馬の世界史 (中公文庫 も 33-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058729

作品紹介・あらすじ

馬は、人間社会のなかで、多種多様な役割を担わされてきた。太古には狩猟の対象になり、やがて車を引き、人を乗せ、人間の世界に深く入りこんだ。人が馬を乗りこなさなかったら、歴史はもっと緩やかに流れていただろう。戦争、交易、世界帝国…、馬から歴史を捉え直す。JRA賞馬事文化賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • もし馬がいなかったら、21世紀はまだ古代だったかもしれないという筆者のアイデアが衝撃的だった。社会のあらゆる分野で人に使われて、世界史を動かし続けた馬は健気で大好き。今度の有馬記念は、馬と人間の歴史の一つの到達点でもあると思うと、ワクワクする。

  • 読了。

    馬の世界史 / 本村凌二

    読んでジのごとく馬に特化ですね。
    馬が存在しなければ21世紀はまだ古代が続いていたのではないかと帯に書いてますね。

    馬の家畜化から競走馬まではば広いですよこれ。
    競馬サラブレッドの名馬紹介とかしちゃったりして、紹介いらないんじゃね?と思いつつ、この著者のかた競馬のエッセイも書いてるそうで、それまらしかたあるまい。

    馬の家畜化、戦車、騎馬ときて、ユーラシアの草原の民によるアラブヨーロッパ進出、ヨーロッパ騎士の人の鎧と馬の鎧で重装備した巨大馬、かたや、軽装で素早さを重視したアラブ馬、小柄ながら我慢強くスタミナの遊牧民のモンゴル馬
    そして走ることを重視して誕生したサラブレッド

    モンゴル軍は一人につき馬数匹つれて戦争に出るってなるほどすごいなと。ダメになったら乗り換えられるものね。攻められたほうは馬の数見て大群だと思わざるをえないものね。

    登場遊牧民の民族の種類が多すぎてさっぱりわかりませんが面白かったです。

  • 馬の観点から世界史を捉えた作品。著者は競馬好きの古代史研究者。
    ユーラシア北方の森林・草原地帯を原住地としたインド=ヨーロッパ語族の諸民族は、同じく草原地帯に住む馬を飼い慣らし戦車を引かせ、やがて周辺地域へ移動するにつれ、馬の家畜化・軍事利用が世界に広まっていったという流れ。
    中世以降は弓や火器が戦場を支配し馬の役割は馬車などの運搬に移り、さらにそれも蒸気機関の発明により、今度は娯楽としての競馬へと移っていく。

    匈奴やフン族といった遊牧民は文字史料が少ないため世界史における存在感は薄いように見えるが、しかし中国や中東、東欧との交流・侵攻が、それぞれの文化に与えた影響は大きかった。非常に面白く読めた一冊。

  •  馬にフォーカスして世界史を捉え直す本。馬の家畜化から始まり、アケメネス朝ペルシアやらフン族やら中国北部の騎馬民族やら、世界史には馬を巧みに操った人々の影響が常に存在したことを書いている。これを読むと馬を見るだけで歴史に思いを馳せることができるようになるのでおすすめ。カウボーイが乗ってる馬を見て「アメリカ大陸では紀元前1万年頃に馬が絶滅してるから、あれはヨーロッパから移住してきた人が一緒に連れてきた馬の末裔なんだな」とか。
     著者は競馬好きらしく、そのせいか産業革命以後の話がかなり競馬に偏っていたのがもったいない。第一次世界大戦の頃にも軍馬が用いられていたが、そのことについては一切触れていなかったりする。

  • 面白いな、これ。
    馬と人類の歴史的な絡みを通史だけでなく、独自の視点でまとめています。
    何も全てを欧州の視点で世界史を俯瞰せんでもいいというのは、その通りと思うし、それに馬が果たした役割、という視点が面白いですね。

