双調平家物語 11 平家の巻(承前) (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2010年2月23日発売)
4.18
  • (3)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 49
感想 : 8
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784122052888

みんなの感想まとめ

歴史的な背景と人間ドラマが巧みに描かれた本作は、平家の栄華とその影に潜む悲劇を浮き彫りにしています。忠盛の商才と勤勉さが、権力者たちとの関係を築く鍵となり、贅美を求める人々の心を捉えていく様子が描かれ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 西海の地ー肥前の国にあった鳥羽院の御荘の預かりを勤めた忠盛は、その地に渡って来る唐土船に目をつけ、宋との貿易にも手を出した。渡来の珍奇な文物と、そして我が朝では鋳造をやめていた銭貨を手に入れ、人を動かし、富を手に入れる基とした。人を侮る王朝の貴族達が従う唯一のもの。それは、贅美である。富を手に入れた忠盛は、白河院の仰せのままに、さまざまな寄進をし、寺社を造進した。院のお心を満たすため、休む間もなく働いた。
    勤勉な狗を見て、人はその胸中を疑わない。権中納言清盛は、お主上に仕える摂関家に飼われた、最も忠実なる狗だった。「天下第一の臣」たる摂関家にとって、「御乳母の夫」とはすなわち、最も忠実なる従者の別名でしかなかった。「院の第一の近臣」であり、摂関家に嘉されてまめまめしくお主上に仕える「御乳母の夫」なのである。「摂関家に仕え庇護される」とは、「正しく朝廷の序列に組み込まれる」の別名でしかないのだ。

  • 毎日出版文化賞
    著者:橋本治(1948-、杉並区、作家)

  • 積読から久しぶりに引っ張り出してみました。
    大河ドラマは見てないので、どんな性格になっているかわからないけれど、まだ参議になりたてで畏れ多いと思ってるくらい。
    11巻は、後の高倉天皇が生まれたあたりです。

    こういうの見てると政(まつりごと)の感じとか、流されてもいつかは許されるとか、昔から何も変わってないんですね。

  • 一度読んだものをじっくり読み返していたら時間がかかりました。悪源太の最後が哀れでした…。清盛の冷静な性格がうかがえますね。ここに来てようやく平家がクローズアップされてきました。登場人物紹介欄でけっこうネタバレしてますね。いつの間にか成親と重盛がデキて…。常盤の逃亡劇が切々と胸に迫りました。本当に寒そうで辛そうで、苦しかったです。

  •  源氏を退けた平氏は、藤原一族など貴族が衰退し天皇家も政治に主体的に関わる人物が出ない中で次第に権力の中枢に入っていく。しかし肝心の家長清盛は欲のない人物だった。
     権勢を誇った挙句壊滅してしまった平氏の中心人物だったために傲岸不遜な印象しかない清盛だが、ここで描かれているのは慎重で争いを好まない我慢強く上司に忠誠を誓う横顔が描かれている(自らの意思は乏しく忠誠を誓うばかりなので「狗」というきつい表現が出てくる)。野心ということではむしろ義弟の貴族平氏の時忠の上昇志向が目立つ。ただその野心の乏しさがゆえに乱世を生んでしまう皮肉を予感させつつ、表向きは穏やかで敵のいない平氏全盛時代が描かれて終わる。
     野望陰謀権謀術数といった話が多いので、多少地味で暗いかな(相変わらず回りくどい表現が多いしねえ)。それでも大河ドラマの主人公清盛の考え方や心理がじっくりと書かれているので楽しめる。それから後白河上皇はなかなか興味深い人物だなあ。気ままで周囲が予想だにしない行動や発言をして世を混乱におとしめる。トリックスター的ともいえる人だが、何よりも自由を重んじるという意味では現代人に一番近いのかもしれないなあ。暗愚、などといわれてきたけど意外とこれから人気が高まるタイプかも。

