良いおっぱい悪いおっぱい 完全版 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2010年8月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784122053557

みんなの感想まとめ

妊娠や出産の体験をユーモアと共に赤裸々に描いたエッセイ集は、著者自身の言葉で綴られる深い洞察と感情が魅力です。文筆家としての視点から、妊娠を「病気」と捉えつつも、その甘美な体験を楽しむべきだと語り、出...

感想・レビュー・書評

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  • 妊娠してから、文筆家の妊娠・出産にまつわるエッセイや体験談の本を何冊か読んだが、この本が飛び抜けて秀逸で素晴らしいと思った。

    自分がした体験を、ただつらつらと説明するのではなく、自分のことばで解釈を交えて表現する。ことばを生み出すってこういうことか!と納得しきりで、爽快で天晴の連続だった。
    若い、生きた生々しいことばで気取らずそのまま勢いよく飛び出してきたことばたちを、25年の時を経て、その後二回の妊娠出産産後を経験した著者が改めて振り返るパートも素晴らしい。
    「胎児はウンコである」という秀逸な表現は、ただ奇を衒っているのではなく実感と本気がにじみ出るが、それをさらに25年後の伊藤さんが追記する。

    誰もがSNSなどで自分のことを発信できる今、いろいろな人の分娩体験を擬似体験することはいくらでも可能になったが、文筆家が文筆家たる由縁はここにあり。こういう、自分にしかできない体験の記録を表現していきたいと心から思って感動した。この方の本をもっと読みたい。

    ―――――――――――――――――
    分娩とは、数年にいっぺんくらいのとびっきりのオーガズムに数年にいっぺんくらいのとびっきりの排便を足して二乗か三乗したようなものである、と。オーガズムよりも、排便よりも、もっとずっと強くて、積極的で、痛くて、そして究極の「非日常」です。(92)

    よく妊娠は病気じゃないんだから、と言われますが、今は妊婦はほとんど病気なのです。―――しかし、病気、この甘美な体験を楽しむべきです。癌やなにかとはちがって、確実に治る病気です。しかも一人一人の経緯がたいてい同じような経緯であり、つまり誰もがだんだん腹が膨れて、だれもが太ってきて、そのうちに十何時間かの激痛があって、腹の中身が出てしまえば、激痛はけろりと収まり、腹のふくれも一応なくなります。それでこの病気はおしまい。後に後遺症としての乳房の腫れが残りますが、さいわいそれを吸ってらくにしてくれるイキモノが自分のものになります。そして病人だから家事一切夫の助けが大っぴらに必要だし、他人も親切に扱ってくれるし、まるで幼児だったころの蝶よ花よがふたたび自分の手に戻ってきたみたいです。(199)

  • おぉ、これが、ここから育児エッセイが始まった!と言われる(#^.^#)「良いおっぱい 悪いおっぱい」なんですね。今、25年後の比呂美さんの加筆を入れての復刻です。.


    このオリジナル版、当時、巷で話題になっているのはもちろん知っていたし、自分の気が楽になるための育児書は読み漁っていた記憶もあるのだけど、

    (当時の愛読書は松田道雄「私は二歳」、懐かしいなぁ、お世話になった!! あとは「スポック博士の育児書」かな。これはいいとこ取りでその都度、ヘルプになりそうなところだけ読んでたような)

    たぶん、比呂美さんのエネルギーになぎ倒されちゃうじゃないかな、みたいな気がして手に取れなかった気がします。
    なにしろ、あのころは毎日がジェットコースター。二人の娘を無事に大きくするために、もういっぱいいっぱいだった・・・。なんであんなに余裕がなかったんだろう、と今になってみれば思えるけど、でも、あれはあれで私の精一杯だったんだよね。

    で、「良いおっぱい 悪いおっぱい」なのだけど、そっか、こういう展開のエッセイだったのね、と、うんうん、これはかなり世の新米ママの救いになっていたと思うよ!と納得。

