アンダスタンド・メイビー(上) (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.73
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本棚登録 : 403
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058958

作品紹介・あらすじ

筑波に住む中学三年生の黒江は、研究者をしている母との二人暮らし。両親の離婚以来、家庭に居場所を見つけられずにいた。ある日、書店で目にした写真集に心を奪われ、カメラマンになるという夢を抱く。同じ頃、東京から転校生がやってくる。太めで垢抜けない印象の彌生に、なぜか心を奪われる黒江だった。「やっと見つけた、私だけの神様を」-。

感想・レビュー・書評

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  • 「ファーストラヴ」で直木賞受賞した作家さんの作品。
    十代の娘の遍歴を描きます。
    一見普通のようでも、どこかダークな面があり、どう転ぶかわからない展開なので、はらはら。

    藤枝黒江(クロエ)は、母子家庭の娘。
    もともと勤めている母は忙しく、祖母と父に育てられていましたが、祖母の死後に両親が突然離婚。
    小学生の時、母と二人で筑波に移り住んできました。
    研究者の母も、最初は娘を遊びに連れて行ったりと努力もしていたのですが。
    家事は、主に娘が担当しています。

    クロエは廃墟を写した写真集に目を惹かれ、生まれて初めてのファンレターを出します。
    写真家の浦賀仁の方も喜んで返事をくれたので、いつか東京に行って弟子になるという夢を持つことに。
    友達もいて、割合普通の中学生活だったのですが。

    転校してきた男の子・酒井弥生君と友達に。
    大柄で太めでオタクっぽい外見だけれど、いたって真面目な性格の彼。
    クロエは彼に救いを感じるのです。
    体育祭の長距離走の選手になったものの、脚を痛めて走れなくなったとき、助けに来てくれたのでした。他の子は見当違いの励ましをしたのですが。
    彼の方は、積極的な女の子の態度をセーブするよう。
    彼にはちょっと霊感があり、そのことをあっさり受け入れるクロエ。
    まだお互いにつきあい方もわからないのは~無理もないのですが。
    母とは決定的な亀裂が…

  • とりあえず上巻読了。
    少女漫画風、ケータイ小説風なストーリーだと言われてしまうとそう感じてしまいますが、10代(青年期?)特有の不安定さからくる危うさや、まだ護られている立場のはずが、子供と大人の狭間故に拠り所がなくどうしようもなく感じてしまう孤独感、そういったものを上手く描けていると思います。
    彌生くん、四条くんはじめとする同級生男子と不良たちとのギャップが、そっち側に引きずり込まれるな〜帰って来い〜と気持ちがヒリつく。
    このところ島本さんの作品がイマイチだなーと感じていたのですが、上巻でそれなりに引き込まれたので下巻に期待。

  • 下巻にまとめて。

  • 少女のたった数年の物語だけどなんといろんなことがあるんだろうか。女性の強い部分、弱い部分を丁寧に書いている。
    周りの男性から大切に扱われない主人公。
    ちょっと悲しい描写も多い。
    宗教も絡んでストーリーは複雑になるけれど日常とはこういうもの。ただ小説となると読者の興味がそがれると思う。
    その点、直木賞を取ったファーストラブはしまった作品になってます。

  • 2017.5

  • 恋空読んだ時とちょっと被る印象だけど、重々しいのに読み切ってしまった。

  • 主人公の茨城での中学〜高校の途中までの話。めまぐるしくいろんな事があって、どうしようもなくなって、手紙のやり取りをしていた写真の師匠のところの東京へ行く。今後もいろいろあるのでしょう。第1章というべきですかね。

  • 星を4にしてますが、結末の抜けの良さで本当は4.5です。

  • 島本理生は、私と同年代の作家だ。

    この作品の舞台は(物語の中で明示されないけれど)90年代後半~2000年代前半くらい。
    十代後半の主人公の居る世界は、場所こそ違っていても、私が十代後半を過ごした時間とほぼ同じ。だから、その空気感や雰囲気はよくわかる。

    あの頃は、いろんな意味での過渡期。
    高校生でも携帯電話を持つようになってきたり、カメラがフイルムからデジタルへと変わりつつあったり。

    その点でひとつ思うことがある。

    この作品が発表されたのは2010年12月。日本でiPhoneが発売されたのは2007年夏。カメラは、もうデジタルが当たり前だった(もちろん、フイルムを使う人もいるのだけど)。