  • 清盛の欲の無さが強調されています。

    ++++++++++++



    (忠通から取引を持ちかけられ、権中納言に昇進が決まる)
    「伊勢平氏の棟梁は、畏れと驚愕の中で頭を下げた。そして、なぜに摂関家の長が清盛に取引をもちかけるのかを、訝しんでいた。『俺は、それほどの存在となったのか?』伊勢平氏の長は、鬱屈した忍従に慣れていた。摂関家の長に蔑まれることに慣れていた。畏敬と驚愕で頭を下げ、伊勢平氏の長は、それをすることに、微妙な違和を感じていた。『今、俺はどこにいるのか?』と。」



    「長寛2年の御世は、穏やかだった。表立ったご不和や対立は、御世のどこにもなかった。誰も彼もがてんでんばらばらに生きて、対立は回避されていた。すなわち、『中心の喪失』が明らかになり始めていた。幼い娘を摂関家へ送り込んだ清盛は、なにも知らぬまま、喪失された中心へと続く、野望の道を歩き始めていた。」



    「人は、なにを願うのかを理解せぬまま、神と仏に『栄え』を願う。まるで、満ち足りて願うべきことがなにひとつない者が願う、そのことこそが『栄え』でもあるかのように錯覚して。」



    「富を得て、更にその先にまた富を望む時、富める者は、たやすく貧者となる。春の夜に、夢を見るのは、盛者ばかりではない。貧者とてまた、なまめく春の夜には、栄華という名の血腥い夢を見る。春が過ぎ、夏が果てて、名ばかりの秋風が熱風を送るとき、人は魘(うな)されて、あらぬ栄華の悪夢を見る――金色の瘴気に包まれて。清盛はその時、夢魔に襲われていた。王朝の都に巣食う、栄華という夢魔に。摂関家へ娘を贈った清盛は、そのまま、摂関家を簒奪する魔性の者へとなり変わりつつあった。平氏一門の栄華は、ここから始まる。」



    「太政大臣となって三月後、清盛はその官を辞した。…清盛はようやく、自身の栄華を実感した。摂関家の所領を我が物としても、清盛には、朝政を簒奪しようという心がなかったのだ。清盛は、摂政の地位にも、これを補佐する左右の大臣職にも関心がなかった。『前の太政大臣』となった清盛は、ただ海が見たかった。」



    「どこかでなにかが生まれ出ようとしていたにしろ、御世は穏やかで、まだ静かだった。」




    +++++++++

    こんな文章からちょいと整理してみた。

    「10年の間に6度の改元があった。改元のたびに、清盛はその身分と立場を変えた。云々」


    保元…受領
    平治…都第一の武者
    永暦…院近臣の第一、公卿
    応保…権中納言、二条に近侍
    長寛…盛子が摂関家北政所
    永万…権大納言、重盛参議

    「なにによって清盛は、そこまでの立身を可能にしたのか。清盛は、自身から動かなかった。自身から動く時は、拒まれた。求められて動き、清盛の働きを必要とする時、王朝の世は痙攣に苦しんでいた。立身のために策したのではない。傾く王朝の世は、清盛の前で崩れ、清盛の前で道を開いた。清盛は、ただその道を開いた。望む以前に、ただ待った。結果として清盛は、待つことにおいて勤勉だった。」

    +++++++++


    13巻読んでると、「なにによって清盛は、そこまでの立身」ができたのか、解るわけです。

    すべてはあいつの陰謀だった。。

  • 2010年11月3日読み始め 2010年11月7日読了。
    常盤御前が出てくると、どうしても稲森いずみの顔が浮かんでしまう。それはさておき、いよいよ平家物語らしいエピソードも満載で盛り上げってきてます。清盛はなんとなく強欲なイメージがあったけど、この双調の清盛は、慎重でそんなに野望はない、だけど周囲の人物の影響で、最後には摂関家の財産も手にし、さらに大きな野望を持ってしまうあたりが悲劇の始まりなのか?
    とりあえず続きを読もう。

全7件中 1 - 7件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

橋本 治(はしもと・おさむ):1948年、東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルの垣根を越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』『巡礼』『リア家の人々』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』『思いつきで世界は進む』他多数。2019年、逝去。

「2026年 『「わからない」という方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

橋本治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×