日本の近代5 - 政党から軍部へ 1924~1941 (中公文庫 S 24-5)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058071

作品紹介・あらすじ

原敬没後、軍部の介入と党内対立に苦しみ続けた政党内閣は五・一五事件で潰えた。軍部は日中戦争を引き起こし、二・二六事件を経て時代は「非常時」から「戦時」へと移っていく。しかし、昭和初期の社会が育んだ豊かで自由な精神文化は戦後復興の礎となったのだ。昭和戦前史の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 政党の20年代と軍部の30年代を内政と外交の連関で叙述。政党と軍部が対立するだけではなく、政党内部・軍内部でも対立はある。それらの対立を政治エリートの価値観を中心に描く事により、慎重な外交と憲法の遵守という2つの方針を重視した天皇を無視する形で歴史が展開されていった理由を解明。500ページ弱と結構ボリュームはあるが、それでもサラっと書いているように思えるのはなぜか。著者の筆力をもってしても、まだまだ描ききれてない部分が沢山あるという事だろうか。それとも著者の感情に流されないある種のリアリズムがそう感じさせるのだろか。

  • 全般として、政治責任と国際情勢への向き合い方という、この時期の政治にいまひとつ欠けていたらしい重大なピースについて、読み進めながら考えを向けざるをえなかった。エピローグで清沢が大久保の征韓論抑止について書いたことを取り上げているが、まさにその点を最後におさらいしてくれるエピソードに見える。

    英米協調を考慮すべきだったという視点を本文の背後に感じるし、早い段階でそれを考慮しなかったために対米開戦まで結局招いた点では大筋その通りだと思う。一方で、当時の世論や政治判断においては、大陸へ進出するならその妨げになりうる英米を退けたいと考えるだけでなく、対ソに加え対英米の観点からドイツと結ぶことの意義がより強調されていただろうかと想像すると、その辺りももう少し詳述してあると両面的な理解ができそうな気がする。



    以下は瑣末な覚え書き。

    広田弘毅について。
    文官で唯一A級戦犯として処刑されるほどの人物か。単に軍部の圧迫に屈したとは必ずしも言えず、本人の責任は軽くない。実質的に日中日米の開戦の道筋を作った近衛と同様アジア主義的政策を自発的に取り、外交に限らず財政や人事の面からも「戦時」への移行を支えた。

    大政翼賛会について。
    政党ではなく行政組織であり、隣組長や町内会長は国家の下士官、という著者の表現は言い得て妙。経済統制に加えて国民("臣民"と強調すべきか)の私生活に干渉し「精神総動員」を謳うこと自体、国を丸ごと軍にするようなものといえる。

  • 軍部がどのように暴走し、内閣の命運を握る存在になっていったかを叙述する一般的な通史。日露戦争期には先進的だった軍隊が日中戦争期には時代遅れになり、その近代化の是非をめぐる論争が二・二六事件の背景にあったことには驚いた。(そのような論争をしている時点で太平洋戦争の勝敗は決まっていたと言える。)組織の失敗というのがよく指摘されるが、その通りであると思う。陸軍をテーマとした本を著者が出していたはずなのでいずれ読みたい。
    日中戦争以降、陸軍を中心とした政権中枢に権力が集中し、中枢を担う「人」—近衛、広田らーの動きが重要になってくる。彼らを描いた本も読んでいきたい。

  • 歴史の流れの中で、出来れば避けて通りたいような時代であるが、できるだけ客観的に書かれた本書のようなものを一度は読んで、最低限の知識だけは持っていた方が良いと思う。

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著者プロフィール

国際協力機構(JICA)特別顧問、東京大学名誉教授、立教大学名誉教授

「2023年 『日本陸軍と大陸政策 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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