世界の歴史18 - ラテンアメリカ文明の興亡 (中公文庫 S 22-18)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122052376

作品紹介・あらすじ

インカの神話的社会がスペイン人と遭遇し、交錯する文化と血が、独立と自由を激しく求めて現代へと至る。蠱惑の大陸、ラテンアメリカ一万年の歴史が織りなす極彩色の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 中南米の歴史入門書として文句なしの1冊

    中南米の歴史というと大航海時代の征服戦争とペルーのポトシ銀山ぐらいしか知識がなかったのでもう少し深掘りしてみたいと購入。

    読みやすい文章と飽きの来ない構成で一気に読了してしまいました。
    内容は、インカ帝国とスペインによる植民地時代はペルーを中心に、シモン・ボリバル以降の近代は中南米全体を俯瞰的に記載しています。

    ・ピサロをはじめとするコンキスタドール(征服者)たちの末路
    ・スペイン本国の植民地政策
    ・植民地社会でのインディオや混血児たちの立ち回り
    ・植民地が独立するまでの過程
    ・独立後、ポピュリズム、軍政、左翼革命が起こった背景

    私が気になっていた要素がとてもよくまとまっていました。ここからフジモリ大統領がなぜ支持を集め緊縮財政を敷くに至ったのかという90年代までの歴史がまとめられています。

    ベネズエラやアルゼンチンの財政危機、再選を果たしたブラジルのルラ大統領など国際ニュースが歴史と地続きになり中南米の歴史入門書として文句なしの1冊でした。

    文庫版あとがきには南米ガチ勢の著者が『母をたずねて三千里』を本気出して解説していたのも非常に面白かったです。

  • NDC209
    「インカの神話的社会がスペイン人と遭遇し、交錯する文化と血が、独立と自由を激しく求めて現代へと至る。蠱惑の大陸、ラテンアメリカ一万年の歴史が織りなす極彩色の世界。」

    目次
    最初の遭遇
    インカ、百年の王国
    征服されたインディオ
    成熟する植民地社会
    インカを探して
    カリブの海賊
    シモン・ボリーバルとスペイン領アメリカの独立
    ロサスとフアレス
    ブラジル帝国
    メキシコ革命
    ヴァルガスとペロン

    著者等紹介
    高橋均[タカハシヒトシ]
    1954年、東京都に生まれる。78年、東京大学教養学部国際関係論分科卒業。東京大学教養学部助手、立正大学経済学部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。ラテンアメリカ史・地域文化研究を専攻

    網野徹哉[アミノテツヤ]
    1960年、東京都に生まれる。84年、東京大学文学部西洋史学科卒業。東京大学教養学部助手、フェリス女学院大学文学部国際文化学科専任講師を経て、東京大学大学院総合文化研究科准教授。アンデス社会史・ラテンアメリカ史を専攻

  • 近現代のラテンアメリカ
    ヨーロッパからの脱却
    現代まで記されてます

    難易度 やや難
    感動☆☆☆☆☆
    涙線☆☆☆☆☆
    興奮★☆☆☆☆
    感心★★☆☆☆
    伏線☆☆☆☆☆

  • インカの神話的社会がスペイン人と遭遇し、交錯する文化と血が、独立と自由を激しく求めて現代へと至る。魅惑の大陸、ラテンアメリカ1万年の歴史が織りなす極彩色の世界。

  • ラテンアメリカはおそらく地理的な理由から閉塞した空間であったために、その他の世界に比べて技術や社会の発達が弱かった。例えば、首長国と呼ばれる単位での割拠[p19]にあらわれている。これは近現代の地方の分離主義的傾向 (「ラテンアメリカの現実政治の場で実際にはたらいていた力は、統合に向かう求心力ではなく遠心力であった。」[p344-345])や、政治的安定条件の幅を狭めた要因につながっている(「『パトロン・クライアント』の関係」[p402-])。そこへ東への進出をイスラム国家や遊牧民族などによって阻まれ、さらには外圧を加えられた欧州諸国が植民。レコンキスタの勢いあたらしいスペインがその筆頭。

    試行錯誤の末(植民地責任者の解雇多数、原住民の反乱多数…)にようやくエンコミエンダ制[p38など]へ。ただし、北米(イギリス)の定住植民とは異なり行政植民[p38-39、p54-63]。

    時間が経つと共に、現地での混血が進んだり(メスティーソなど)、インカ的ナショナリズムが高まってきたり[p255-256]、教育(イエズス会中心、コレヒオなど[p240]、また布教活動はミッション[p386]ができるなど、未知の土地へ進出するモチベーションになっていたはず)水準が上昇し社会組織が整ってきたりで、本国より巨大になり、独立を志向[※植民地の耐用年数が来た、p311]。

    また、ブラジルは大西洋奴隷貿易が盛んに行われる地理的条件を満たしていたが[p289]そのほかの地域に比べて植民が進まなかった[先住民がエンコミエンダの対象にならない、p288]。独立にもおもに植民地の発達強度による地域差があった。

    独立運動に際して、活躍した人々の土台は本国と現地の間にいたクラカという階層の人々の経済力などか[p228]。独立運動における初期は副王政府 VS 反乱/革命軍の構図。その後の政府内で保守党VS自由党の構図(武力闘争多い)と宗教との対立(教育の基盤は宗教だったし資金も潤沢[p351])。とくに分離主義[「五つの小国が割拠するに至った事情」p352]が強い。カウディリョ[p353]が活躍し、カフェオレ体制[p394]などにみられるように、各州が独自の利益を守ろうとするところに特徴(植民地性の名残?) がある。

    長期軍政が多くの国で続いた理由や、革命、テロリズムなどの混乱はこういった(行政)植民地としての歴史と決っして切り離すことはできない。大きくみれば、どれも起源を遡ると古代の首長国の乱立や植民地として飼い慣らされ混乱した歴史などにたどり着くことがわかる。

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著者プロフィール

獨協大学法学部教授。
獨協大学大学院法務研究科(法科大学院)教授を経て、現職。
専門は、商法・会社法、金融商品取引法、企業法務。
一般社団法人GBL(グローバルビジネスロー)研究所理事、国際取引法学会理事、企業法学会理事。
長年の企業実務経験と商法・会社法等の専門家としての法理論の双方からのアプローチを実践している。

「2023年 『監査役監査の実務と対応(第8版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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