モラトリアム人間の時代 (中公文庫 お 31-4)

著者 :
  • 中央公論新社
4.05
  • (7)
  • (7)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 155
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053113

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 18から30の間に新たに「ユース」という期を置きたいという感覚、社会に出たと言うのに全然自立する気がなくお客様意識があると言う感覚、全てはこの本が81年に書かれていて、自分達の親世代に言っている言葉であると言うのが未来人視点でめちゃめちゃ面白い。自立するのが遅いことの何が問題なのかがあまりクリアではない気がする(最後まで読んではいない)。

  • 小此木啓吾の中公文庫の『モラトリアム人間の時代』は1981年、『モラトリアム人間を考える』と『日本人の阿闍世コンプレックス』は1982年。
    1983年前後のごろよく読んでいた。
    科学技術が発達し、スイッチを入れて蛍光灯がすぐにつかないだけでイライラするような人間、「全能の錯覚に生きる現代人」は、実際の社会関係では、挫折を経験するのでもなく、ただ腰掛け的な関係、木枯紋次郎の「あっしには関りのないことでござんす」という関係しか作れなくなったということだと思う。モラトリアムとは、一人前になるまでの猶予期間にある人間という意味。現代人は一生モラトリアムで生きるしかないという自覚が必要になる。(「少年の心を持つ」とか「万年青年」は必ずしも悪いことではない)
    1970年代から執筆されたものだと思うが、1980年代前半に広く受け入れられたとすれば、科学技術云々だけでなく、伝統的な地域社会の崩壊や、自民党単独過半数割れなどの「ポスト戦後社会」の大きな時代の転換点だったのではないかと思う。
    バブル経済へ向かう過程での警鐘というのでなく、既に時代は転換したということ。バブル経済は崩壊したことが問題なのではなく、バブル経済自体が戦後的なもの(特に良かったもの)を最終的に崩壊させたにすぎない。
    アイデンティティという言葉を、この本で知ったのか、それとももっと後のような気もするが、記憶がはっきりしない。

  • わたしの考えることなんてもう大方この歴史のどこかで誰かが考えているのだろうと最近は思いながら本を読んでいるのだけれど、まさか小此木啓吾氏だったとは思わず、たどり着けた自分を少しだけ褒めてあげたい。分裂症的な感覚、自分の人生を何か賭せない感覚、ここにいる自分が本物ではないような感覚。それらはオタクの問題と結びつき、かつ初めて江藤淳の成熟と喪失を読んだ時から成熟の問題と結びついた。成熟と喪失はまずエリクソンを下敷きにしており、この本を読んでやはりエリクソンなのだな、と思う。ここからどう進んでいくのか、まさに読書の真価を知っていった一年だったと思う。

  • 現代人は多かれ少なかれモラトリアム人間。

  • 途中で読むのが苦痛になった。
    著者の最大の功績は成長途中の若者を「モラトリアム人間」と命名した事だろう。
    しかし著者の視点は昭和5年の戦前生まれの男のものであり、それが発表当初1971年頃には普遍的な考えであったのであり、基本的に「だらしない若者」という価値観が根づいている。
    その根本には家父長制思考があるのだが、農村社会制度から工業労働者としての都市生活者への変遷を考慮すれば、なぜ都市部を中心にした若者(当時は農家の次男以下が多かった)が長男と違って安定した土地を分け与えられずに都市で根を張って生きていく過程であると捉える視点がないのかと不満に思う。
    また現在において考えると、生涯雇用など望めない時代における不安定さが社会の根底にあるのだから、ますます何事も決めつけてしまわない身軽さを身につける事こそ世渡りの秘訣と言えるので、好き嫌い関係なくモラトリアム人間の時代が来たと言えよう。

  • 大学2年生のとき、自分のことを理解したくて読みました。

  • 日本的マゾヒズム
    モラトリアム人間からプロテウス的人間へ
    プロテウス的人間は、アイデンティティの拡散を、積極的に肯定し、暫定的・一時的な社会的存在であること自身を新しい同一性として自己を実現してゆく人間
     「「モラトリアム人間」であることを自己のアイデンティティとし、次から次へと自分をいろいろな生き方、考え方に同一化させて変身を遂げ、その過程で自己を自己実現していく自己実現型人間。別名「プロテウス的人間」ともよばれる。」

    かつては病理とされた「アイデンティティ拡散症状群」が、受身的性格から積極的性格へと変質し、現代においては、「生涯教育」が象徴するように、生きていくために不可欠な要素となったのである。

    「アイデンティティ人間からモラトリアム人間へ」というのではなく、アイデンティティとモラトリアムはともに存在しなければならないのであり、ライフスタイルはアイデンティティによって支えられて、はじめて意味のあるもの、力のあるものとなるのである。「選択」を可 能にする自我の前向きの力こそアイデンティティなのである。
     このようにみると、私たちはアイデンティティのある程度の確立なしには、健康に生きてゆけないといっても過言ではないだろう。」(注38)

  • [ 内容 ]
    かつて青年期に固有のものであった「モラトリアム人間」の心理構造は、今や社会的性格となった。
    日本人および日本社会の特質の解明のためのカギを提示する精神科医の日本診断。

