- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122056602
感想・レビュー・書評
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青年が老人から奇談を聞くという体裁で、一話一話は短いのに、どの話もあっという間に引き込まれてしまった。しかも歴史的仮名遣いでありながら、不思議と読みやすい。この時代で起きたがゆえのやるせない結末には、苦い想いがこみあげてくる。
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2012年6月刊行。歴史的かなづかいを生かして再刊行、附録には、単行本未収録作品を加えた、堪らない一冊。
読物集1ということは、これからも、この幸せが続くということ。
再読する作品ばかりでしたが、より当時の空気を感じる事が出来ました。 -
ふとしたきっかけで陥ってしまう狂気と、それに巻き込まれる理不尽。とても異様に思えるのに、それを自然に描いてしまうとこが怖いのですが、そういうものに自分が行き合ったら普通の反応しちゃうのものなのか。
時代小説って…宮部みゆきかしゃばけか壬生義士伝しか読んだことないと思うのですが…武士と町人の普段のくらしの中の境界やら折り合いの難しさが実際的とゆーか身につまされるとゆうか。あちゃー、と言いたくなるとゆうか…武士って大変なんだなぁ。
春色梅ごよみ。
同情の涙でした…お近さん、かわいそーで。今ならさしずめ運動部に青春かけてた子が、引退してこれまでと違う友達からやおいの世界を知り自分でも書き始め受験に差し障りが…てなくらいでしょうが、江戸時代の武士の家だったばっかりに…涙。現代日本ってほんと素晴らしいですね。
きっと今の日本のこの溢れ返りっぷりは、過去涙を飲んできた人々の上にたっているんだろなぁ、ととおいめ。かくいう自分も、きっとかつては地方の農民で活字に飢えてた口だと思ってます。
下屋敷。
事件は上屋敷で起こってんじゃねぇ、下屋敷で起こってんだ、ばりな。いや、まじでその役者どうなったのか。出してくれたよね。 -
『半七捕物帳』の半七老人の友人、家主をしていた三浦老人から聞いた江戸の話色々。
江戸の暮らし、事件事情が明治に語られるのですが雰囲気が独特で良かったです。
『半七捕物帳』を読んだことがないのですが読みたくなりました。 -
江戸を舞台にした短編小説集。なんてことのない、実際にどこかにありそうな、だけれどもなかなかないだろうなあと思える物語の数々。一見喜劇に思えることが当人にとっての悲劇であったりだとか。そこに描かれた人々の悲喜交々が、おかしいような、そして悲しいような。少しずつ、じっくりと浸って読みたい一冊です。
お気に入りは「鎧櫃の血」。いかにもなタイトル。そしてやっぱり怪談話。なのだけれど……醤油って! よりにもよって醤油!!! 笑っていいのか何なのか。でもこのラストにはぞくり。 -
岡っ引き半七の友人である三浦老人から聞いた奇譚、という設定に痺れますね。プラトン社の雑誌『苦楽』に載った12篇は、半七はもう書きたくないと断って書いたネタだけあって人情話ではおさまらない、怪談、因縁、悲話などいろんな話が盛り込まれててそれぞれ面白い。
もちろん三浦老人が現役の頃の思い出話を語るので、描かれるのは江戸。この話が語られた明治の風景と、話の中に描かれる江戸の風景の対比もこれまた良い。
付録の2篇「黄八丈の小袖」「赤膏薬」も面白かった。ままならない所が良い。 -
置いてけ堀の櫛の話は怪談としておもしろい。
しょうゆの御家人や矢がすり、手習いの師匠の話などを読むにつけ、やっぱり生きにくい世の中だったのかもしれないなと思い直す。だからこそ、明治維新が起きたのだろうしね。江戸時代の幕藩体制を一番迷惑に思っていたのは、さむらい達だったのではないか。
解題にもあるが、生まれどころを間違えた人たちの哀話が中心だった。哀しくもおかしみのある話。 -
面白かった。桐畑の太夫、下屋敷、矢がすり、黄八丈の小袖、辺りが好きかな。
身分厳しい -
半七の友人である老人の昔語りという体裁の短編集。
物語だけで良さそうなものだけど、話を聞くまでの様子が毎回描かれる。
その削ってしまえる部分の、聞き手と老人の交流や季節の移ろいがゆったりした空気をかもしだす。
書籍情報には怪談や哀話とあったけれど、怪談らしい怪談は少ない。
「哀話」には決められた役割のために自分を生きられない悲しさがある。
そこに生まれたから、この役割だから、という縛りは時代の影響を大きく受ける。
老人の語る江戸末期は、聞き手が生まれる前の「昔」。
聞き手は、「新しいことを話す人は多くいるけれど昔を語れる人はどんどん減っていくのだから今のうちに聞いておきたい」と考えている。
綺堂は江戸情緒の表現に定評がある人で、この本の解説にも失われゆく江戸を書き残すようなことが書いてある。
だけど昔は良かったという無批判な理想化とは違うんじゃないかと思う。
戦後生まれの戦前賛美や、不況しか知らない子が高度成長期を羨むような、「ろくでもない現在」からの逃避を綺堂の文には感じない。
この本の中の江戸は「今」よりずっと不自由で無用な苦痛がたくさんある。
だからといって昔はひどかったと切り捨てるのでもなく、そういう昔を悼みながら愛おしむような向き合い方なんだと思う。
「旗本の師匠」は実話っぽい雰囲気。これを理不尽ととらえているのは綺堂の性格なのか世代なのか。
武勇伝のように語っていた勝小吉や尾崎行雄をちょっと思い出した。この二人も世代が違うけど。
「黄八丈の小袖」は『尊属殺人が消えた日』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4480854088を考えてしまった。
編者の解説はあまり好きじゃない。意味を持たせ過ぎているように感じる。 -
数奇な運命に弄ばれる江戸の人々を描いた奇譚集 岡本綺堂には探偵物語や怪談のイメージを抱いていたが、こちらの本ではそういったものの要素は数話に幾らかある程度であった 少し後味の悪い話が多いが、当時の武士や町民の暮らしぶりや倫理観・ものの考え方等に触れられ、その点興味深く読むことが出来た 駕籠屋の息子が意地を張り通して愍然な最後を遂げる「刺青の話」と、武家の奥方と若い役者の密会にまつわる話で寒気を感じるようなオチを迎える「下屋敷」が特に良かった 「矢がすり」に登場する、意外な素性を持った頬に薄い傷跡のある美女”矢飛白おきん”を描いた山本タカト氏の口絵が艶やかで非常に魅力的である
著者プロフィール
岡本綺堂の作品






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