高度成長 (中公文庫 よ 46-1)

著者 :
  • 中央公論新社
4.20
  • (21)
  • (18)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 224
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122056336

作品紹介・あらすじ

高度成長は、わずかの期間に日本という国の姿を根本から変えた。それは、一七年間、合わせて六〇〇〇日に及ぶ。洗濯機、冷蔵庫、カラーテレビ…。現代生活の必需品は、すべてがこの時代に生まれたが、言うまでもなく、「甘い果実」だけがもたらされたわけではない。現代日本の原点に、歴史と経済の両面からあらためて迫る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 現代っぽい生活は高度成長の後から始まったと教えてくれる本。戦後すぐまでの一般人の生活は、自分の感覚では日本昔ばなしに出てくる人たちの生活そのままだった。

  • 東2法経図・6F開架:332.107A/Y89k//K

  • 日本経済新聞8月15日掲載
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99397345

  • 高度経済成長の時代を、統計データともとに史実をおりまぜながら、振り返る良書。高度経済成長とはなんだったのかを理解したい方におすすめ。

  • 1章は高度成長直前の日本について、2章から4章までは高度成長による人々の生活、産業、人口移動の変化を統計データをもとに丁寧に説明している。5章で高度成長のメカニズムをまとめている。6章は高度成長時の政治動向、労働争議について。経済が豊かになるにつれて資本家vs労働者という構図は意味を持たなくなり、経済。しかし左派は経済闘争のシナリオを描かず(描けず)政治闘争に明け暮れ瓦解していく。7章は経済成長の光と影。寿命が延びた一方で公害などの負の側面について語られる。

  • 332.107||Yo

  • -

  • 2016.4.14

  • リアリティに溢れる形で高度成長を描き出した作品。
    個人的に印象的だったのは
    ・1950年の日本は貧しかった→20年間で驚異的な変化を遂げる。
    ・高度成長を終わらせた要因はオイルショックではなく、需要が一段落した事。

    かな。

  • 生まれてから18歳までの期間に重なる。
    6000日の出来事なのに、薄い本で読みやすい。
    年のせいとおもうが、読む力が落ち、すらーっと頭にはいってこず、読み通すのに苦労した。
    巻末の年表が良い。

  • 我が国の社会構造を、かつてない短期間で変えてしまった高度成長についての、マクロな経済構造からの分析を述べた本。
    たかだか15年の間に、江戸や明治の延長にあった農業国家をサラリーマン中心の国家に変えてしまったのは、まぎれもない経済成長。そのキックオフは大戦後のマイナス状況に与えられた朝鮮戦争特需であり、成長をドライブしたのは地方農村から都市への人口移動と世帯の分割増殖であったとの分析。
    印象的なのは、「もはや戦後ではない」の名言で記憶される後藤誉之介の経済白書結語。じっくり読んでみると、ロジックと格調と真摯なまなざしを感じる名文だ。

  • 本書中に「高度成長期の6000日に日本社会に生じた変化によって現在の日本が40年以上もたった今でも規定されている」という趣旨の箇所がある。
    正直、高度経済成長との接点を全く持たなかった私からすると、
    高度成長というものは、日本史の教科書に載っているような「歴史」である。
    しかし、「歴史」とはいいながら、今の自分、周囲の環境に少ないながらも影響を与えているのが高度成長という言い方もできる。

    今までは前者の考えしか持ちあわせておらず、高度成長を過去の点としてでしか認識できていなかったが、
    本書には裏付けとなるデータと併せてそのデータが示す実際の社会状況が記載されており、私のように「歴史」として高度成長を捉えていた人にも的確に”What is 高度成長”を示した良書であると思う。

