それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
4.08
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本棚登録 : 6780
感想 : 723
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051980

作品紹介・あらすじ

路面電車が走る町に越して来た青年が出会う人々。商店街のはずれのサンドイッチ店「トロワ」の店主と息子。アパートの屋根裏に住むマダム。隣町の映画館「月舟シネマ」のポップコーン売り。銀幕の女優に恋をした青年は時をこえてひとりの女性とめぐり会う-。いくつもの人生がとけあった「名前のないスープ」をめぐる、ささやかであたたかい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 路面電車の走る、月舟町の隣町。「僕」と知り合う人々。その関わりがじんわり温かい。皆それぞれ哀しみや悩みを抱えているけれども、それを優しく包み込むサンドイッチとスープ。

  • 何かに夢中になれること、打ち込めることってとても素敵なことだ。

    続編かと思いきや、姉妹編だという今作は『つむじ風食堂の夜』の舞台"月舟町"のお隣の町"桜川"が舞台。
    相変わらず和やかな雰囲気の中、物語は進む。
    オーリィ君、マダム、安藤さん、リツ君、あおいさん…吉田さんの作品に出てくる人達はいつもほのぼのとしていて穏やか。
    サンドイッチの店〈トロワ〉で働くオーリィ君は、飲む人の笑顔を思い浮かべ心を込めてスープを作る。
    簡単なようでそのさじ加減はとても難しい。

    何かに行き詰まったり弱り果てたときは、とにかく温かいもので腹を充たすべし。
    温かなスープを一さじ飲む。
    いつの間にか冷たくなっていた胃袋も心もほわーっと温まる。
    体や心の強ばりも解れて、それまで抱えていたストレスや疲れも何処かに吹き飛んでいったみたい。
    頭を悩ませている問題は何一つ解決してはいないけれど、ひとまずそれは横に置いておいて、まずはスープを飲んで温まろうよ。
    そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。
    吉田さんからの温かなエールのお陰で、笑顔を取り戻せそうだ。

    残るは「月舟町・三部作」の完結編。
    今からとても楽しみ。

  • ブクログ仲間さんたちにものすごく愛されていて、気になってしょうがないのに
    図書館には例のごとく置いてなくて、古書店でも見かけたためしがなく
    それほど「この本は私の宝物!」率が高いのだなぁ、と予想はしていましたが。。。

    ほんとうに、巡り会えてよかった♪としみじみ思える本でした。

    隣町の「月舟シネマ」に通い詰めるオーリィ君ではないけれど、
    ゴトンゴトンとのんびり走る二両編成のかわいい路面電車も
    アパートの窓から見える教会の白い十字架も
    ガラスの向こうで流れるような手順で作られる、トロワのサンドイッチも
    野球帽をかぶった少年となって口笛をふきながら銀幕を横切るあおいさんも
    ぐつぐつ音をたてる鍋から、温かい湯気をたてて器に注がれるスープも

    小さな映画館のスクリーンに映し出されるセピアがかった映像のように
    温かく、柔らかく、目の前に浮かび上がるのです。

    ハラハラドキドキするような事件は何ひとつ起こらないけれど
    憧れ続けた銀幕の中の少女が、時をこえておばあさんになって現れても
    変わることのない崇拝を胸に、シャツもジーンズもスニーカーも新調して
    彼女を訪問するオーリィ君のように

    スープの冷めない距離にいる(あるいは、いてほしい)誰かをいつも心に描きながら、
    ささやかな日々の暮らしを大切に生きたいと思わせてくれる、素敵な物語です。

    • まろんさん
      takanatsuさんも宝物にしてらしたんですね♪
      ほんとに雰囲気のある、素敵な本でした。

      ちょっと巻き舌で、「オーリィ君」と
      お洒落で素...
      takanatsuさんも宝物にしてらしたんですね♪
      ほんとに雰囲気のある、素敵な本でした。

      ちょっと巻き舌で、「オーリィ君」と
      お洒落で素敵なおばあさん女優さんたちが呼びかけるのを
      ぜひ本当にスクリーンで観てみたいと思ってしまったりして。
      吉田篤弘さんは初めて読んだので、
      これから追いかけていきたい作家さんになりました(*^_^*)
      2012/08/23
    • 永遠ニ馨ルさん
      まろんさん、こんにちは。
      この本、私も宝物にしていますよー♪

      まろんさんのレビューを拝見し、
      「そうそう、そうなんだよね!」と頷くことばか...
      まろんさん、こんにちは。
      この本、私も宝物にしていますよー♪

