドイッチ屋に勤めることになり、新商品としてスープ作りもまかされる。

    仕事というのは誰かのためにすることなのだ。
    その「誰か」をできるだけ笑顔の方に近づけることが仕事の正体ではないか。

    サンドイッチ屋は、そういう「仕事」だと感じながら働いていることが伝わってきてうらやましい。

    都市に暮らす人々は様々な日常を過ごしていて、不安や苦悩やストレスも少しづつ積み重なってくる。
    そうした都市生活に疲れた人たちに向けて、
    「何かに行き詰ったり弱り果てたときは、とにかく温かいもので腹を充たすべし。」
    と伝え、最後にスープを飲むところで終わる話を書きたかった。
    という想いが本作品を書くきっかけだったようだ。

    物語の舞台となる「月舟町」は、吉田篤弘さんが生まれ育った世田谷の赤堤をモデルにしている。
    そして吉田篤弘さんが通った赤堤小学校には、(当時は面識がなかったが)二学年上に岸本佐知子さんもいたことを知り「姉」と慕うようになる。
    互いの家の中ほどの十字路の角に教会があり、この教会を食堂に差し替えたのが前作の「つむじ風食堂」だ。
    「それからはスープ…」では、その教会を復活させ、さらに「姉」を登場させている。
    (そんな裏話など知らずに読んでいたので、「姉」の登場場面を読み直しました)

    「月舟町」三部作の最後は、月舟シネマの「犬」が主役らしい。
    楽しみに残しておこうかと思っていたが、「月舟町」シリーズ番外編が2冊あることを知ったので早めに読もう。

  • あ〜この空気感、たまらなく好きだった♡

    "月舟町シリーズ三部作"の2作目だけど、登場人物も違うし、話も続編ではなく姉妹作なので順番通りでなくても大丈夫!

    特に大きな事が起こるわけではない、ただの日常の話。
    それなのに、穏やかでどこか懐かしい雰囲気が心地よすぎて、どっぷり引き込まれてしまった。
    登場人物がみんな素朴でいい味出してて、ほんとそれぞれに愛着を感じてしまう。
    オーリィ君、マダム、安藤さん、リツ君、そして緑の帽子のあおいさん♡
    人との繋がりが希薄な今の世の中、こういう関係がとてもあったかくて素敵だなぁ〜と思った。
    そして読んでると丁寧に作ったスープやサンドイッチが無性に食べたくなる。
    また大好きな1冊になりました✩︎⡱


    • mihiroさん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは(^-^)/
      ほんとこの空気感めっちゃ好きすぎました〜〜\♡︎/
      吉田さん、怪物〜でやめてしまわなくて良かった...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは(^-^)/
      ほんとこの空気感めっちゃ好きすぎました〜〜\♡︎/
      吉田さん、怪物〜でやめてしまわなくて良かった〜笑
      傍らに珈琲を。さんにすすめてもらわなかったら、もう読んでなかったかも(^_^;) ありがとうございます笑
      今、三作目読んでます♪
      なんか沼りそうかも←単純ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)笑
      2023/12/13
    • 1Q84O1さん
      そんな作品に出会えるのも読書の良いとこですよねー(*´ω`*)
      そんな作品に出会えるのも読書の良いとこですよねー(*´ω`*)
      2023/12/13
    • mihiroさん
      一休さ〜ん、ほんとに〜(*^^*)
      そんなこんなで手放せない本が増えてヤバいけど笑笑
      一休さ〜ん、ほんとに〜(*^^*)
      そんなこんなで手放せない本が増えてヤバいけど笑笑
      2023/12/14
  • 吉田篤弘さんの言葉で紡がれる物語が好きだなぁ。
    読んでいる時間の幸福感が半端ない。
    本作は『つむじ風食堂の夜』の姉妹作にあたる「月舟町・三部作」の二番目の物語。
    まちで出会った人たちと「名前のないスープ」をめぐり、ゆっくりと流れていく温かい時間。
    それぞれが抱いているであろう過去や想いが、語られない部分から想像される。これは大切な人を失った人たちの物語でもあった。
    年月が経っても忘れることのない日々、忘れられない瞬間、辛すぎて消してしまった記憶...みな人知れず傷を負いながら生きていた。
    それでも悲観することなく、ただ淡々と毎日を、移りゆくものと変わらぬものの間で暮らしている。それは、とても穏やかな時間。
    私が望んでいるのも、そうした「時間」なのかもしれないなぁ。
    「名前のないスープ」の正体に、愛情を感じて、じんわりと心が溶かされるようだった。

  • 路面電車の走る、月舟町の隣町。「僕」と知り合う人々。その関わりがじんわり温かい。皆それぞれ哀しみや悩みを抱えているけれども、それを優しく包み込むサンドイッチとスープ。

  • 僕は小説家でもなんでもないので、俯瞰して人物や場面設定やら文章表現やらを考える必要はない。物語に没頭するだけでいい。
    結論を見つける必要もない。ただただ、経過を、途中を楽しめばいい。

