犬 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2009年12月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784122052444

みんなの感想まとめ

犬との関係性をテーマにしたこの作品は、9人の著者による12篇の物語を通じて、犬と人間の不思議な絆を描いています。古き良き時代の日本における犬の扱いは、今とは異なる価値観が色濃く反映されており、時には残...

感想・レビュー・書評

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  • クラフト・エヴィング商會、川端康成、幸田文、他『犬』中公文庫。

    1954年に中央公論社から刊行された単行本『犬』を底本に新たにクラフト・エヴィング商會の創作・デザインを加えて再編集した『犬』を文庫化。

    クラフト・エヴィング商會の『ないもの、あります』が、2025年本屋大賞の『超発掘本!』に選出されたことから、行きつけの本屋にクラフト・エヴィング商會の文庫本が4作も山積みされていたので思わず大人買いしてしまった。姉妹作には『猫』がある。

    10人の作家による犬をテーマにした短編12編を収録したアンソロジーである。


    阿部知二『赤毛の犬』。懐かしい風景が目の前に広がる短編。子供たちに人気のあったジュジュという名の赤毛の犬。

    網野菊『犬たち』。テル、ポチといった多くの犬たちに翻弄されるヒロ子。動物を飼うということは容易いことではない。

    伊藤整『犬とわたし』。伊藤整が綴る随筆。川端康成の邸宅に飼われていた血統の良い犬たち、伊藤整が大学教授から譲り受けた高貴な犬との思い出。

    川端康成『わが犬の記』。川端康成が飼っていた歴代の犬たちの思い出を綴った随筆。流石、文豪。淀みの無い文章が心地よい。

    川端康成『愛犬家心得』。川端康成が自らの経験から愛犬家の心得を綴る。

    幸田文『あか』。ジフテリアで寝込んでいた少女の元に父親が「犬ころし」から買った犬を連れてくる。昔は野犬や放し飼いの犬が多かった。それだけに昔は犬も自由だったのだろう。

    志賀直哉『クマ』。熊に似たクマという名の犬について綴られた随筆。ある日、クマが家から逃亡し、行方不明となる。飼い犬、飼い猫は時として逃亡を試みる。我が家で飼っている黒猫のアミちゃんは1年にも満たないうちに逃亡すること4度。どうしても外の世界が気になるようだ。

    志賀直哉『雪の遠足』。雪の積もる中、遠足に出掛ける主人公たち。その後ろから家で飼っている子犬が付いてくる。到底、子犬には無理からぬ道程。

    徳川夢聲『トム公の居候』。著者の飼うトム公という名の犬の元にある日、黒犬が現れ、居候を決め込む。

    長谷川如是閑『「犬の家」の主人と家族』。3人家族に犬10匹という犬の家。長谷川如是閑という名を初めて知ったが、評論家ということだ。

    林芙美子『犬』。林芙美子のペットについての随筆。林芙美子は犬と会話出来るという。

    クラフト・エヴィング商會『ゆっくり犬の冒険 ─距離を置くの巻』。冒険らしい冒険など無く、ただひたすら佇む番犬。

    本体価格660円
    ★★★★

  • 犬にまつわる物語 9人・1ユニット・12篇。
    全篇旧かな遣ひ(クラフト・エヴィング商會さん除く)

    昔々のこのテのお話を読んでいると、ニンゲンがイヌを養って〈やって〉いるようで、実際はニンゲンがイヌに育てて〈もらって〉いるのだなあと感じることが多い。

    本書は今から100年近く前、現代とは価値観がだいぶ違う日本人によって書かれたものが中心なので、ニンゲンとイヌの関係性はなかなか酷いものなのだが、ぞんざいに扱われながらも〈ニンゲンの機嫌の取り方〉を心得ているイヌは、揚々と〈イヌのなんたるか〉を学者の如く語りたがるニンゲンよりもずっとずっと賢いと思う。いえ、断じて川端康成への皮肉ではありません。