  • MR1c

  • Kindle

  • プロローグ――もし馬がいなかったら、二一世紀はまだ古代だった
    1章 人類の友
     人間に飼い慣らされる動物の条件とは
     馬は人間に飼い慣らされるべく進化してきた?
     野生の馬はなぜ衰退したか
     シマウマを飼った男
     家畜化の始まり
    2章 馬と文明世界――戦車の誕生
     最初に馬に乗った人間はなにを思ったか
     馬に荷車を引かせる
     「山のロバ」と「砂漠のロバ」
     戦車の誕生
     戦車武人の登場
     「速度」という観念が変えたもの
     東アジアの戦車
    3章 ユーラシアの騎馬遊牧民と世界帝国
     Ⅰ 西方ユーラシア
        騎馬の普及
        古代人はどのように馬に乗っていたか
        最古の騎馬遊牧民キンメリア人
        ヘロドトスの描いたスキタイ人
        スキタイ系文化はどこから来たのか
        アッシリア帝国と騎馬軍団
        アッシリア馬とエジプト馬
        ペルシア帝国
        スキタイ北伐作戦の失敗
        「王の道」
     Ⅱ 東方ユーラシア
        東方の騎馬遊牧民
        殷と周の対決
        戦車から騎兵へ
        秦の由来
        司馬遷の描いた騎馬遊牧民
        騎馬遊牧民と世界帝国のダイナミズム
        汗血馬の伝説
    4章 ポセイドンの変身――古代地中海世界の近代性
     ギリシアで戦車は用いられたか
     オリンピックの花形、戦車競技
     なぜ「馬の神」は「海の神」となったか
     ギリシア人と騎馬
     アレクサンドロスの愛馬
     ローマ軍と騎兵隊
     「パンとサーカス」の世界
     競走馬の育成
     古代地中海世界の近代性とはなにか
     馬と海と「海域世界」
     <補論>馬なき古代文明―アメリカ
    5章 馬駆ける中央ユーラシア
     ゲルマン民族大移動とフン族の脅威
     ローマ帝国の解体
     フン族とはどんな人々は
     四つの自然区分
     「オアシスの道」シルクロード
     騎馬遊牧民の馬
     夷狄は蛮族か?
     突厥の大遊牧帝国
    6章 アラブ馬とイスラム世界
     アラブ馬成立の謎
     ベドウィンがもたらした馬
     馬は「至上の祝福」
     アラビア半島はなぜ名馬を生んだか
     十字軍の重馬
     軽装のトルコ騎兵
    7章 ヨーロッパ中世世界と馬
     ビザンツ帝国の戦車競技
     イスラム侵攻と騎士団の出現
     騎士の理想の馬
     英雄エル・シッドの馬バエビカ
     十字軍が伝えたオリエントの馬
     軍用馬を育てる
     農耕馬の登場
    8章 モンゴル帝国とユーラシアの動揺
     遊牧国家ウイグル
     広がる遊牧国家のシステム
     チンギス・ハンとモンゴル帝国
     高度に組織化された編隊
     「タタールの平和」
     マルコ・ポーロのみたモンゴルの馬
     モンゴルが「世界史」をもたらした
     モンゴルを離れて
     「南船北馬」
     朝鮮半島と日本の馬
    9章 火砲と海の時代――近代世界における馬
     ルネッサンスと獣医学への関心
     馬術と馬産
     アメリカ新大陸にわたった馬
     馬のあたえた衝撃
     ヨーロッパの軍事革命の波間で
     馬車の時代
     小説が描いた馬車の旅
    10章 馬とスポーツ
     狐狩りから障害競走へ
     馬産への情熱
     サラブレッドの誕生
     近代競馬の成立
     世界最強馬の追求
    エピローグ――われわれは歴史の負債を返済しただろうか

