ポー名作集 (中公文庫)

  • 中央公論新社
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053472

作品紹介・あらすじ

理性と夢幻、不安と狂気が綾なすポーの世界を、流麗な丸谷才一訳で再現。代表的傑作「モルグ街の殺人」「黄金虫」「黒猫」「アシャー館の崩壊」など八篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • NHKラジオ第2放送の「カルチャーラジオ 文学の世界」で都甲幸治先生の「黒猫」の解説にすっかり魅せられて、この作品集を手に取った。

    都甲先生はまず、アメリカという国は「理念先行国家」であると言う。
    理念先行国家とは、自由、平等、人権などの思想に忠誠を誓い、それらを順守することに納得した人たちによって建国された人類史上初の国家だということ。
    しかし先生はこうも付け加える。-人間とはそもそも、どんな高邁な思想であり理念を持っていても、それを高邁なまま実行するのは現実的に不可能で限界がある、と。

    その例として、先生はアメリカ人の「ホームランドセキュリティ」という考え方を引用する。
    つまりアメリカ人が自分たちの安全の保持という理想を掲げるとき、一方で銃の所持や対テロ戦争といった「暴力」を容認してしまい、それが仕返しや反抗などで暴力を再生産するという悪循環に陥り、暴力が止まらない状況に至っていることに象徴される。
    暴力が悪いのは小学生でもわかっている。だがそれを排除できない現実に向き合わざるを得ないという人間の矛盾を、私たちに最もわかりやすく示してくれるツールはおそらく文学だろう。ポーはそれを本能的に知覚し成就し得た作家ということなのだろうか。

    具体的に「黒猫」本文に照らしてみると、私が都甲先生の解説でわが意を得たと思ったのは、黒猫のプルートーが首を縄で縛られて木に吊るされるという描写に、アメリカ(特に南部)での黒人へのリンチという歴史的事実を重ねている点だ。
    「黒猫」の主人公は、はじめ動物好きとして描かれ、プルートーを拾って飼い始めた頃はやさしかったが、ある日から黒猫に負の感情を抱くようになる。ポーが描く主人公の黒猫に対する感情や態度の変化が、アメリカ白人が黒人に抱く一種のコンプレックス(複雑さ)の暗示なのだと私は思い至った。

    一般のアメリカ白人は、理想先行国家の一員たる国民として、人権尊重の思想を当然持つのが前提なので、黒人へも対等に接しなければという思想が念頭にあるはずだろう。しかし現実がそう単純でないのは事実のとおり。
    アメリカ白人の一部も「黒猫」の主人公も、卑下感情が無意識に広がり、ある日暴力や暴言という形で暴発してしまう。しかもその際、自分自身は良心の呵責を感じず、逆に黒人(黒猫)のほうに非があったのだと自己正当化をしようとする。この人間が抱える根源的な人権意識と差別感情との自家撞着を、これほど明晰に示した文学作品を今まで見たことがない。

    さらに、「黒猫」が文学作品として現実を超越しているのは、現実からさらに一歩進んで「弱い者を虐げたら必ず復讐される。暴力を仕掛けた者へ暴力が何倍にもなって襲いかかり、破滅がもたらされる」ところまでが描かれているという点。
    先述した“暴力の循環”に関してポーほど巧妙に、暴力というものが有する根源的な何かを文学作品として結実させた作家を私は他に知らない。ポーを文学の可能性や領域を拡大した先駆的作家だという意見も、あながち誇張と思えない。

    以上、都甲先生の話から、「黒猫」は表現のグロテスクさが目につくが、実は徹底的にリアリズムに裏打ちされていると気付かされ、改めてアメリカ文学の奥深さに、虜になりそう。

  • 作品集の前半と後半でまるで作者が
    違うようだった。
    「モルグ街の殺人」などは探偵もの、「黒猫」はミステリーというよりはホラーに近い。どの作品も各々の魅力があり、引き込まれる。

  • ミステリーの短編集を読むのは初でした。
    個人的に「モルグ街の殺人」がお気に入りです。

  • 猟奇的なのに論理的

  • これも読む前の印象とはだいぶ違った一冊。普通に推理ものかと思って読み始めてみたら、もっと怪奇もの?のような雰囲気だった。犯人はチンパンジー、とかはどうなの、わかる人いるの?期待するものがそもそも違ってるのかもしれないけど、私はもう少し、ヒントが散りばめられてて徐々に見えてくる、いや違うのか、どうなのか…という方が好きかなあと思いました。

  • モルグ街の殺人 は、やられた感半端なかった。個人的にはわかりやすいの好きなので、お前が犯人だ と 黒猫 と アシャー館の崩壊 が ゾッとするけど面白かった。

  • 調書のように延々と現場の情報を書き連ねたような話から、怪奇ムード漂う物語など、バラエティに富んだ短篇集。推理小説慣れしていないので、特にデュパンの話に代表される前者は集中力を要した。短篇集の中には両者をうまく折衷した話もあり、「黄金虫」は読みやすかった。

  • 『黄金虫』が楽しかった。暗号の件が面白くて、実際の羊皮紙を見てみたくなりました。
    『黒猫』は前に読んだことがありましたがやっぱり好き。
    デュパンが登場する作品は、語尾が「です」だったりで丁寧に喋るなぁと思っていたら、「結論に到達しちゃう」と急に可愛くなったり訳に違和感を持ちましたが、これはこれで今だからこそ感じられる味なのかも。
    初版発行当時に読めていたらどんな感覚だったんだろう。

  • 相変わらず今日も通常運転のポーさんでした。

    「マリーロジェ」・「黄金虫」・「スフィンクス」
    は初読。

    大学時代の専門の一つがポーというのはいい経験でした。
    効果の統一(unity of effect)は分かる部分もあったし、分からん部分もあったしです。。。
    翻訳で読んだのもあるしね。

    以知朗ちゃんの授業受けたい(・ω・)


    復習終わったしポーの映画観に行こう☆

  • ミステリーの元祖、「モルグ街の殺人」目当てに読みました。
    正直犯人に納得できませんが(笑)読んでおいて損はないでしょう。

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