      まろんさんのレビューを拝見し、
      「そうそう、そうなんだよね!」と頷くことばかり。
      再読したくなっちゃいました♪
      吉田さんの紡ぐ言葉って、特別な表現はひとつもないのに胸に沁みこんできちゃうんですよね。

      ところで吉田篤弘さん、初めて読まれたのですね!
      この作品を気に入られたのなら、
      「つむじ風食堂の夜」もぜひ読んでいただきたいです(*´▽`*)b
      2012/08/23
    • まろんさん
      おお!永遠ニ馨ルさんも、この本を宝物に!
      ナカマナカマ゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。

      そうそう、飾り気のない言葉で書かれているのに
      風...
      おお!永遠ニ馨ルさんも、この本を宝物に!
      ナカマナカマ゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。

      そうそう、飾り気のない言葉で書かれているのに
      風景にも、会話にも温かさが溢れていて、
      とても穏やかで懐かしい気持ちになりました♪

      この本は図書館になかったのに、
      なぜか「つむじ風食堂の夜」は置いてあったので(ばんざ~い♪)、
      早速予約入れてみます!
      教えていただいて、ありがとうございます(*^_^*)
      2012/08/24
  • 「ただいま」「おかえり」
    今日も「ちょっとした不運」と「ちょっとした幸運」がこの町に住む人々の間で繰り返されながら日が暮れていくようです。何気ない毎日が愛おしくて仕方がなくなる一冊です。

    何かに夢中になったり、何かを失くしたり、何かを祈っている……そんな毎日のなかで、ふと振り返ればそこにはたくさんの「そういえば」が転がっていました。もう思い出すこともできない「そういえば」が増えていくことに何だか寂しさを感じてしまうのは、あの頃の自分には戻れないことに気づかされるからかもしれません。でも、その積み重なったさきに「今」という時が刻まれています。そんなあたりまえのことが、実はいちばん忘れちゃいけない大切なことなのでしょう。

    この時間を忘れずにいること。
    そんな時間がひとにはあるのです。

  • ゆったりしたテンポで描かれる心地よい小説。
    「暮らしの手帖」に連載されていたそうです。

    路面電車の走る町に、仕事をやめて引っ越してきた青年・大里。
    隣町の映画館<月船シネマ>によく通っているのが主な理由だった。
    部屋の窓からは、隣の教会の白い十字架が見えるのも気に入っている。

    道行く人が「3」とかかれた袋を持って歩いているのを不思議に思っていたところ、「トロワ」というサンドイッチ屋があるのに気づく。
    3と書かれているのはトロワの袋だったのだ。
    シンプルなサンドイッチがとても美味しい店に通うようになり、店主の安藤さんと息子で小学4年生のリツとも親しくなっていく。
    リツくんにはオーリィと呼ばれます。

    「そろそろお客さんをやめてほしい」と安藤さんに言われた大里は拒否されたかと動転するが、店で働いて欲しいという意味だった。
    サンドイッチの作り方を初歩から教えてもらい、それに合うような美味しいスープを工夫することに打ち込むようになっていく。

    月船シネマでは古い映画がよくかかり、大里はそこに出てくる脇役の女優の実はファンなのだった。
    緑色のベレー帽をかぶった女性に、映画館でよく出会うことに気づいて‥
    不思議な縁とひととき通い合う心が心地よい。

    嫌な人が誰も出てこない、どこにでもありそうでいて、ひととき夢の中に入ったような世界。
    主人公が天職を見つけたと考えれば、何も起こっていないわけではないけれど。
    サンドイッチやスープが食べたくなること請け合いです!

  • 主人公のオーリィ(大里)が、映画を観ながらサンドイッチを食べている場面で、あまりの美味しさにマダムに買った分まで食べてしまったシーンがありました。
    本当に美味しいものは、ついつい食べてしまう気持ちわかります。

    皆さんのレビュー通り、スープとサンドイッチ(手作り)が無性に食べたくなります。温かくゆっくりとした時間が流れる、心地よい物語でした。

  • 「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

    おもしろいタイトル、一体どんな話だろうと読む前から想像力が掻き立てられる
    今回は月舟町のお隣の町桜川に住む人々の日常だった
    「つむじ風食堂の夜」の姉妹作ということらしい

    町中を走る二両の路面電車、アパートから見える教会の白い十字架、商店街のしっぽにあるサンドイッチ屋、隣町にある小さな映画館・・・時代から取り残されたような穏やかな町とそこに住む人々の人の良さに、どっぷりと包まれる心地よさ

