聖者の宇宙 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2010年11月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784122054035

みんなの感想まとめ

キリスト教と欧米の生活が実利的に融合した様子を描きながら、聖者信仰の深い根の部分に迫る内容が魅力的です。特に、聖者が異教の神々の役割を引き継いでいるという視点は、従来の宗教観を覆す驚きがあります。信仰...

感想・レビュー・書評

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  • キリスト教と欧米の生活感がかなり実利的に融合されていることに感心しつつ、逆に根の深さというものを考えざるを得なかった。また、キリスト教が多神教的な側面を持つという見解には驚かされた。難を言えば、似たような名前がたくさん登場してすぐに混乱すること。後半は流し読みになってしまった。

  • 新書文庫

  • 巻末に50頁にも及ぶ「聖者カレンダー」を併載、短い解説が付された夥しい数の聖者の名が紹介されている。

    「聖者システム-聖者のコミュニオン」
    多民族多宗教のひしめくヨーロッパに、これほど完全な形でキリスト教という異教が浸透していったのは驚くべきことだが、その教会のテクニックの鍵となったのが聖者システムだ。

    光というものは、オブジェとの出会いがないと見えない。何かを照らすことで光が見えるのだ。つまりオブジェは光の存在証明というわけである。
    光は神であり、聖者たちがオブジェにあたる。聖者たちは、神と神の恩寵という光の存在証明として生産されるのである。聖者たちを礼拝することは、彼らを照らしている神を礼拝することになる。
    では、神の存在証明たる聖者は、無数に必要なのか。その根拠としては、「ヨハネ黙示録」の第7章にある、「あらゆる国民、種族、民族、言葉の違う民のうちから、数え切れないほど大勢の群衆が」白い衣をまとって神を称えるという部分が挙げられる。彼らは、イスラエルの子らのすべての部族のうち神に選ばれた14万4千人の後に続いてやってきたのである。
    言い換えると、ユダヤ人を超えて、あらゆる民族の者から聖者を送り出せるという大きな可能性を秘めたこの一句によって、キリスト教は世界宗教の道を歩き出すことができたのである。

    聖者システム-そのシンクロニシティは動的なメカニクス、ダイナミクスの創造である。
    その起源は迫害にあった初期キリスト教の殉教者を記念したことに始まる。名前が記録されている者だけでも1万人以上の殉教聖者がいる。墓が巡礼の対象になって、奇蹟譚が始まったのも殉教者からだ。
    5世紀からはローカルなレベルを超えてユニヴァーサル教会の聖者カレンダーが成立し始めた。
    聖者はカレンダーとともに毎年必ず巡ってくる。
    聖者はカレンダーになって人々の「時」を彩っているが、同時に、土地の名にもなって人々の生きる足許にもぴたりと貼りついてきた。

    列福や列聖のたびに要請される新しい奇蹟という因果関係を超えた出来事の導入は、失われた魔術を絶えず生成することにつながる。
    レヴィ=ブリュールが「未開人の心性」として定義した前論理的で魔術的なメンタリティを操作し続けることが可能なのだ。
    このメンタリティーに応えることのできない宗教はやがて硬化し脆弱化する。

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著者プロフィール

比較文化史家・バロック音楽奏者。東京大学大学院比較文学比較文化修士課程修了。同博士課程、パリ大学比較文学博士課程を経て、高等研究所でカトリック史、エゾテリズム史を修める。フランス在住。著書に『ヨーロッパの死者の書』『キリスト教の真実』『女のキリスト教史』(以上、ちくま新書)、『ジャンヌ・ダルク』(講談社学術文庫)、『ローマ法王』(角川ソフィア文庫)他多数。著者のホームページhttp://www.setukotakeshita.com/

「2021年 『疫病の精神史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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