    点と点をつなぐことが歴史という学問の存在意義であるならば、
    高度成長と現代の日本とをつなぐ最大の貢献をしたのが本書であると思う。

  • 【一変】日本史上、いや、世界史上にも例を見ない高度成長を成し遂げ、わずか20年程の間に国のかたちから国民の生活までをも一変させた高度経済成長。ある人にとっては郷愁の対象であり、ある人にとっては自然や環境の破壊と映るこの現象が与えた影響を、マクロレベルのみならず、国民一人ひとり単位のミクロレベルに至るまで丁寧に記述した作品です。著者は日本のケインズ経済学の泰斗である吉川洋。


    生まれた頃からバブル崩壊→低成長時代に突入している自分からしてみれば、高度成長の「空気」までをも感じられる本著は非常に勉強になりました。高度成長の与えた影響の隅から隅までを把握しきった著者だからできる業なのだと思うのですが、わかりやすさと理解のための記述の深さが併さった見事な作品だと思います。平易な言葉で当時の人々の生活が立ち上ってくるかのような記述もgood。


    著者自身、高度成長に対して複雑な感情を抱いていることは下記のとおりですが、やはりそのもたらしたメリット、そして時代の輝きに対する好印象が拭えないという心情は、当時を実体験した人たちにもある程度共有されるものなのではないでしょうか。「高度成長」という単語に人々がどのような夢や物語を託したのか、そして、そんな夢や物語を託すことのできるキーワードが現代で見つけることができるのだろうかと自問しながらの読書になりました。

    〜私自身、経済成長に対してアンビヴァラントであることは、この本の「おわりに――経済成長とは何だろうか」に書いたとおりだ。しかし、少年時代にこの時代を経験した私は、いま「高度成長」に大きな花束を贈りたい気持ちである。〜

    表紙の東京タワーがまた堂々としてるじゃないですか☆5つ

  • 掲載されている図表が非常に充実しています。その中でも、中学から集団就職した人たちのその後のライフコースを追った雑誌記事等、本文と同じくらい興味深いものも多いです。また、恥ずかしながら、「もはや戦後ではない」が使われた文脈をこの本で初めて知りました。

  • 高度成長期をミクロとマクロの両面から捉えて書かれたもの。参考文献にある下村治関連の本も読みたくなった。

  • 高度成長がどのように起こったか?ということよりも,高度成長によって日本はどのように変わったか?ということにフォーカスされた本.高度成長の後に生まれた私のような人間にとっては当然である今の日本の姿が,ほんのこの50年ほどのものだということを気付せてくれた.もっと日本中(特に日本海側)を旅してみたいという気持ちになった.

  • 1950年代の半ばから1970年代の初頭まで、日本は年率で平均10%程度という経済成長を経験した。
    単純な計算をしてみる。初年度のGDPを100とし、その後15年間10%の経済成長が続いたらどうなるのか、という計算(初年度100,翌年110,翌々年121….)をしてみると、15年後にはGDPは約420となる。経済規模が4倍になる訳だ。1990年代初めのバブルの崩壊以降、約20年間、日本は経済規模でほとんど成長していない、ということを考えると、15年間で4倍ということのインパクトが計れると思う。
    良いことばかりではなかった。経済成長の影で失ったものがある。例えば公害問題など、と筆者は書いている。
    筆者が書きたかったのは、この未曾有の経済成長の期間中の「記録」であり、それを「評価」することではないようだ。

    2022.10.25再読
    最初に読んだ時には、あまり印象に残らなかったのであろう、高度成長の構造・要因に関する、筆者のマクロ経済学的分析が、今回は印象に残った。

  • 日本の高度成長時代(1955~70年頃)を描いた本で、直感的におもしろそうと思ったが正解だった。統計データが充実していていて、数字で押さえられるので勉強になる。さすが経済学者の本。 
    さらに、文章と写真による当時の生活の描写がすばらしかった。高度成長前の渋谷駅前がこんなとは。ミシンが家にきてお母さんのうれしそうなこと。 

