アイロンと朝の詩人 回送電車III (中公文庫 ほ 16-5)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 132
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122057081

感想・レビュー・書評

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  • 楽しいはなしは楽しく、苦しいはなしは静かに

  • 堀江敏幸さんの第三雑文集です。硬軟取り混ぜた文章が収録されていますので、お好きなものからどうぞ、という本です。

  • 回送電車Ⅲ
    中公文庫から堀江敏幸3作目のエッセイ集(雑文集)
    若干の偏りはあるが、紹介されている本が読みたくなるし、読んでいない自分が少し恥ずかしくなる。優し言葉で当然のように本の書評を言われると、その意味では北村薫が本を紹介している時ににている。
    ・・・・・はかなき者よ
    人間とは何なのか、人間ではないものは何なのか、人間とは影の夢・・・・・だがときおりまるで
    高みから降りてくる光線のごとく、よろこびの短い光がその生を美しくする、そして人間は知るのだそこはかとない甘美さを・・・・・
    ピンダロス『ギリシャ詞華集』

  • 『回送電車』シリーズ第3巻。
    古本と鉛筆削り、そしてタイプライターのエピソードが印象的だった。特にタイプライターには風情がある……あっても使えないけれどw

  • 雨音に催促されるようにして、積ん読の山から掘り出してきてポツポツと読み始める。

    堀江敏幸の書く散文は、どこか音楽に似ている。ポンと心を打つ響きもあれば、よそよそしく響く和音もある。時間を経て、抽象的な響きの奥からひょっこり顔をのぞかせるひとなつこい旋律がある。そしていつもこのひとの散文を読むとき思うのは、そこに置かれた「ことば」を読むことでもたらされる余韻のようなものに浸りたくて読むのだ、ということである。そこで鳴らされる音以上に、それによってもたらされる余韻に浸りたくて聴くモンポウの音楽のように。

    個人的に大好きな天野忠翁の詩とともに、柔らかく、軽い「むかし」が行間からこぼれ落ちる「メロンと瓜」、身の回りの壊れたものを必要にせまられて「取り繕う」行為から日々を送るということへ、アナロジーの飛躍が不意に視界が開けたかのような錯覚をもたらす「日々を取り繕う」など、いつもながらちいさな「気づき」に満ちた散文集。

  • 最初は緩慢に、でも、ある程度を過ぎると、饒舌に。いつのまにか、堀江さんの足跡を追って堀江さんの世界に足を踏み入れているる。そして、気がついたらスキップするように歩き回り、「いい気分」になっている。
    読むリズムがあるのだ、この本に。だから、かみ合うまで時間がかかる。リズムが身につくまで苦しい気分になり(だから挫折しそうになるのだが)、リズムに合うようになってくると、その感覚に嬉しくなり、酔いしれてしまう。それが堀江さんの魔術なのだ。
    この回想電車は「文学論」めいた小品が多い。読むことをどう考えたらいいのか…私の一番踏み込みにくいエリア。どうなのか、強い関心はあるのだが、妙な拒絶感がある。
    一方で、私がほのぼのするのはやっぱり故郷の話。本とコーヒーを持っていった場所の記憶。

  • 回送電車シリーズ第三弾。

    いつもながら、一つ一つを宝物のように読み進めていけるこの感覚が楽しい。

    まず、着眼点が好き。
    ゆで卵とハムエッグか目玉焼きをモーニングとして出す喫茶店で、「同じ素材のものが二品」あることに「遺憾」を覚え、指摘した際のおばさんの「驚愕」の描写。

    堀江さんの纏っている、もの静かで理知的でつぶさなものの見方が、ずれる瞬間の笑い。

    そこかっ!とツッコミを入れずにはいられないのである。

    なのに、描写自体にユーモアがある訳ではなく、丁寧で、あぁ愛着があるんだな、と思わせられるのだから不思議。

    そうして初出一覧を見るのも楽しい。いろんな分野から引っ張られては、その空気感を変えずにきっちり返答する姿勢。

    すごいな、この人。

    今巻では書評の割合が大きかったが、あぁそんな所にそんなものがあるのねっ!とうずうずさせられること間違いなし。

    いつも回送電車シリーズを読み終えると、まんまと書評から原作に当たっている私である。

    分かる分かる、と思わせてもらいながらも絶対に分からない部分があるのだ。こんな人になりたい。

  • 堀江敏幸さんの文章を読んでいると、頭の中でぐちゃぐちゃになっていたものが、アイロンがかかったようにすうーっと伸びていくような気がして心地よい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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