    ことば選びとリズム感が素敵な網野菊。
    ひらがなの優しさと心地よい温度感、幸田文。
    出だしから引きずりこむ巧妙さとユーモア、伊藤整。

    「いつたい日本人は、動物にたいしては、人間をあつかうようにあつかわなくてもいいように思つています」p.180
    「人間にいじのわるいあつかいをうければ、犬だつてわるくなります。でもまだ犬のほうがましで、人間はウソをつきますが、犬はウソをつくことができません」p.180
    「おまえたちは動物をあんなにもすきなくせに、どうして同類をそんなに憎むのだよ」p.190
    こういう考え方がこの時代にもあったのだと、この本では異色の存在、沁みる長谷川如是閑。

    久しぶりの旧かな昔話に日本語の美しさを再認識させられる。良い読書時間だった。

  • 櫻井さんリリーズ

  • 犬。なんと健気で個性的な犬たちよ。
    そしてこの作家たちの犬への想いの様々なことよ。(なんだかんだで皆犬のことが好きなんだけども)

    犬と人の距離感というか、接し方は今とは異なるところもあったけども、
    今も昔も犬はずっと人間のそばに暮らしていてくれているんだなあ。
    犬は人間が好きだし人間は犬が好きだし。

    とにかく犬は良い。

  • 9人の文豪たちの11編の随筆集です。

    1954年の本を底本にしているということで、中身はかなり古いものですが、それでも今に通じる犬との接し方をされている方もおられ、その部分では参考になるものもあります。

  • 「赤毛の犬」阿部知二
    「犬たち」網野菊
    「犬と私」伊藤整
    「わが犬の記」川端康成
    「あか」幸田文
    「クマ」「雪の遠足」志賀直哉
    「トム公の居候」徳川夢聲
    「『犬の家』の主人と家族」長谷川如是閑
    「犬」林芙美子
    「ゆっくり犬の冒険-距離を置くの巻」クラフト・エヴィング商會

  • 犬に関わるアンソロジー。
    伊藤整、川端康成、幸田文、志賀直哉、林芙美子ら錚々たる面々の、犬をめぐる随想や小説。

    昔の犬が、ほぼ放し飼いにされており、残飯を食べさせ、時に逃げだし、また去勢や不妊もしないので盛りがつけば子犬が生まれ、もらったりあげたりが当たり前だったのが、おもしろい。今の犬とは随分違う環境だったろう。犬を飼う人々の努力が、犬の地位を向上させたということだろうか。

    一方で「犬殺し」がいる時代でもあった。

  • 明治から昭和の作家の、犬にかかわるストーリーを集めたもの。小説というよりエッセイのほうが強いか。
    実は本を読んでいても、この時代の作家のって読む機会それほど多くなくて、ほぼ初見。
    文体はもちろんそのままだけれど、あの時代の犬というものに考えさせられる。

  • ひとが犬をどうみてきたのかを考える。

    有名な作家さんたちだって、犬が好きよ。
    どれくらいかって、これくらいです。本になるくらい。
    ひとと犬それぞれの個性や事情により、彼らのあいだの距離感がいろいろと違うのがわたしは好きです。それが彼らたちだけにわかる信頼の証のようにも思えて。

  • 昭和29年に出版された犬にまつわる随筆をクラフトエヴィング商會がアレンジした文庫本。「エッセイ」ではなく「随筆」といわざるをえない、犬好きとして有名な?川端康成や志賀直哉らによる格調高い代物です。
    全体的な印象としては、今の犬は恵まれているというか、昭和初期の犬はまず番犬であり、野良犬も多かったという時代背景に軽いショックを受けつつ、人と動物の関わりというか、息づかいが感じられる一冊。

  • 幸田文『アカ』秀逸

  • 猫がタオルケットなら、こっちは冬の掛け布団。気持ちが合ってないとなんだか暑苦しい。

  • 犬ってバカなほどかわいい。

  • 犬好きにはいっそう楽しいアンソロジー。読んだことがない作家ばかりで、しかもほかの作品も読みたくなった。

    阿部知二「赤毛の犬」:高度成長の前の広い空や原っぱに響く子供の声が聞こえてきそうな話。抑制の効いた文体が気持ち良かった。

    網野菊「犬たち」:この人は私小説の人だから、主人公はたぶん当人とかぶるところがあるのだろう。小柄で、声も小さめで、独りでじっとしていそうな、でも心の中では頑固者かもしれない、尾崎翠の話に出てきそうな女の人を想像。