    高度成長後生まれなのに、なぜか懐かしくなる。子供の頃を思い出す。「高度成長は進歩だったのか」という筆者の問いには一瞬考え込んでしまう。が、やはりここまで豊かになりすぎないと、次のステップ(持続可能な社会)に進めないだろうから進歩だと思う。 

    ただ、高度成長への道が開けたのは、占領軍が日本を軽工業国にしようとしていたところ冷戦で政策変更されたから、というのは忘れないようにしたい。日本はラッキーだった。

  •  単行本の時に気がついて、もっと早く読んでおけばよかった、というのが最初の読後感。

     タイトルが意味深だというのが、次に心に生まれた感想。

     はっきりいうと、本書は1955年から1973年の日本の高度成長期「だけ」を論じたものではない。もちろんその時期が中心ではあるのだけれど、その前後についても丁寧に論じている。それだけでなはい。中国・アメリカといった外国まで含めて検証している。また「おわりに」では、GNPという指標の妥当性まで論じているのである。

     つまり本書は、高度成長期をもとに「経済成長」そのものを考察しているのだ。そのことは、高度成長が「進歩と言い切れるだろうか」(P.222)という言葉で本書が締めくくられていることからも、わかるだろう。

     もちろん本書にはそんな大きな問題の他にも、当時の社会を知る上で参考になる、という面もある。自分のような高度成長期を知らない読者にとっては、具体例が豊富で、読んでいて楽しかった。私は社会科の教員をしているが、授業で使える話が多くて非常に有用なのでは、と感じた。

     というわけで、成長を考えるために、また高度成長期を知るための教養として、読んで損はない1冊だと言いたい。ただ、私が教える中高生には読んでほしくない。授業で話すネタの出所がバレてしまうからだ。
     

  • 昔読売で出ていた本らしい。随分と良い紙を使っている。内容はある程度わかるけれど、一番読みごたえがあるのは「あとがき」かもしれない。頑張れ日本のケインジアン、って感じでしょうか。昔話ではなく、現代への啓蒙書として読む価値あり。

  • 読売新聞社から出ていた<20世紀の日本>シリーズ第6巻の待望の文庫化。著者は東京大学大学院教授(マクロ経済学)の吉川洋(1948-)。

    【構成】
    第1章 今や昔 高度成長期直前の日本
    第2章 テレビがきた!
    第3章 技術革新と企業経営
    第4章 民族大移動
    第5章 高度成長のメカニズム
    第6章 右と左
    第7章 成長の光と影 寿命と公害
    おわりに 経済成長とは何だろうか

    <20世紀の日本>シリーズを全て読んでいるわけではないが、このシリーズはハズレがなくていい。そして、シリーズ中で特に手に入りにくい吉川洋『高度成長』が文庫化されたのは喜ばしい限りである。

    高度成長を支えたものは、急速な内需拡大と鉄鋼業を中心とした製造業の飛躍的な労働生産性向上という産業振興に他ならない。そして、本書が指摘するように、工業部門が農業部門の労働人口をひとしきり吸収し、耐久消費財の消費量が頭打ちになった1970年代にその拡大が収束し、1973年のオイル・ショックにより完全に幕が降ろされる。

    そして、そのようなマクロな経済拡大よりも、農村から離れた大量の都市住民の生活が現出したことがそれ以前との時代の隔絶を象徴し、同時代に暮らしていた人たちに生活の変化を実感させた。巻末の解説にもあるように、本書は随所に当時の生活感を喚起させるエピソード、写真を挿入し、リアリティを喚起している。

    リーマン・ショック以後、東日本大震災以後、「経済成長」という言葉に無条件で賛辞を捧げることをためらう人が増えている。「今いかなる成長を求めるのか」あるいは「成長は求めない」のかという難題は今すぐに答えは出ない。その前に、まずは「戦後」の象徴である「高度成長」という時代を通じて、戦後日本社会の変化を本書で学んではどうだろうか。

全24件中 1 - 24件を表示

吉川洋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×