    図解入りの(#^.^#)産後の体や、授乳やおむつ替えなどのハウツーものから、あたふたする母親の心持ちなど、一冊で二度美味しいみたいな構成に加えて、日々の「がさつ、ぐうたら、ずぼら」を提唱するというありがたさ。(#^.^#)
    我が子をもちろん可愛がってはいるのだけど、母性を無条件に備わったもととはみなさず、育児を面白がったり、時にイラつく自分をも見せてくれたり。

    そして、あのころ、何がなんでも母乳、みたいな風潮があった中、そして、比呂美さんも豊富におっぱいが出る体質でありながら、

    母乳の悪い点 として

    「母親のおっぱいファシズム」を挙げておられるところが、なんていうか男前(#^.^#)で気持ちいい。
    自分がおっぱいをやる育児を実践するだけではなく、あれこれの事情でおっぱい育児ができない人を育児失格者のようにみなすことがある・・・??という話には、これってあらゆることに通じる話だよね、と。

    そして、加筆されているのは、そんなご自分を25年後の比呂美さんが見て、なんて言葉が足りなかったんだろう、とか、思いやりがなかった、とかの思い。

    育児期間中の母親は、ご自分でも言われているようにかなり高揚してしまうものですから、それはいわゆる“若気のいたり”ということなんだけど、その加筆がある、ということで安心して手にとれた私のような遅れてきた読者もいたわけです。

    うん、面白かった。(#^.^#)
    渦中の私には案外楽しめなかったエッセイかもしれないなぁ、と感じつつ、(なんでだろ、あらゆる刺激物がダメ、という時代だったのかも)娘たちが就職や進学で家を離れた今、あはは・・とこの
    エッセイを読める幸せ(汗)が嬉しいです。

    • たまもひさん
      松田道雄「私は二歳」!! うーん、懐かしい!
      私はこれと、かの名著「育児の百科」を、ちょうど同じ頃出産した友人とともに「バイブル」と呼んで、...
      松田道雄「私は二歳」!! うーん、懐かしい!
      私はこれと、かの名著「育児の百科」を、ちょうど同じ頃出産した友人とともに「バイブル」と呼んで、本当に頼りにしていました。
      今も本棚の特等席に置いてあるこの本を見るたびに、もう無我夢中で悪戦苦闘していた頃を思い出します。
      「遅れてきた読者」、なかなか良い響きですねえ。
      2013/08/27
    • じゅんさん
      たまもひ様
      おぉ、たまもひさんも「私は二歳」仲間でしたか。
      (#^.^#) うんうん、私にもまさにバイブルでした。何もわからない新米ママには...
      たまもひ様
      おぉ、たまもひさんも「私は二歳」仲間でしたか。
      (#^.^#) うんうん、私にもまさにバイブルでした。何もわからない新米ママには余白のある落ち着いた語り口が嬉しかったんですね。
      育児書を読み物として読める年になったんだなぁ、それも悪くないなぁ、なんて思ってます。
      2013/08/27
  •  もともと1985(昭和60)年に単行本として出、一世を風靡したというエッセイに、2010(平成22年)年の再文庫化にあたって補筆したもの。
     なんと伊藤比呂美さんの本書は「育児エッセイ」なるジャンルを開拓したものだとか。それ以前には無かったのだろうか?
     ユーモアをたくさん交えながら、妊娠・育児(主に授乳期)について、なかばハウツー本のように解説したエッセイ集なのだが、子を妊娠していることから生じる母体の充溢、母乳をアカンボに飲ませながら自己の身体が限りなく高揚してゆく感じが、ほとんど神話めかした高らかな賛歌のようにイメージングされており、それはやはり男の私には隔絶したありがたい神秘なのである。
     ここではマタニティブルーのような事象は起こらず、伊藤さんのこの第1子(長女カノコさん)出産前後の様子は、妊娠し授乳する女性という性に対する、誇らかで絶対的な肯定に支えられており、私はただおそれ敬うしかない。
     しかしこのような女性性=身体性への謳歌こそは、伊藤比呂美さんの詩の世界からの当然の帰結ではなかったか。
     もちろん時代背景が今とは全然違うのではあるが、今の若い女性が読んでも、なかなかに得るものの多い本ではないか? 少なくとも、五十代の無用のジジイである私には、得るものが多かった。