    なんだか、最近は、「意味」みたいな事ばかり考えてしまいがち。だったのかも。人生の意味、生きてる意味、仕事の意味、練習する意味…意味、意味、意味。何にでも意味を欲しがる。理由を欲しがる。充実した時間だとか。無駄を省くとか。損、得、損、得…。

    そんなのは、バカみたいな話だ。

    ゴール。ばかりを目指すのをやめよう。
    というか、ゴールしか見えてないことが、とてももったいない。

    読了。多く読む。とか
    そんなこともバカみたいだ。

    純粋に、物語を楽しみ、読む時間を愉しむ。

    なんでだろう。そんなことを感じながら読めた。
    ゆっくり、読む時間を楽しめた。

    スープって、そういうものだからなのかも。
    スープって、丁寧なことの象徴のような。
    スープって、あったかいものの象徴のような。
    スープって、ゆっくりした時間の象徴のような。

    ゆっくり、コトコト、時間をかけて出来上がる。
    時間がゆっくり流れる。

    そんな時間を大切にしたいと思いました。

    吉田篤弘さんの世界は、特別、時間がゆっくりしている。と思う。
    今作は、スープが主人公だからか。
    おいしいスープを作って、食べたくなりました。

    月舟シリーズの2作目。

    • ぐっちょんさん
      ひろさん
      コメントありがとうございます
      コメント返しをどうしようかと思ってたら、うっかりしてました^^;
      吉田篤弘さんの空気感いいですよねぇ...
      ひろさん
      コメントありがとうございます
      コメント返しをどうしようかと思ってたら、うっかりしてました^^;
      吉田篤弘さんの空気感いいですよねぇ
      これからもよろしくお願いいたします
      2024/08/25
    • ぐっちょんさん
      ちょうど、今、月舟町3作目の「レインコートのを着た犬」を読み始めたところでした。
      犬目線で展開してて、なかなかいいです。
      ちょうど、今、月舟町3作目の「レインコートのを着た犬」を読み始めたところでした。
      犬目線で展開してて、なかなかいいです。
      2024/08/25
    • ひろさん
      ぐっちょんさん♪
      お返事ありがとうございます
      こちらこそ、これからもよろしくお願いします!

      3作目は犬目線なのですねっ♪
      ぜひ、楽しんで読...
      ぐっちょんさん♪
      お返事ありがとうございます
      こちらこそ、これからもよろしくお願いします!

      3作目は犬目線なのですねっ♪
      ぜひ、楽しんで読まれてくださいね(*´︶`*)b
      レビューも楽しみにしています✩.*˚
      2024/08/25
  • 終わり方が…。
    でも終始穏やかで心和む一冊。
    休憩にカフェでゆっくり読むのにオススメ。

    すでにつむじ風食堂は積読ずみ。
    読むのが楽しみ。

  • 何かに夢中になれること、打ち込めることってとても素敵なことだ。

    続編かと思いきや、姉妹編だという今作は『つむじ風食堂の夜』の舞台"月舟町"のお隣の町"桜川"が舞台。
    相変わらず和やかな雰囲気の中、物語は進む。
    オーリィ君、マダム、安藤さん、リツ君、あおいさん…吉田さんの作品に出てくる人達はいつもほのぼのとしていて穏やか。
    サンドイッチの店〈トロワ〉で働くオーリィ君は、飲む人の笑顔を思い浮かべ心を込めてスープを作る。
    簡単なようでそのさじ加減はとても難しい。

    何かに行き詰まったり弱り果てたときは、とにかく温かいもので腹を充たすべし。
    温かなスープを一さじ飲む。
    いつの間にか冷たくなっていた胃袋も心もほわーっと温まる。
    体や心の強ばりも解れて、それまで抱えていたストレスや疲れも何処かに吹き飛んでいったみたい。
    頭を悩ませている問題は何一つ解決してはいないけれど、ひとまずそれは横に置いておいて、まずはスープを飲んで温まろうよ。
    そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。
    吉田さんからの温かなエールのお陰で、笑顔を取り戻せそうだ。

    残るは「月舟町・三部作」の完結編。
    今からとても楽しみ。

  • ブクログ仲間さんたちにものすごく愛されていて、気になってしょうがないのに
    図書館には例のごとく置いてなくて、古書店でも見かけたためしがなく
    それほど「この本は私の宝物!」率が高いのだなぁ、と予想はしていましたが。。。

    ほんとうに、巡り会えてよかった♪としみじみ思える本でした。

    隣町の「月舟シネマ」に通い詰めるオーリィ君ではないけれど、
    ゴトンゴトンとのんびり走る二両編成のかわいい路面電車も
    アパートの窓から見える教会の白い十字架も
    ガラスの向こうで流れるような手順で作られる、トロワのサンドイッチも
    野球帽をかぶった少年となって口笛をふきながら銀幕を横切るあおいさんも
    ぐつぐつ音をたてる鍋から、温かい湯気をたてて器に注がれるスープも

