ゼラニウム (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2010年9月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784122053656

みんなの感想まとめ

日常の中に潜む微妙な感情や人間関係を描いた短編集で、特に男女の距離感が巧みに表現されています。フランスを舞台にした物語が中心ですが、日本を背景にした作品もあり、異文化交流の一端を垣間見ることができます...

感想・レビュー・書評

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  • 特に最初の2編では、微妙な、というか微かな男女の距離感が描かれているが、表題作だけは男女の関係を感じさせるような話が全く現れず、この作品集の中で少し浮いている印象を受けた。最後の梟の館だけは、日本が舞台になっていて少しイメージしやすくホッとする。が、ラストの場面はなかなかにはっちゃけている。
    バラエティに富んでいて、上品な懐石料理のアラカルトを食べた感じ。白身魚の刺身のような旨味?

  • 2026.04.03〜

  • フランスを舞台にした短編集だ。(一部、日本が舞台で外国人と交流をする話の短編もある)
    著者自身をモデルにしているのかな、と思われる運転免許を持っていないどちらかというと内向的な雰囲気のフランス語を喋れる日本人男性が主人公として登場する。

    バイク事故で亡くなった女性を悼む水道橋の物語、古くエレベーターのないアパートメントの排水管トラブルの物語(表題作)、いずれも話としては起伏に乏しく地味なのだけれど、何か不思議な味わいがある。

  • 平凡が毎日の生活で紡ぎ出される時間のくりかえしだとしたら、平凡のなかには平凡でない瞬間が含まれる。それが人生なのかもしれない。一度として、それは過ぎ去ったら二度と取り戻すことのできない、せつない、なんと芳醇な時間なことよ。

  • 再読。

    異国で暮らす男が出逢う、様々な個性を持つ女性達。それぞれ色っぽく魅力的で、しかし仄暗く不穏な気配も漂う短編集。
    主人公はそれぞれ別かもしれないし、もしかしたら同一人物の様々な時期の話かもしれない。

    「薔薇のある墓地」
    とある出来事をきっかけに出逢った配達人仲間の女性の死。物理的にも触れ合い(と言ってもバイクに相乗りしただけ)、彼女の事情を多く知っている、親しい仲間であったと思っていたが実は…。死因に関わった可能性もあるのに、何もかも遠くなってしまった彼女を悼。物哀しさの強く残る短編。

    「さくらんぼのある家」
    親しい友人同士が結婚した。本来目出度い筈のその出来事には不穏な気配も漂っていて…。新郎新婦となる友人同士の依存的関係性と、それ故のトラブルを知りつつも新婦の暮らす家に2人きりでいる事を許容する互いの不気味さ、ラストの水が溢れる様は未来を示唆しているのか…。

    「砂の森」
    不穏さの漂う作品の多い中、今作は比較的明るめ。主人公が淡く想いを寄せる女性ベアトリスのエネルギッシュな姿もある故か。短編集の中では一番好き。

    「アメリカの晩餐」
    謎の多い顧客から通訳として仕事を頼まれた主人公。映画関係者との会食に伴う通訳と言いつつも仕事は少なく、その席にて出会った料理人として雇われていたフィリピン人女性に惹かれる。異国の地にて異文化、異性とのコミュニケーションに振り回される中で今作では控えめな料理人の女性に対し自ら歩み寄ろうと食事に誘う。
    それで何か進展する、というでもなく。共に食卓につき、淡い期待からの彼女の発した言葉への勘違いに思わず笑い合うだけ。ある意味堀江作品らしいかも

    「ゼラニウム」
    アパルトメントの水道管漏れから始まる、トイレに異物を流した犯人探し。女性の使う生理用品の残骸の、一種の生臭さ。「彼女」が放つ異様な光。窓辺に置かれた花鉢の中身が「ゼラニウム」というのが、あの青苦味のある香りを思うと何だか空恐ろしくもあり…「さくらんぼのある家」と並ぶ不穏な終わり方(彼女には悪いけども…)

    「梟の館」
    個人輸入していたフランス書籍をきっかけに出逢った、日本にてアウトロー的生活をする異国の女性旅行者達。チラリと見える違法行為(不法就労)の気配を感じ取りつつも、1人に本を貸し短期の交流があるも…。上手くいかず進展のないままであるが、最後はなんとも豪快なエンディング。

    堀江先生の描く人々のコケティッシュな魅力、フェティッシュとも言える着眼点と描写のバリエーションの多さに感嘆す

  • 読了日 2025/07/04


    なんかちょっと明るくない短編集。
    「薔薇のある墓地」
     橋の街で、事故で亡くなった友人とニケツした夜を思い出す
    「さくらんぼのある家」
     結婚しないほうがいいのにな…と思ってた夫婦の結婚式に出て、新婦とだけ一緒に車で帰る
    「砂の森」
     試験が終わったら連れていきたいところがあるの。で連れて行かれる
    「アメリカの晩餐」
     胡散臭い通訳の仕事で、フィリピン人の料理人と晩餐する
    「ゼラニウム」
     アパートの水道管からめっちゃ水漏れする
    「梟の館」
     椎名町の外国人ばかり住んでるアパート

    ・梟の館だけページ数が多くて、しんどいかもな…と思って読み始めたら池袋椎名町の話でめちゃめちゃスイスイ読めました。
    ・全部の話がどことなく明るくなくて、なんとなく官能的で、堀江敏幸にしては珍しいテイストかもしれません。
    ・たのしかった!