  • イラストがとってもかわいい。伊藤さんの感性は、9割方私と違うが、ときどきどきっとするほど刺さるような感覚もある。

    ・痛いのは産婦ひとりです→身もふたもないけど、事実だなぁ。
    ・中期はまさに、母乳哺育の黄金期。新興宗教の教祖様的高揚。→言い得て妙。

  • 広く育児の共感をよぶ内容かと思いきや、かの子語の考察など、存分にヒロミワールドだった。これは並大抵の母では書けない内容だと思った。

  • 出産後間もなくに一気に読了。
    あぁ、今おっぱいファシズムだな、私。と実感しながら読む。現在進行形で子育て中なので、共感する部分が多く、巻末の産みます育てますはまさにそんな感じ。

  • 独特な感性と言葉遣いで、これまで読んだ妊娠・出産エッセイよりも人間を産み育てるということを生々しく感じました。お産のシーンは何故だかやっぱり涙が出てしまいました。恐怖や不安とはまた違って、産むという行為に対する畏怖、謎の高揚感が胸いっぱいに迫り上がってきて自然に涙が出てしまう。自分の時もそうなんだろうか。いずれにせよ、私もエッセイまでいかずとも振り返り用の日記は書けるくらい、アカンボという生き物を楽しみたい!合言葉!「がさつ、ぐうたら、ずぼら」これをきちっと押さえる。最終目標は「コドモを生かしておくこと」

  • あまり好きでない。
    内容が少し下品。
    さらには時代的にも古い。
    昔は一世を風靡したらしい…

  • あっけらかん。

  • 妊娠中に手に取ったときは、
    なんだか積読しちゃったんですが、
    生後5ヶ月の今一気に読了。

    エッセイってやっぱり共感できるかどうかが、
    面白いと感じるかどうかのポイントなんだと改めて実感。
    出産前後で、女性は明らかに違う生き物に進化すると思う。

    *授乳中期の新興宗教の教祖的高揚感
    *育児のやり方は時代によって猫の目の様にくるくる変わる
    *大事なのは「がさつ、ぐうたら、ずぼら」

    変に理想をいうわけでもなく、
    私はこうでしたよーっていうのを包み隠さず書き、
    そしてすでに子供は立派に成人済みという安心感。

    妊娠中に買って、産後読むと救われるよっていう、
    そういう本としてお勧めしたいです。

  • 妊娠本その2。赤裸々なヒロミ先生節に、またまた一気読み。ヒロミ先生じゃなければちょっとハンドル切ってしまいそうな表現も、御構いなしに突っ走ってくれることが、「母性愛」という突き抜けたものの正体を垣間見せてくれる感じでした。あーこっから「カノコ殺し」が生まれるんだー、って妙に納得した。そしてこのとんでもない世界に片足突っ込んでる自分が恐ろしくもあり、誇らしくもあり。ぜひ改訂前のも読みたい。

  • リズミカルで歯切れの良い文章がとても心地よく、伊藤比呂美さんのファンになった。よくもまあ、ここまで客観的に、自分と自分の身の回りの事象を観察/分析/文章に起こせるな…と感動した。それはもう自虐に近いくらい。が、このバランス感覚は同じ女性として素晴らしいと思う。見習いたい。

  • タイトルだけ知っていたのでなんとなく手に取った。出産エッセイのはしり、というのは後から知った。

    妊娠も出産も経験のない身としては「へえ!」という感じ。友人は妊娠中に「病気ってわけじゃないんだから」と繰り返していたけれど、やはり、妊娠は身体の大きな変化であることは間違いない。

    筆者の主観の部分は大きいみたいだから、これが全てとは言えない(だって中絶経験が複数回ある女性、は一般的ではないと思う)。それでも、一人の経験、としてはかなり赤裸々で分かりやすいので、読んで良かった。

    女性に生まれたからには、出産を経験してみたいなあと再認識した一冊(でも、いつになることやら…)。

  • ズバッとストレートなタイトルがいい。
    内容は30年も前なので、現在の出産とはだいぶ異なるであろうが、包み隠さない素直な意見が面白かった。
    出産も育児も、気張らず楽しむものなのね。

