完訳ロビンソン・クル-ソ- (中公文庫 テ 3-3)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (486ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053885

感想・レビュー・書評

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  • 欧系白人以外への差別心があまりにあまりなので、作品ではなく時代全体の問題とは言えちょっと読むのにしんどさがあった。
    詳細なディティールの凄さは『ペスト』でも驚いたけれど、それ以上。
    本当の体験記だと信じた人もいただろうなぁ。
    しかし懲りないねー!

  • 無人島に漂着したロビンソンは、持ち前の才覚と粘り強さを武器に島の生活を切り開いていく。原文の息遣いを伝える新訳とともに、文化史研究の第一人者が不朽の名作を世界史的経済から読み解く、大人のための翻訳・解説決定版。訳者解説「大西洋世界のロビンソン・クルーソー」

    1719年ダニエル・デフォーによって書かれた冒険小説。日本においても多数の翻訳書が出版されたのは周知の通り。翻訳者の気分や匙加減ひとつで原文にあるはずの文章が削除されたり、大げさに膨らませたりされているそうだ。この本は原文になるべく忠実に翻訳された本とある。本書の翻訳をされた増田氏は、子供用に書き直された本だけで原文に触れてない人がほとんどである。と巻末に書いている。まさに私もその一人で、ロビンソン・クルーソーがこんなに鬼畜(続編だとさらに増すようだ)だとは知らなかった。下巻目的なら岩波の方がいいのかな?

  • なんとなく、冒険物語だと思っていたけどそうではなく1人の人間の成長記録という感じだった。巻末の解説にあるように、「親の教えに背き神の恩寵を失った人間が再び神の恩寵を回復して救われる」物語だった。
    ロビンソンは安穏な生活を嫌い、家を飛び出し、1度は奴隷にまで身を落としながら商売で成功する。しかし、それでも満足することなくまた新たな挑戦をする。その結果、無人島に1人取り残され孤独な生活を強いられる。その生活の中で、神の教えの素晴らしさに気づき、これまでの自分の人生を顧みる。
    この辺がキリスト教やこの時代の宗教感がわからないのでピンとこなかったけど、無人島で様々な知恵を使い生活をしていく過程はとても楽しく読めた。

    フライデーとの出会い以降の展開は、自分を君主とするところなどは仕方がないとはいえ、価値観が違いすぎて読みにくかった。

  • 膨大な情報をもとにひとりの人間の記録を書き切った作品で,当時のイギリス市民の精神がよく反映されている。漂着後は持ち前の知識と信仰心で困難を越え,捕虜をうまく飼い慣らし,やがて戦いに勝利する姿は,当時の理想像にも見える。

    かつてスペインやポルトガルが握っていたカリブ海へ,イギリスは進出しようという時代。海の向こうに夢見た人々に,本作はうまく適合したのだろう。

    1719年に59歳で『ロビンソン・クルーソー』を出版したデフォーは,もとはジャーナリストとして諷刺詩を数多く書き,トーリ党の幹部ハーレーの下で週刊誌『レヴュー』を発行し実質的な政府の広報官として活動していた。

    全体的に,予定調和ではあるが面白いと思った作品である。

  • ロビンソン・クルーソーと言えば、誰もが子ども時代に縮約版で親しむ作品だが、その実は文庫で400ページを越える長編小説なのであった。青年時代に親に反抗して家を出て以来、海賊に捕われて奴隷となり、脱出してブラジルに渡って事業で成功し、さらに貿易船の航海中に嵐によって無人島辿りついて、ようやく誰もが知っているサバイバル・ストーリーが始まる。

    直面した苦難や無いものを嘆くのではなく与えられているものに感謝すること、足るを知ること、現状の暗い面よりも現に楽しんでいることに注目することなど、21世紀の自己啓発書にでも書いてありそうな知見を孤独な生活の中で獲得していく様と、その後の波瀾万丈を描く。子ども時代に読んで終わりにするにはもったいない大傑作。

  • めちゃくちゃ好き。
    自らの身を持って、中庸が大事なんだなと学ぶ体験。
    無人島でのたくましいサバイバル生活には、少しだけ憧れる。

    自分も何かをめんどくさいと思ったり、辛い時があったときに、ロビンソン・クルーソーを思い出して奮起しよう。

  • 自分がこんな孤島に取り残されたら?話す人がいない状況に長期間置かれたら?など想像すると少しゾッとするぐらい上手く話が描かれていました。

    どんな環境でも打開策を見出そうとするロビンソンの姿が人間臭くもあり、とても引き込まれました。場面によっては想像力が追いつかなかったです。汗

  •  
    子供の時に読んだことがあるくらいだが、
    当時もロビンソンの無人島生活を
    わくわくしながら読んだ。

    特に自分の住処を作るあたりが子供心に
    非常に面白く読んでいた覚えがある。

    今回この完訳本を読んでみたが、
    当時読んでいた少年向けのものが
    どれだけ省略されていたのかがよくわかる。

    特に大きく違うのは、
    ロビンソンの宗教観というものが、
    要所で記述されていることだろう。
    確かに少年向けにする際にはこの部分を省くよなぁとは思う。

    また、序盤が大きく付加されており、
    こんな話だったっけと戸惑う。
    一度奴隷にされた箇所とか無かったような記憶がある。

    また、解説を読み、当時の世俗と合わせて
    そういう見方があるのかと。
    もし、大人になってから読み直すならこの本はお薦め。

  • ようやく読んだ古典中の古典。アダム・スミスからマルクス、大塚久雄まで古今の経済学者が引用するだけあって経済学的な要素にあふれている。遭難前の行動は商取引・国際貿易の典型例だし、遭難後の生活は生産様式の発展そのもの。そして主人公ロビンソン・クルーソーの行動原理がまさに合理的経済人を示している。環境の分析から計画、実行、新たな事象の発生とそれに応じた計画の修正。合理性の限りを尽くして身体の保護、富の蓄積に邁進する。経済学の文脈で引用されるよもむべなるかな(良いことと悪いこととを貸方・借方で列挙するあたりは半分冗談にしか思えない)。
    それからなんと言ってもキリスト教信仰という観点からもこれはすごく興味深い。というより宗教小説としてこそこの作品の面白さはある。ロビンソン・クルーソーが合理的な生活を営む根源的な理由こそキリスト教への信仰にある。ここにおいて合理性と進行とは完全に一致し、それらが彼の生活に秩序をもたらす。フライデーという異教の撹乱要素が現れても、やはりそれは信仰=合理性=秩序の中に回収されるべき対象にすぎない。ウェーバーはクルーソーをプロテスタンティズムの特性を示す例として引き合いに出すが、それはプロテスタントに限った話ではない。信仰と合理性と合致はあらゆる信仰に生じる事態であるし、転倒するなら信仰が担保するもののみが合理的であると言える。ともすれば信仰は不合理なものとみなされがちではあるものの、信仰と合理性とが排他的か否かは決して自明ではない。信仰と合理性との関係を問い直すにも大きな示唆を与えてくれる。

  • ダニエル デフォーは英国のスパイで、取材旅行という隠れ蓑で世界各国を移動したのだとか。スパイなのにこんな本が書けるなんてすごいな~。子供の時に読んだ物とはずいぶん印象が違います。今度は大人向けのトムソーヤでも読んでみるか。

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著者プロフィール

1660‐1731。イギリス、ロンドンの商人の子として生まれる。著作家、ジャーナリスト。代表作『ペスト』、『ロビンソン・クルーソー』。

「2020年 『新訳ペスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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