かたちだけの愛 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.94
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本棚登録 : 260
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058415

作品紹介・あらすじ

事故による大怪我で片足を失った女優と、その義足を作ることになったデザイナー。しだいに心を通わせていく二人の前に立ちはだかる絶望、誤解、嫉妬…。愛に傷ついた彼らが見つけた愛のかたちとは?「分人」という概念で「愛」をとらえ直した、平野文学の結晶!

感想・レビュー・書評

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  • 平野作品読了するとかいつも、考えや感情を言葉で表すことの難しさを痛感する。

    作中にも何度か触れられているが、久美が女性には受け入れられにくいということ。これは現実にも多々あることだが、確たる理由も見つからず後付けの理由で人を好きになれないことがある。個人的には感覚で判断していることなんだと思うけど、正に最後までその感覚をもって久実を好きになることができなかった。

    ただ物語でこの感覚・感情を煽られたことに非常に驚いている。じわじわと蝕まれるような気持ちの悪さを味わって欲しいと思うけれど、現実世界で久美みたいな女性に惹かれてしまう人はまた全く別の感想を持つんだろうなぁ。そっちの気持ちも味わってみたいな、と。

  • 平野先生の作品の中では、「決壊」が一番好きだったが、今日から「かたちだけの愛」が一番好きな作品になった。

    「決壊」や「葬送」に比べると話のテンポが早く、物語にどんどん引き込まれ1日で読み終えてしまった。

    こんなに美しい小説を読んだことが無い と感じる程、文章が美しい。

    「あわや だいさんじ」登場の度にクスっと笑ってしまった。

  • 恋愛物が苦手なのだが、「マチネの終わりに」が良かったので読んでみた。

    タイトルが「かたちだけの愛」とあるので、結局最後別れてしまう話かと思っていたが、どうもタイトルの「かたち」は義足という形あるものをめぐる「愛のかたち」についてを示しているような気がする。

    この作品はプロダクト・デザイナー相良郁哉は、雨の日に職場の近くで起こった交通事故で女優・叶世久美子を助けるが、片足を切断してしまう。偶然にも相良と過去取引がある病院に入院し、病院経営者・原田紫づ香から、久美子の従来の概念を覆すような義足のデザインの依頼を受け、義足制作の中で恋愛に進展するという内容。

    実は、久美子の相良への態度や会話が駆け引きの恋愛のように感じられ、久美子をあまり好きにはなれなかった。
    好きになった人に自分の気持ちを素直に伝えることができない不器用さというより自分のために何もかも投げ出してくれる人か否かを測っているように常に感じる。確かに、事故により突然、昨日の自分とは異なり障害者になり、今まで憧れの目で見られていたのが一転し、哀れみの目で見られるようになるのだから、この駆け引きの態度が事故以降であれば、致し方ないことではある。が、以前からではないかと思ってしまう。こう感じることも久美子を好きではないからであろう。

    また相良にしても、久美子と自分の母とを重ねている理由をわかっているのに、久美子を愛することができるのは、少年時代に叶わなかった母への、母からの愛からなのではないだろうか。

    片足を失った久美子と、相良が制作する義足で繋がった愛のように感じ、儚く感じる。このふたりが同じ思いで互いを必要とするのであればそれも愛かと考えてしまう。私には少し重かった。

  • 穏やかだったり、ゴツゴツしたり激流だったりと色々な流れで読めた。表現も美しく、全て映像となって心に残りました。
    ただ、分人や愛の形についての説明のような所が引っかかりました。
    あえてしっかり書いて伝えたかったのか。
    何となく読者の心に伝わる方が私は良かったと思いました。

  • とても、きれいな恋愛小説。
    それは薄っぺらいとかいう意味ではなく、嫉妬や執着心や憎悪や混沌、醜悪…そういった人の卑しい部分を描きつつ、それさえも凌駕する美しさが混在している…ということ。谷崎潤一郎氏の小説やラヴェルの曲、最後はパリの街並み…とまるで映画を見ているかのような感覚で読み進められた。文字を読んでいるのに、それとは別の視覚や聴覚を刺激されるような感覚は、なんかノスタルジーとワクワクを同時に味わうような不思議さでもあったなぁ…。
    平野さんの提唱する『分人』の考えもちりばめられ、家族との顔、仕事の顔、恋人との顔、昔の恋人との顔…と様々な関わりに悩みモヤモヤを抱えて生きる様には共感を覚えた。
    平野さんの小説は、わりとさらっと読めるのにジワジワと心に沁みて離れない。相良の母の納骨のシーンでは、なぜか涙がこぼれた。