    伊藤整「犬と私」:同時代の作家の随筆から想像していた、きっちりして冷静な人とはだいぶイメージが違う、おちゃめな随筆。内心の動揺を自虐的に描いて笑いを取るスタイルなんだけれど、いまどきのエッセイのよう。

    川端康成「わが犬の記 愛犬家心得」:この人はイメージどおり、だいぶ神経質で気難しい書きっぷり。でも嫌な感触ではなくて、ところどころに犬への強烈な愛情がこもったフレーズがあって、にっこりさせられてしまう。

    幸田文「あか」:童話仕立てなんだけれども、最後の4行で不覚にも涙が出てしまった。電車の中だったのに。3時間後にもう一度読んだら、やっぱりじわっときた。この本の中では一番好きというか、否応もなく心を打たれてしまった。

    志賀直哉「クマ 雪の遠足」:取捨選択がされていないわけがないのに、書き手のフィルターが掛かっていないかのような、ものすごく透明な文章。びっくりした。多くの後進者に影響を与えたことを納得。

    徳川夢聲「トム公の居候」:ほかの作者がどちらかというとキッチリ派なのに比べると、夢聲さんの筆致は大らかでコミカルで、開けっ放しな犬好き魂が伝わってきて楽しい。犬のキャラが立っているという意味ではトップ。

    長谷川如是閑「「犬の家」の主人と家族」:きちんとしつけるのが飼い主の務めであり、それをやり遂げればどんなに素敵な犬ライフが待っているかがわかる。でもこの人すごい。ローレンツ先生みたい。

    林芙美子「犬」:犬とする会話から、「私」にとってその犬がどれほど大事な存在なのかが伝わってくる。たった4行なのに。私も会話したい。サブキャラのミミズクもいい味を出してます。

  • 年末に出た「猫」に比べると似たような話が多いのですが、その中でも幸田文の童話「あか」が絶品です。

  • 2010年1月15日購入

  • 文豪たち一人ひとり、犬に対する気概、が色々に違っていて、面白い。
    伊藤整の、ちょう甘やかされて育った高貴な犬、ミミイの話が好き。
    それにしても旧かな遣い、漢字、読んでいるとタイムスリップです。

    MVP:子犬(雪の遠足についてくる様が可愛らしい)

  • 「猫」と同様、昭和29年に発行されたものをクラフト・エヴィング商會さんが再アレンジして発行してくれたもの。それ故に、ひとと犬とのかかわり合い方の時代の変化というものをしみじみと考えさせられたりします。
     純粋犬派と雑種犬派とがいたりして、それぞれに書き手のこだわりが見て取れて興味深いのです。

    ●いつたい日本人は、動物にたいしては、人間をあつかうようにあつかわなくてもいいように思つています。子供が罪もない蛙に石をぶつけているのを見ても、しかる大人が少い。人に害をしない蛙に石をぶつけるのは、往来の人に石をぶつけるのを見ても、いけないことに決まつているのに、相手が蛙だからかまわないというのはずいぶん乱暴なはなしです。
     犬も、ですから日本のはどうも性質がよくないのが多い。人間にいじのわるいあつかいをうければ、犬だつてわるくなります。でもまだ犬の方がましで、人間はウソをつきますが、犬はウソをつくことができません。(「犬の家」の主人と家族 長谷川如是閑より)

    2010/1/11 読了

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著者プロフィール

クラフト・エヴィング商會(クラフト・エヴィングしょうかい):吉田浩美と吉田篤弘による制作ユニット。著書に『ないもの、あります』(2025年本屋大賞「超発掘本!」)『クラウド・コレクター雲をつかむような話』『すぐそこの遠い場所』『おかしな本棚』がある。吉田浩美の著作として『a piece of cake』、吉田篤弘の著作として、『月とコーヒー』『おやすみ、東京』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『遠くの街に犬の吠える』『雲と鉛筆』など。著作の他に装幀の仕事を数多く手がけ、2001年、講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞している。ちくまプリマー新書の装幀を創刊より担当。

「2025年 『ただいま装幀中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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