  • 「馬の世界史」本村凌二さん。2001年の本。中公文庫。



    題名の通り、「馬」という断面で眺める世界史のお話です。前々から気になっていて、なんとなく読んでみました。

    ●どうやら、「馬」というのは、色んな似た生き物の突然変異のようで。人間と共生しやすく出来たので、繁殖して増えたそうです。従って、もしかしたら現存する全ての「馬」の先祖というのは辿って行くと、突然変異したただ1頭の「馬」に行きつくのかも知れない。ある意味、万世一系な訳ですね。(まあ、でも生き物は全部そうとも言えるのですけれど)
    ちなみに、今現在「馬」というとほとんどがサラブレッドという種?な訳ですが、サラブレッドも辿って行くと、2~3頭の名馬の子孫たちだそう。

    ●馬は恐らく初期には「放牧業をするうえで、便利な道具」だったのではないだろうか。遺跡とかを見ていくとそのようだ。

    ●今のモンゴルとか中央アジアあたりの放牧系=騎馬民族が古くから巧みに馬を使って、強力な戦闘能力がありました。そして、この人たちは長い間「文字」を使わなかった。だから、今残っている歴史では、彼らはほとんど「悪=エイリアン」としてしか描かれていないけれど、それはかなり一方的な見方。

    ●ヨーロッパの歴史も、中国の歴史も、この騎馬民族との対立や融和が歴史の大きな流れを支配している。司馬遷の時代から「匈奴」と呼ばれた。いわゆるシルクロードや東西文化の混合というのは、彼らの活動に依拠しているし、「尊王攘夷」みたいな思想もそこから生まれている。世界史への影響力は巨大である。

    ●この遊牧民たちは、経済生活上、「巨大な国家というグループ」を作る必要が無かった。だからそういう仕組みがなかなかできなかった。チンギスハンなど、個人としての強力なリーダーが発生すると、イッキに想像を絶する武力集団になり、向かう所敵なしで世界を制覇してしまった。でもそのリーダーシップが無くなると、また元に戻る(笑)。

    ●一方で、ローマ、ギリシャなどは地中海=船舶の文化であり、馬に大きく依存しなかったようだ。

    ●ところが、馬=騎馬民族の影響は避けようがない。4世紀ごろの「ゲルマン人の大移動」が世界史のベースになっているけれど、これはもともとはゲルマン人の縄張りに騎馬民族、フン族が襲ってきて、まったくかなわなかったから。

    ●ハンガリー、という地名は「フンの国」という意味が元々あった。

    などなど...それなりに「へええ」と面白かったです。

    馬という武力を手に入れたものが権力を握ったり、「馬車」というものが交通や流通や情報網を作ったり。
    いかにどれだけ、近世まで「馬」が大事だったか。名馬が貴重だったか。

    みたいな、よもやまと薀蓄が、なかなか冷静に俯瞰的に語られています。誘われ、頭の中を騎馬民族と馬車が走り回っている間に、原始時代から20世紀までの概略が走馬灯のように、パラパラ漫画のようにスピーディーに進む、不思議な読書でした。



    本村さんという学者さんは、どうやら古代ローマ辺りが専門だそう。専門の方の本も一度読んでみたいものです。
    それにしても、やっぱり馬が好きなんだろうなあ、と思っていると、末尾にご本人が「とにかく学生時代から競馬に魅せられて...」と熱い思いを吐露されていて、素敵な感じでした。

    こういう、「とにかく好き!」という情熱って、私心が無いというか(笑)。チャーミングだなあ。

  • なるほど科学と統計抜きで世界史を語るとこうなるのか。第1章の書き出しからして「この一万年間に、地球には4000種ほどの哺乳類が棲息していたという。」なんだから程度が知れる。

    馬の進化の系譜や他の哺乳類との比較もないが、いかに戦争で用いられ、いかに騎馬民族が世界を席巻したのかが物語として語られる。

    学ぶためではなく、楽しむための一冊としてであれば、悪くない一冊ではある。

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著者プロフィール

1947年 熊本県生まれ
1980年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程(西洋史学)修了
現在 東京大学名誉教授
西洋古代史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

「2020年 『衝突と共存の地中海世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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