    [ 目次 ]
    モラトリアム人間の時代
    同一性の探求
    会社の中のモラトリアム人間
    モラトリアム企業論
    中高年サラリーマンの心理
    母親のモラトリアム人間化
    宇宙時代のモラトリアム人間
    現代社会の山アラシ・ジレンマ
    情報化社会の病理

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4122053110
    ── 小此木 啓吾《モラトリアム人間の時代 19781023-20100425 中央公論新社》
     
    …… モラトリアム【moratorium】1 支払猶予。法令により、金銭債
    務の支払いを一定期間猶予させること。戦争・天災・恐慌などの非常事
    態に際して信用制度の崩壊を防ぎ、経済的混乱を避ける目的で行われる。
    2 製造・使用・実施などの一時停止。核実験や原子力発電所設置など
    にいう。3 肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられ
    ない猶予の期間。また、そこにとどまっている心理状態。── 大辞泉
     
     小此木姓の人々 ~ おこのぎ・おびき・こおのぎ ・ここき・他 ~
    http://www.weblio.jp/content/%E5%B0%8F%E6%AD%A4%E6%9C%A8
     
    <PRE>
     小此木 彦四郎 竹屋創業  18‥‥‥ 埼玉 横浜 18‥‥‥ ? /才三郎の父
     小此木 才三郎 材木商開業 18‥‥‥ 埼玉 横浜 19‥‥‥ ? /歌治の養父
     小此木 歌治  衆議院議員 19‥‥‥ 神奈川  19‥‥‥ ? /八郎の祖父
    …… 才三郎は孫を養子に迎えた。それが私(八郎)の祖父の歌治である。
    http://www.yokohama-album.jp/special/post_1.php
     小此木 彦三郎 衆議院議員 19280126 神奈川  19911104 63 /八郎の父/早稲田大学文学部卒
    /19911029 階段転倒事故/通産相 199004‥ 選挙“ゼネコン献金疑惑”
     小此木 八郎  衆議院議員 19650622 神奈川         /自民党筆頭副幹事長/彦三郎の三男/玉川大学卒
    ────────────────────────────────
     小此木 真三郎   近代史 1912‥‥ ‥‥   19940809 82 /静岡大学教授
    ♀小此木 ひさ        1923‥‥ 群馬   20030308 80 /焼死体発見/勝雄(43)の義母
     小此木 久一郎   物理学 1925‥‥ 栃木 広島 19981025 73 /広島大学教授/素粒子
    ────────────────────────────────
     小此木 啓吾  精神医学  19300131 東京   20030921 73 /慶応大医学部卒
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%BE%AE%BA%A1%CC%DA
    /日本精神分析学会々長、東京国際大大学院教授。1970年代後半、豊か
    な社会に育った若者を規定した“モラトリアム人間”という言葉で有名
    になった。~《モラトリアム人間の時代/家庭のない家族の時代》
    ────────────────────────────────
     小此木 健伸  岩峰登高会 1967‥‥ 東京 富山 19971231 30 /剣岳遭難/19980106 捜索打切
    ────────────────────────────────
     小此木 幸雄 国民銀行頭取 1934‥‥ ‥‥          /19990411 経営破綻/20000413 初公判
    /元副頭取・鈴木 秀行(68)両被告の判決が30日、東京地裁であった。
    井上 弘通裁判長は「問題の不正融資は破たん原因の1つになっており、
    金融機関に対する国民の信頼を失墜させた責任は重い」と述べ、小此木
    被告に懲役2年6月(求刑・懲役4年)の実刑判決、鈴木被告に同2年、執行
    猶予4年(同3年)の有罪判決をそれぞれ言い渡した。
    ────────────────────────────────
     小此木 政夫   政治学  19450414 群馬          /九州大学特任教授、慶應義塾大学法学部名誉教授
    …… 国谷(裕子、略)は、日韓併合条約で、小此木教授が「日韓併合
    は合法的に行われた」と言った瞬間 鬼のような目で教授をにらみつけ、
    「合法ですか?」と言った
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20050924 イヌ・アッチ・イケー ~ 反NHKの人々 ~
    ────────────────────────────────
    ♀小此木 麻里   女優   19860818 東京          /
    http://blog.livedoor.jp/mari147cm/
    </PRE>
     
    (20130826)
     

  • 読んだのは改版2010年の本ですが、初版は1981年の本。30年近くも前の本ですが、現代人の社会的な心理、性格を見事にとらえているなと感心した。青年期から大人になるまでのモラトリアム(猶予期間)についての洞察がすばらしいと思う。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1930年東京府生まれ。日本の医学者・精神科医、精神分析家。学位は、医学博士。1954年慶應義塾大学医学部卒業。1960年「自由連想法の研究」で医学博士の学位を取得。慶應義塾大学環境情報学部教授、東京国際大学教授を歴任。フロイト研究や阿闍世コンプレックス研究、家族精神医学の分野では日本の第一人者である。著書はいずれも平易な記述であり、難解な精神分析理論を専門家のみならず広く一般に紹介した功績は大きい。2003年没。主な著書は『精神分析ノート』(日本教文社,1964年)、『モラトリアム人間の時代』(中央公論社、1978年)、『フロイトとの出会い―自己確認への道―』(人文書院、1978年)など。

「2024年 『フロイト著作集第7巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小此木啓吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エーリッヒ・フロ...
ジェームス W....
三島由紀夫
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×