    小さな映画館のスクリーンに映し出されるセピアがかった映像のように
    温かく、柔らかく、目の前に浮かび上がるのです。

    ハラハラドキドキするような事件は何ひとつ起こらないけれど
    憧れ続けた銀幕の中の少女が、時をこえておばあさんになって現れても
    変わることのない崇拝を胸に、シャツもジーンズもスニーカーも新調して
    彼女を訪問するオーリィ君のように

    スープの冷めない距離にいる(あるいは、いてほしい)誰かをいつも心に描きながら、
    ささやかな日々の暮らしを大切に生きたいと思わせてくれる、素敵な物語です。

    • まろんさん
      takanatsuさんも宝物にしてらしたんですね♪
      ほんとに雰囲気のある、素敵な本でした。

      ちょっと巻き舌で、「オーリィ君」と
      お洒落で素...
      takanatsuさんも宝物にしてらしたんですね♪
      ほんとに雰囲気のある、素敵な本でした。

      ちょっと巻き舌で、「オーリィ君」と
      お洒落で素敵なおばあさん女優さんたちが呼びかけるのを
      ぜひ本当にスクリーンで観てみたいと思ってしまったりして。
      吉田篤弘さんは初めて読んだので、
      これから追いかけていきたい作家さんになりました(*^_^*)
      2012/08/23
    • 永遠ニ馨ルさん
      まろんさん、こんにちは。
      この本、私も宝物にしていますよー♪

      まろんさんのレビューを拝見し、
      「そうそう、そうなんだよね!」と頷くことばか...
      まろんさん、こんにちは。
      この本、私も宝物にしていますよー♪

      まろんさんのレビューを拝見し、
      「そうそう、そうなんだよね!」と頷くことばかり。
      再読したくなっちゃいました♪
      吉田さんの紡ぐ言葉って、特別な表現はひとつもないのに胸に沁みこんできちゃうんですよね。

      ところで吉田篤弘さん、初めて読まれたのですね!
      この作品を気に入られたのなら、
      「つむじ風食堂の夜」もぜひ読んでいただきたいです(*´▽`*)b
      2012/08/23
    • まろんさん
      おお!永遠ニ馨ルさんも、この本を宝物に!
      ナカマナカマ゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。

      そうそう、飾り気のない言葉で書かれているのに
      風...
      おお!永遠ニ馨ルさんも、この本を宝物に!
      ナカマナカマ゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。

      そうそう、飾り気のない言葉で書かれているのに
      風景にも、会話にも温かさが溢れていて、
      とても穏やかで懐かしい気持ちになりました♪

      この本は図書館になかったのに、
      なぜか「つむじ風食堂の夜」は置いてあったので(ばんざ~い♪)、
      早速予約入れてみます!
      教えていただいて、ありがとうございます(*^_^*)
      2012/08/24
  • 「ただいま」「おかえり」
    今日も「ちょっとした不運」と「ちょっとした幸運」がこの町に住む人々の間で繰り返されながら日が暮れていくようです。何気ない毎日が愛おしくて仕方がなくなる一冊です。

    何かに夢中になったり、何かを失くしたり、何かを祈っている……そんな毎日のなかで、ふと振り返ればそこにはたくさんの「そういえば」が転がっていました。もう思い出すこともできない「そういえば」が増えていくことに何だか寂しさを感じてしまうのは、あの頃の自分には戻れないことに気づかされるからかもしれません。でも、その積み重なったさきに「今」という時が刻まれています。そんなあたりまえのことが、実はいちばん忘れちゃいけない大切なことなのでしょう。

    この時間を忘れずにいること。
    そんな時間がひとにはあるのです。

  • 最初はお店のサンドイッチが出てくる
    オーダーしてから作ってもらう素朴で美味しそうなやつ
    出来上がると『3』って書いてある紙袋にいれてもらう

    そのつぎはポップコーン
    映画館で食べるポップコーンは格別
    袋詰めのじゃなくてマシーンで作るやつ

    それからスープ
    最初のスープの出番はほんの少し
    だけど、なんというか
    少しの出番なのに、どんな香りなのかなんのスープなのかとっても気になる
    そんなスープ

    それから味噌汁やラーメンやパンがでてきて
    今度はどっぷりスープのお話
    とてつもなく美味しそうだけど、名前のないそのスープ
    みんなが飲んだ後に感想を言いたくなるスープ
    ラストにとうとうスープのレシピが!
    レシピがまた素敵なの

    なんて心地よい文章を書く著者だろう
    オシャレなマダムたちと、ちょっとおませな眼鏡っこと、サンドイッチ屋の店主と店員
    それから美味しいものと映画と家族のおはなし
    なんだかパリの街角を連想しちゃう

    優しい時間を過ごせる本
    3:45のくだりだけはきゅっと胸が痛くなった
    違う著書も読もうっと

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著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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