  • 1文が長くて読みにくいけど、情景描写は美しくて好きだった。

    水道橋の描写がとびきりお気に入り。

  • 軽やかな選択の連続を感じる

  • 一文が非常に長い文体は読むのが大変だった。

  • ゼラニウム 堀江敏幸
    女にまつわる6篇の短編集
    水道橋のある街で事故にあった友達に花を手向けに訪れる「薔薇のある墓地」
    梶井基次郎「桜の木の下には屍体が埋まっている!」をモチーフにした「さくらんぼのある家」
    が印象に残った。他「砂の森」「アメリカの晩餐」「ゼラニウム」「梟の館」
    個性的であったり、艶めかしく謎めいた女達と私の物語。

  • 異国を舞台にした短篇集。フランスで始まり最後は東京。語り手はどれも男の私。私の前に現れるのは個性的で何とも目の離せない女たち。異国の香り漂う情緒溢れる作品。

  • 堀江敏幸の短編集。本のタイトルと同名のゼラニウムという話は、アパートに住む老婦人と若者との軽妙なやりとりがおもしろい。個人的には背景が外国より日本の方が好きなんですけどね。

  • フランス舞台のお話は夢のよう、エッセイみたいな文章のひとだけれどこれは小説と思って読んでいたら最後「梟の館」で印象を翻して書き出しまるでエッセイだったのに驚くほどすがすがしい錯乱で幕

  • なんでもない日常。
    短編集。

  • アルクィユの水道橋

  • 久しぶりの堀江敏幸。景色の描写が好き。行ったことのないフランスの片田舎でさえもその地の空気を感じる。行き場のない喪失感、諦念感が日常の光景と交錯し光の屈折のようなきららかな表情を帯びる。

  • 片想いしている男の話ばっかり、なのか片想いばっかりしている男の話なのかわからないけど、いい。

  • うまい文章

  • 水道橋のある街で事故に遭った女ともだち。
    主人のいない部屋で晩餐に腕をふるう料理人。
    排水管の水漏れ解決に奮闘する下宿人の私―。
    異国に暮らした男と個性的で印象深い女たちの物語。
    ほのかな官能とユーモアを湛えた珠玉の短篇集。

    全六編の堀江敏幸さんの短編集。
    個人的には当たりです。
    こういう作品凄く好きです。

    普段の生活の延長線上にある様でないような。
    ある意味リアリティが強くてある意味物語と言うフィクションの世界でもあって、こういうのが味わえる作品はあまり出会っていないので読めて嬉しいです。

    六編中ほとんどがフランスが舞台に描かれています。
    メタファーが多くちりばめられていて、語り手の心的描写がなかなか面白い。コロコロ変わる様な思惑は自分でもしているかもしれない。

    薔薇のある墓地
    運び屋をやっている語り手が自分を仕事を頼んだばかりに同僚でもある女友達がバイク事故で無くなってしまう話。
    情景描写が美しい。途中で出てくるアルクィユの橋と言う物語が一層抒情的な世界に引きこんでくれているように思う。

    さくらんぼのある家
    倦怠期中の倦怠期の最中結婚をした友達夫婦の奥さんの家に泊りに行く話。
    ちょっとホラー要素がある。旦那が作ってたオブジェ。
    最後のシーンがなぜだかゾクゾクする。ぬめらかな美しい手が闇夜に照らされてものいわぬくらげになる。こういう比喩が素晴らしいと思った。

    砂の森
    知り合いのベアトリスの試験に付き添ってその間町をうろうろして、夕方ベアトリスが生活をしていた森に行く話。
    船上の本屋さんが出てくるのだけども、すっごく行ってみたい。
    この物語も比喩表現が素晴らしいと思う。

    アメリカの晩餐
    胡散臭い映像企画会社の会食の通訳みたいな仕事を引き受ける話。
    プロディーサーが持っている接待用のアパルトマンで会食が行われ、そこに居るアジア人の女料理人の料理が美味しいとかなんとか。
    会食は無事終わって、プロディーサーに呼び出されて再度そのアパルトマンへ行くのだけども約束をすっぽかされる。そこでその料理人と一緒に食事をしようと持ちかける。
    終盤のやりとりが最高に素敵。ああいう雰囲気ってロマンチシズムがあると思う。

    ゼラニウム
    今月ついていない語り手が、自宅アパートの配水管のつまりに奮闘する話。
    ホントはた迷惑な話だなぁと思う。
    同じアパートに住んでいる冗談のような台詞で一気にファンタジー要素が強くなる。

    梟の館
    道を歩いているとフランス人女性に話しかけられて、仲良くなって下宿している外国人ばかりの下宿のお話。
    同居人のイタリア人スチュワーデスでスタイルが抜群で馬面ってのは笑った。
    さらにキンカドー、バンザーイ、キンカドー、サイコーでさらに笑った。
    こんなファンキーな暮らししてたら飽きなそうだ。

    六編とも話の締め方が凄く好きです。
    六編の中でも、表題作のゼラニウムとアメリカの晩餐が好き。
    また時間が出来たらぜひ再読したい。

  • 本日読了。
    連作とも独立した物語ともつかぬ5編からなる短編集。

    フランスで暮らす日本人(と思われる)男と、彼(ら)に心を許しながらも結局他人であろうとする女たち。
    その微妙な関係性に「セ・ツ・ナ・イ」(文中より)が淡く香る。

    簡潔で美しい文章。
    文字の配列が描くフォルムにさえ色取りを感じる。
    こんな文章を書けたらいいな、と思う、好きなギタリストの様にギターを弾けたらと思うように。

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著者プロフィール

堀江 敏幸(ほりえ・としゆき):1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者、早稲田大学教授。95年に第一作『郊外へ』(白水社)を刊行。著書に『熊の敷石』(講談社文庫)、『雪沼とその周辺』『河岸忘日抄』『その姿の消し方』『おぱらばん』(新潮文庫)、『正弦曲線』『戸惑う窓』(中公文庫)、『オールドレンズの神のもとで』(文春文庫)などがある。

「2025年 『鶴 長谷川四郎傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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