  • タイトルは「かたちだけの愛」だけど、どちらかというと「愛のかたち」を描いた作品。

    読み始めたらやめられなくなって一気に読了。
    平野啓一郎ならではの丁寧な描写と恋愛小説ならではのエンターテイメントがあいまって頭と心に心地よいマッサージ。

    美脚を売りにしていた女優が交通事故で片足を失う。プロダクトデザイナーの主人公は彼女のために美しくて機能的な義足を作る。

    「分人dividual」シリーズなので、「個人individual」ではない人のあり方も模索される。
    美(脚)というアイデンティティを失った私の存在意義。
    女優としての久美子と一人の人間としての久美。
    他人の母であり、父の妻であり、同級生の父の不倫相手であり、白骨になった主人公の母。
    多面的なあれこれが一つの人格を作っていること、変わりながらも変わらないこと、などを上手くお話しに仕上げている。
    どこがどうだからどう、と名指しできないけど、こういうテーマを描いて陳腐にならないのはすごい。

    ただし、不満な点もある。
    主人公の女性が美しくなかったら、この小説はそもそも成り立たない。美あっての愛、というのは土台としては狭い。
    それから、女性が豊かな多面性を持つことは、シリーズのテーマともあいまって丁寧に描かれるのに、男性の登場人物が平面的、一面的なのはいただけない。男性は一人一性格に割り当てられていて、この人は几帳面なタイプ、この人は口は悪いが腕は確かな職人タイプ、この人はジャイアンタイプの乱暴者、などわかりやすく類型化されてしまっている。
    そのせいで、作品全体の厚み奥行き説得力が薄くなっているのがやや残念。

    本書を読みながらずっとプロダクトデザイナーの山中俊治さんがイメージとして浮かんでいたけど、やはり、対談していました。
    義足は道具か、それとも身体か──喪失が新しい創造の場所になる
    http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110901/282540/
    「プロダクトデザイナーの山中俊治氏と小説家の平野啓一郎氏。異なる世界で活躍していた2人が出会うきっかけとなったのは、山中氏が中心になって進めている陸上競技用の義足開発プロジェクトだった。平野氏が、義足をデザインすることになったプロダクトデザイナーを主人公にした小説を書く過程で、山中氏の取り組みを知った」

  • 愛する女性の元カレの遍歴に対する考え方のくだりが共感できた
    自分より年上の男女の官能シーンだからか、何か気持ちの悪いものを感じた
    本当の愛ってなんなんだろう
    なんだかんだ、好きという感情の裏には計算的なものや汚さを感じざるを得ない
    資本主義やSNSの普及による弊害なのかな

  • 作中で相良は2人に自分のマイナスな過去・生い立ちを話している。マイナスな過去・生い立ちを話すのはとても勇気のいることだし、本当に仲を深めたいと思った人にしか自分は話せない。
    話しても良いと思うような人と出会えることは幸せだと思う。

    「私とは何か」で好きな考え方の一つである、
    「誰といるときの分人が好きなのか」をテーマにしてたのも良かった。

  • いかにも「男性がかく恋愛モノ」という印象。
    事故で左足を失ったお騒がせ女優・久美子と、彼女の義足製作に携わるデザイナー相良との間に芽生える恋。タイトルの「かたちある愛」=義足?の事かと解釈。
    久美子との順調な交際にいちいち興奮しながらも、やはり相良はスキャンダルの多い彼女に、男狂いの母親を終始重ね続けていたのでは、と思う。他の方のレビューを読むと、この作品は平野氏の”分人主義思想”が極めて強く現れているらしいが、「彼女を愛している自分」について最後についでのように述べられている点以外は、単なる陳腐な恋愛小説でしかないと思わせる話運び。
    サポートメンバーの淡谷、庄司、緒方君あたりのキャラクターはリアリティがあったが、相良と三笠の分かりやすい敵対関係はその分ちょっと薄っぺらかった。また、久美子の”インラン”設定はどうなったのか。マチネでもそうだが、ヒロインを必要以上にキラキラさせる書き方は本当に冷める。いい加減にしてほしい。
    読了したけれど「読み終わった〜!」って爽快感は皆無。細部がとにかく陳腐なのを、美しい表現で覆い隠している感が否めない。

  • 恋が、刹那的に激しく昂ぶって、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け入れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない。

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著者プロフィール

平野 啓一郎(ひらの けいいちろう)
1975年、愛知県蒲郡市生まれ。生後すぐ父を亡くし、母の実家のた福岡県北九州市八幡西区で育つ。福岡県立東筑高等学校、京都大学法学部卒業。在学中の1998年、『日蝕』を『新潮』に投稿し、新人としては異例の一挙掲載のうえ「三島由紀夫の再来」と呼ばれる華々しいデビューを飾った。翌1999年、『日蝕』で第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。
2009年『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』で第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2017年『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞、2019年『ある男』で第70回読売文学賞(小説部門)をそれぞれ受賞。2014年には芸術文化勲章シュヴァリエを受章した。『マチネの終わりに』は福山雅治と石田ゆり子主演で映画化が決まり、2019年秋に全国で公開予定となっている。

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