地震雑感/津浪と人間 - 寺田寅彦随筆選集 (中公文庫 て 8-1)

著者 :
制作 : 千葉 俊二  細川 光洋 
  • 中央公論新社
3.67
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本棚登録 : 91
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122055117

作品紹介・あらすじ

「天災は忘れた頃にやって来る」の名言で有名な寺田寅彦の、地震と津浪に関連する文章を集めた。地震国難の地にあって真の国防とは何かを訴える色あせぬ警告の書。寺田寅彦が漱石門下の友人小宮豊隆に送った「震災絵はがき」のカラー図版十葉を収める。

感想・レビュー・書評

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  • サイエンス
    文学
    東日本大震災

  • 寺田寅彦の随筆の中から、地震や津波、防災や心構えに関するものを集めた1冊。
    並んでいる順番もよく、一気に読んだ。
    中学校の読み聞かせで使ったら、東日本大震災の後に書かれた文章と間違われるかも、などと想像。

  • 【本の内容】
    「天災は忘れた頃にやって来る」の名言で有名な寺田寅彦の、地震と津浪に関連する文章を集めた。

    地震国難の地にあって真の国防とは何かを訴える色あせぬ警告の書。

    寺田寅彦が漱石門下の友人小宮豊隆に送った「震災絵はがき」のカラー図版十葉を収める。

    [ 目次 ]
    断水の日
    事変の記憶
    石油ランプ
    地震雑感
    流言蜚語
    時事雑感
    津浪と人間
    天災と国防
    災難雑考
    地震の予報はできるか
    大正十二年九月一日の地震について
    地震に伴う光の現象
    震災日記より
    小宮豊隆宛書簡(大正十二年九月-十一月)
    無題

    [ POP ]
    寺田寅彦(1878~1935)が漱石門下の友人、小宮豊隆に送った関東大震災の「絵はがき」のカラー図版十葉を収めた本書を読み、あの言葉を思い出す。

    「天災は忘れた頃にやって来る」。

    寅彦の名言は、残念ながら当たってしまった。

    〈文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す〉という予言も、原発事故で実証されてしまった。

    〈咽喉もと過ぎれば熱さを忘れ〉〈文明という空虚な名をたのんで……経験を馬鹿にし〉〈愚を繰り返している〉。

    進歩したのは“物質”だけで、人間は少しも利口になっていない――。

    「忘れる」という、前向きではあるが浅はかでもある〈人間界の自然の法則〉を明察する寅彦の見方は、いよいよ今日的だ。

    いつまでも覚えていることが出来ない相談だとすれば、少しでも災害を忘れぬよう努力し、教育を徹底させるほかない。

    これも寅彦の言だ。

    『吾輩は猫である』の理学者、水島寒月のモデルになった物理学者の存在を忘れてはなるまい。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 物理学者にして文学者でもある寺田寅彦。

    彼の地震(あるいは災害全般)に対する鋭い洞察は、いつの時代でも通用する。

    自然災害がかならず起こる日本。
    寺田寅彦の警句は、東日本大震災後の日本においても、伝わるものがある。

    しかし、時の為政者は、その警句をわすれ、あるいは、また、その時代を生きる人間もわすれがちである。

    名文集。

  • 関東大震災の頃から進歩していないかと思うと切なくなる

  • 「例えば一週間に一度大地震が来るのが日常だとしたらどんな家に住みますか?」

    「天災は忘れた頃にやってくる」の名言で知られた物理学者・寺田寅彦の地震・津波、その他天災に関する文章を集めた随筆集。講談社学術文庫にも『天災と国防』と題した同趣旨で編集されたものがあり、どちらを購入するか迷ったが、この中公文庫版には、寅彦がドイツに居た友人小宮豊隆宛てに関東大震災の様子を報告した書簡と被災した東京の写真絵葉書が収録されている。その文章とともに当時の緊迫感を再現する装丁となっていて、購入の決定打となった。

    地震が怖いのはなぜだろうと改めて考えてみる。そのときあらゆる場所で命が危険にさらされるのはいうまでもない。ライフラインはどうだろう。電気、ガス、水道。寺田寅彦はそれら一つ一つがまだ無かった時代に起きる地震に思いをはせて、究極のところ洞窟や竪穴に住んでいたような時代なら仮にどのような大きな地震が起こったとしても、そこにどれほどの危険や被害があったものかと問う。

    寺田寅彦のこの問いは、地震が揺るがすのは大地ではなく文明によって生み出された快適・便利・安全といったものであり、それらを得た代償として、私たちは多くのリスクを抱えたのだということを思い出させ、同時にそのリスクを負う覚悟を問うものでもある。

    地震は必ず起こるもの。だがそのスパンがあまりに長くしかもそれがいつ来るかわからないから油断してしまう。忘れてしまう。極論ではあるが確かに、例えば一週間に一度ある程度の大きさの地震が起こるのが日常だとしたら、今の日本のライフスタイルはおそらく国家レベルで劇的に変わるだろう。

    首都機能を複数に分散させるのは当たり前。かりにどこかが壊滅的に被災しても、指揮系統は速やかにそれ以外の場所で機能させられる。個人の住居でも、棚や洋服ダンスは壁面に作りつけが常識になり、窓にはガラスに変わる新素材を。アクリルや樹脂なんかで窓ガラスに変わるもの作れないのかなあ。大きな揺れがきたら、スイッチ一つでたとえ5センチでも良い、家全体が浮上するシステムがあれば揺れによる家具や屋根の下敷きになることも避けられるのではないだろうか。(確かそういう家はすでに実際にあって、東日本大震災の時も住んでいる人は揺れをほとんど感じなかったというような報道を見た記憶がある)

    地震大国日本に在っては意識を変えて、それを降る雨のように、もっと言えば明けては暮れる日のように日常の自然現象と捉え備えよ、と提言する。「天災は忘れられたる頃来る」―彼の名言の真意はこのあたりにあると見えた。

  • 90年前に指摘されている事が、いまでも有効だという事は、人間は進歩していないという意味なのだろうか。
    書かれている事が、あまりに現代でもそのまま通じることに驚きを超えて恐怖すら感じる。
    人は災害を忘れるもの、歴史から学ばないものという事実は、この90年の間決して変わらなかったということか。
    この本は、とにかく必読の一冊。

  •  「地震に伴う光の現象」だけ読む。 今回の地震ではそのような記事は見ていない。 電離層の変化があった、、という記事を見かけた。 「天災は忘れたころにやってくる」は寅彦の言葉。。。というのをはじめて知る。

  • 3.11から急いで企画して出来上がったのが6、7月という感じでしょうか。講談社学術文庫、角川文庫と似たような本が出ています。警鐘を鳴らす、という意味では遅すぎる気がする。鳴らないよりは増しであるが…。

  • 「天災は忘れたころにやってくる」という有名な言葉を残した寺田寅彦が関東大震災と昭和三陸大津波について書き残したエッセイをまとめてます。もう一から十までもっともでうなずけることばっかりの示唆に富んだ文章です。科学者だしね。今こそ広く読まれるべきだと思います。おすすめ。

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著者プロフィール

1878–1935
東京に生まれ、高知県にて育つ。
東京帝国大学物理学科卒業。同大学教授を務め、理化学研究所の研究員としても活躍する。
「どんぐり」に登場する夏子と1897年に結婚。
物理学の研究者でありながら、随筆や俳句に秀でた文学者でもあり、「枯れ菊の影」「ラジオ雑感」など多くの名筆を残している。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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