なにたべた?: 伊藤比呂美+枝元なほみ往復書簡 (中公文庫 い 110-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054318

作品紹介・あらすじ

二十年来、友情をわかちあってきた二人は四十を過ぎ、家庭も恋愛も仕事も全力投球中。詩人は二つの家庭をかかえ、料理研究家は二人の男のあいだで揺れながら、どこへいっても料理をつくり、FAXで知らせあう。大人の女の人生がつまった、おいしい往復書簡。便利なレシピ・スパイス辞典も必見。

感想・レビュー・書評

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  • 毎日つくって食べて子育てして、男のことで悩んで、それなのに仕事をもってひとり立ちしている女性たちの日常を、親友へのFAX通信という形で見せている。完全ふだん使いの言葉なので、覗き見している感覚になる。あゝこういう「生活」もあるのか。

    お2人のことは、よく知らないということがわかった。伊藤比呂美は、池澤夏樹編集「日本文学全集」の「日本霊異記」現代語訳を読んだことがある。奔放な性にまみれた説話集を見事に取り出していた。枝元なほみは、毎回買っている「ビッグイシュー」で悩み相談を受けながらオリジナル料理も提案するという連載を持っていて、明るいお母さんという印象を持っていた(←彼女は独身ということは今回初めて知った)。印象じゃ女性はわからないということがわかった。

    「カンボジア、行きたいな、でも行けないな。ごめんね。あんなにその気になったのにさ。
    今おなかすいて(うそだ、すいてなかった。口さびしかっただけ)すりゴマ食べた。おいしかった。(これはほんと)」(ひろみ73p)

    伊藤比呂美の本音が続いているように見えるけど、これも彼女の一面だろう。そうでないと、九州でAさんと別れたあと、カリフォルニアでBさんと暮らしている事の説明がつかない。枝元なほみも、2人の男と仕事の間で右往左往しているようなんだけど、ずっと東京で料理を作り続けていて、行間から匂ってくるのは、やはり自立した女性でした。

    かっこよくないけど、かっこいい。

    あ、この本は「出会い系サイトで70人と実際に出会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を読んで唯一読んでみたいと思った本でした。花田菜々子さんが、コーチングでお世話になったゆかりさんにお勧めした本。「ゆかりさんに感じた強さややさしさがこの本と似ている。大人になっても日々悩んだり苦しんだりする。けれども、ふたりで一緒に笑ったり泣いたりすることで、生きるっていいな、と思わせてくれる。」とコメントしている。働く女性は、美しい、ってことかな。

    以下、つくってみたいと思った伊藤比呂美さんのレシピを紹介。

    ・チキンの照り煮
    鳥モモの皮を裏にして弱火でじっくり焼いて脂を出す。脂は捨てて、ざっとフライパンを洗って、改めてならべて、みりん、酒、醤油、八角、生姜、蓋をして煮込む。最後に蓋を取って、強火にして、照りかえらせる。
    失敗をしたと思っても、あとから「いいにおい」かがして「いい色」になる。八角を入れるとぷんとにおいに乗って、日常から足を(ほんの半歩ですけど)踏み外せる気がします。生姜だけだと、馴染みすぎてそうはいかない。
    ←この辺りの表現が詩人たる所以だろう。

  • 190ページまで頑張って読んだけど、ここで読むのをやめた。
    二人とも知らない人だし何だか立派な人達なのかもしれないけれど、
    文体というか、言葉の書き方や内容も全て、読んでいて気持ち悪くなったから自然にそこに書いてある食べ物に興味が持てなかった。
    そもそもパーソナルなやり取りだからそこは自由だと思うけど、食べ物、男(という呼び方)、生活への向き合い方が全て身勝手でとても下品に思えた。