  •  セックスをして、子どもができて、生まれて、それから、という本です。
     25年前の作者を現在の作者が突っ込むという特典もございますが、それはさておき。

     「伊藤比呂美という詩人を知らない人が読める」というところが値打ちで、鷗外なら「鴎外だ」、林芙美子なら「林芙美子だ!」って身構えてしまうところを、伊藤比呂美に際してはそういう気持ちの垣根をドカーンととっぱらって向こうからやってくる。
     だから読む側もあんまり詩人が書いてんだ、ということを意識しないで、出産シーンの写真でオナニーしまくっただの、可能な限りはらんでいただのという文言をするする読むことが出来る。

     ここが、すごいところです。

     あたくし、昔から、ほとんどの自称詩人は役に立たぬと思っていますが、こうやって読む側に身構えさせない立ち居振る舞いというのは、ああまっこと伊藤比呂美は詩人ぜよ、と思うのです。思ってしまう。
     なおかつ、25年も古びないのも、すげいのです。

  • 80年代の育児エッセイを、子育てをほぼ終えた20数年後に改訂した作品。イラストも含め、10年代でもみずみずしい魅力があります。
    「おっぱいファシズム」とか、独創的な表現でテンポよく文章が進んでいきます。章末の育児書ミニレビューや現在からのコメントも、分かりやすくて面白い。

  • 『おなか ほっぺ おしり (完全版)』と対になった装丁が素敵で、思わず買ってしまいました。シンプルなラインで「おっぱい」と「おしり」を表して、色はクリスマスカラーというか、『ノルウェイの森』カラーというか、きれいな緑と赤。内容に関しては……えーと、妊娠・出産・育児はまったく人それぞれ、十人十色なわけで。「そうそう」と共感するところもあれば、「え~っ?」と言いたくなるところもあり。ともかく装丁が粋で。いやいや。

  • 題名はあまり関係なくて、筆者の妊娠出産子育てについて、
    ストレートでちゃんと現実的にとらえて、それで文章も面白く書いてあってとても笑いながら読めた。
    「ずぼら」の感じもとても共感が持てて、こうやって私も子育てしたいとも思う。
    妊娠や子育てについて「こうするべき」みたく理想論を声高に叫んで、不安をあおることってとても多いけど、そういう偏った人種があおってるんだ、ってことがこの本を読んでとてもよく分かった。
    20年以上前なのに、こうやって現実的に現実をとらえられて
    考えられる人もいたんだと思うと安心した。
    彼女のように噂や感情論の考えにまどわされず、自己責任で判断していこうと改めて思った。
    他の本も読んでみたい。

  • おもしろかった!!

    この人の妊娠・出産体験記のようなものなんだけど、
    へぇーーーってことばっかりで、
    産んでいないわたしからすると、目からうろこな話ばかり。

    なんか妊婦さんはほんと神秘的なのね!

    妊娠したらまた読みたい!!

  • さらっと流し読み。伊藤比呂美の独特さはたっぷりだけれど、西原理恵子の『毎日かあさん』みたいなブレーキをかけている感じが無きにしも非ず。育児雑誌に連載していたのをまとめたそうなので、まあそういうものかな、と。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。詩人、小説家。78年、詩集『草木の空』でデビュー、同年現代詩手帖
賞受賞。80年代の女性詩ブームをリードし、「育児エッセイ」分野も開拓。2018年から21年、早稲田大学教授。06年『河原荒草』で高見順賞、07年『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、08年紫式部文学賞、15年早稲田大学坪内逍遙大賞、19年種田山頭火賞、20年チカダ賞、21年『道行きや』で熊日文学賞を受賞。父の最後の三年半を綴った『父の生きる』ほか、『読み解き「般若心経」』『切腹考』『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』『森林通信 鷗外とベルリンに行く』『野犬の仔犬チトー』『対談集 ららら星のかなた』(谷川俊太郎氏との共著)など著書多数。

「2025年 『わたしのおとうさんのりゅう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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