    サンドイッチのお店トロワの安藤さんの遠慮がちなラブコールで、オーリィ君はそこで働くことになる

    憧れの遠距離恋愛の恋人あおいさん、大家さんのマダム
    小生意気なリツ君、時代遅れというより昔ののんびりした時間の中に悠然と身をおいているかのような安藤さん、月舟シネマの青年・・・

    そんな人たちによって紡がれる変わり映えのしない日常が愛おしくいかに尊いかが分かる

    温かい湯気に包まれたいい香りがしてきそうなスープの描写も楽しくお腹が鳴りそうだった

    月舟シネマの16席離れた席から漂うスープの香り
    あおいさんが作ったスープを口にした時に発した野生の声
    スープのことばかり考えてやっと出来上がったスープの試食の場面

    そして、最終章は、『名なしのスープのつくり方』
    これがまた傑作だが、読んだ人だけが分かるお楽しみということで・・・

    この作品の冒頭オーリィ君が自己紹介するくだりの
    「このごろは、犬もレインコートを着るくらいだから」
    から、次作のタイトルはこれにしてしまおうとなったらしい
    吉田篤弘さん、相当ウィットに富んだ人のようだ
    『レインコートを着た犬』も楽しみだ

  • すごくよかったです...。

    路面電車、おいしいサンドイッチ屋さん、隣町の月舟シネマ、教会、となんだか素敵な要素のつまった町に引っ越してきたオーリィさんのお話。

    安藤さんと息子のリツくんのきっとお互いのことを大切に思っているのに、どこかぎこちない親子関係が少し切なかったです。安藤さんもリツ君も健気。リツ君が教会の十字架に祈る一瞬の場面が好きです。
    大家のマダムとオーリィさんのお姉さんが楽しい人で好きだなぁ。マダムの昔話、お姉さんの思い出も素敵でした。
    オーリィさんとリツくんの会話もおもしろかったです。

    オーリィさんがサンドイッチ屋で働き、スープ作りに夢中になる中で、仕事って誰かのためにすることで、しかもその誰かをできるだけ笑顔に近付けることだったと立ち返るシーンにこちらもはっとなりました。

    そしてオーリィさんが恋した女優との時(というかスクリーン?)を超えた出会い。ドラマチックで心地よい展開でした。

    スープができてからのじんわりじんわりですが、静かであたたかい盛り上がり方がよかったです。

    読み終わってからは、冗談でなくスープのことばかり考えてます!
    ついでに夜啼きそばとサンドイッチのことも…(笑)
    おいしい香り漂う、やさしくてあたたかいお話でした!

    月舟シネマのポップコーン売りの青年のお話とかも読んでみたいです。

  • 読後の余韻が暖かい。
    スープを飲んでほっこりしたくなる。
    私が玉子スープといい、いもうとが野菜スープという、あのスープを作ろうか。
    そしてこの本をもう一度読み直すのもいいな。

    サンドイッチ屋さん「トロワ」で働き始めたオーリィくん。
    お味噌汁の美味しさを買われて、サンドイッチに合うスープを作ることになる。
    こんな風に書くと味気ないのだけど、漂う空気が二両編成の路面電車にゆられているような心地よさ。
    スペインオムレツのサンドイッチ美味しいそう。食べたい。

    「どんな職種であれ、それが仕事と呼ばれるものであれば、それはいつでも人の笑顔をめざしている。」

    「ひと口めより、ふた口めの方がおいしいけど」
    「そうなのよ。でも、よく考えてみると、本当においしいものって、そういうもんじゃないの?」

    彼のあおいさんへの想いとか、安藤さんの不器用さとか、リツ君と森田君の関係とか、ついフフフと笑いがもれる。
    ただ、大人びて礼儀正しい子供はちょっと物悲しいな。

    • だいさん
      スープの冷めない距離、というのが以前あったけれど、

      >読後の余韻が暖かい。

      このレビューも、あったかかった。
      スープの冷めない距離、というのが以前あったけれど、

      >読後の余韻が暖かい。

      このレビューも、あったかかった。
      2013/11/30
    • nejidonさん
      はじめまして。
      お気に入りを押してくださってありがとうございました。
      この本、ずいぶん前に読んだのですが、今でも大のお気に入りです。
      ...
      はじめまして。
      お気に入りを押してくださってありがとうございました。
      この本、ずいぶん前に読んだのですが、今でも大のお気に入りです。
      描かれる世界全体が、とても好きです。
      ところで、とても守備範囲の広い本棚ですね。
      また読みに伺いますので、どうぞよろしく。
      2013/12/03
  • サンドイッチとスープが無性に食べたくなる本。
    やはりどこか外国風でノスタルジック。少しだけドラマチック…この世界観がすてき。

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著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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