  • 伊藤比呂美と枝元なほみが、食べたもの、オトコの愚痴から、時に心情の吐露も含め、飾らない日常をFAXでシェアした往復書簡。
    長年にわたり、こういう素のやり取りができる友だちがいることが羨ましい。
    一方で、二人の素顔が、これまで勝手に抱いていたイメージと違っていて、人を印象だけで判断してはいけないと思った。

  • 食べると生きるってやっぱりかなり近しい概念だよねって再確認できる本。生々しい悩みもいろいろ書かれてるけど、最後は自分も食べて、生きよう、ってなる。

  • このふたりが20年来の親友だったなんて知らなかった。
    インターネットがまだ普及する前、Faxでの往復書簡。
    ふたりはまだまだ若くてかのこもサラ子も子どもでほなみさんは男性ふたりの間で揺れ動いたりとその辺の日常も報告しつつ料理のはなしも沢山。読み応えあり。

  • 最高にかっこいいふたり。の、焦がしたり生煮えだったりをくりかえしつつ進んでいく何でもない日常のやりとり。

    今日はなんか作ろうかな。クックパッドをまねするんじゃなくて、まずくてもいいから、自分の感覚だけにまかせて。

  • 詩人と料理研究家、ふたりの往復書簡。ファックスでやりとり。ファックス(原文)は手書きだから、所々で解読できなかった部分もあって、抜けていた。そこがちょっと生々しく思う。
    ふたりの砕けた文章が、ふたりの仲の良さを感じさせる。恋、家庭、仕事のこと。誰しもが悩むことを書いているからこそ、その人の人となりがわかるんだろう。
    夜中に読んでいると、おなかが減ってくる。それくらいに基本的には料理のことばかり。スパイス系だったり、和食だったり。ちょっとしたレシピも載ってるし、試してみるのもいいかも。

  • 『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』で紹介されていて、興味を引かれて読んだ。
    まず、双方ともこれだけの文字を日常的に手書きで書いたのかという驚きがあった。学生の頃は、手紙を書くのももらうのも好きで、話しても話しても話し足りない、みたいな気持ちがあったことを懐かしく思い出した。
    細かい説明がないため二人のFAXでそれぞれの状況をなんとなく察するくらいの感じだが、お互いに大人になってもこの熱量で「聞いてほしい!」と思うような友達がいることがうらやましい。
    そして二人とも、忙しくても悩んでてもごはんはちゃんと作るんだなぁ…えらい。生きることは、食べることだな、と思う。
    お互いに楽しいことも、もやもやするようなこともある日常があって、ごはんを作って食べて、友達に手紙を書く。ここ数年よく見るような深夜ドラマを地で行く感じ。元々交わしていたFAXを本にまとめたのか、本にまとめるという企画ありきで始まったものなのか、そのあたりも気になる。

  • 花田菜々子さんいわく
    この本は、詩人と料理研究家の40歳過ぎの女性2人が、仕事に、家庭に、子育てに、恋愛に悩みながら、静かな真夜中の台所でファックスに思いをしたため、送り合ったものの記録なのですが、その内容が本当に素敵。20歳くらいに読んだときは「大人になってもこんなに日々悩んだり苦しんだりするのか」と不思議だったけれど、時が経ち、今では、悩みのない大人より、こんな風に悩みながら自分の人生に向き合い、女友達といっしょに笑ったり泣いたり、人生を思いっきり生きられることの方が素敵なのだと思えるようになった。

  • 面白くてあっという間に読み終えた。
    時代もあるのだろうけれども、
    やり取りが電話でもメールでも手紙でもなくFAX。
    私も誰かとこんなやり取りしたい。

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著者プロフィール

伊藤比呂美
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得る。米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続け、介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)『犬心』『閉経記』『父の生きる』、お経の現代語訳に取り組んだ『読み解き「般若心経」』『たどたどしく声に出して読む歎異抄』を刊行。2018年より熊本に拠点を移す。その他の著書に『切腹考』『たそがれてゆく子さん』『道行きや』などがある。

「2022年 『伊藤ふきげん製作所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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