    つまり、今の若者が読むと、どう感じるのだろうか?と。

    この上巻は、常にいろんな不安がつきまとう。
    読むのを止めてしまおうかと思ったけれど(続きが恐い)、それでも読み進めた。

  • 上巻。

    なんか、少女漫画みたいだなあという印象。
    特に普通の女の子と、ヤンキー(死語?)だけど根は優しい先輩のところとか。

    のめり込むようにサクサクっと読み切った上巻。下巻はどうかなー


    以下引用

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    もうなんだか色んな気持ちを我慢出来なくなった私は、怜ちゃんと沙由ちゃんにすべてをぶちまけて、三人で相談していろいろ作戦を実行したけど(彼のそばで「やっぱり休みの日は男の子と出かけてみたいよねー」と言いまくる。目の前で雑誌を広げて、「この映画ってすごい面白いらしいよ」とふってみる。等々)鈍感を全身に貼り付けたような酒井君は、きょとんとしたまばたきをくり返しながら、そうなんだ、を連発するばかりで、まったく話にならなかった。

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    「こんなものまで見えるの?」
    「いや、初めて。だけど、よく考えたら、未来が見えるようりは過去が見えるほうが、なんか、そこまで不思議じゃないかな、と思って」
    「あ?」
    「だって、もう起こってることだから。理屈は分からないけど、ビデオとか写真に保存出来るんだから、人間の目で見えたって、なくはないかなあ、と思って。でも、山も記憶、いや記録かな、するのか」

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    「女って、なんでもかんでも知りたがって、言わないと怒るし、よけいなこと言ったら、また怒るのな。あれ、なんでか説明してよ」

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    「黒江ちゃん。私と一緒に、大人になるのなんてやめよう」
     言葉の意味はまったく分からなかったけど、そんなことを真顔で提案する沙由ちゃんを少しだけ、怖い、と思って、そっと手を払った。

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     気が付くと、私はそんなわがままを言っていた。送ってくれると聞いたときには、それだけで一生枯れない花を手に入れたような気持ちだったのに。たった半日で、こんなにも贅沢になってしまう。

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    「私、正直、気持ち悪いんだけど」
    「え、ブチが? あいつが気持ち悪いことはクラス全員が知ってるじゃん」
    「そうじゃなくて、いつも普通に同じクラスの子として過ごしたり、接したりしてるのに、じつはそんなふうに比べたし、見たりされてるって、怖いよ」
    「まあねえ。それは分かる。でも、うちらだって、男子のこと、好きだの嫌いだのキモいだの色々言ったりするわけだし」
    「うん。けど、なんか見られるのって、特別、嫌な感じがして」
    「酒井君ってまったくそういう気配ないよね」
    「うん、だから安心するんだよね。それにさっきだって、私が危ない目にあったからって、送ってくれたし」
    「うそ。すごい、優しいじゃん」
    「そうだよ。優しいんだよ」

    --------------------------------------------------

     怜ちゃんには、車で連れ去られそうになって途中で逃げ出した、とだけ伝えていた。女の子同士ならなおのこと、あのときの気持ち悪いとか惨めさが分かってしまいそうで嫌だった。昨日まで対等だった友達に、それで同情されるのとか耐えられない。

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    「べつに自分のことを好きな人とだけデートしなきゃいけないなんて決まりないじゃん」

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    「ふうん、お母さん働いてるんだ」
    「あ、違う。うち、父親いないから」
     一瞬の沈黙があってから、冬馬君はしごく礼儀正しい口ぶりで言った。
    「そうなんだ。ごめんね。変なこと訊いちゃって」
     私は、大丈夫だよ、と言った。少しだけ胸の中が霞んだような気分で。
     私の家族の話はべつに変なことじゃない、という反論は、すぐに喉の奥に消えた。

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     まだ会って二度目なのに、使われることが不快じゃない。羽場先輩は自分がしたいことしかしないから、私が次にどんな言葉を用意しようか悩む必要もない。身勝手であることがかえって他人を自由にさせることがあるなんて。そんなことを考えながら、冷蔵庫を開けた。

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    「羽場先輩を撮ると、たいがい面白い写真になったから。それは私の力じゃなくて」
    「藤枝さん、それ、本気で言ってるんですか?」
     私は、え、と訊き返した。
    「これ、一対一で撮ってたんですよね。この顔をさせたのも、その瞬間が良いと判断してシャッターを押したのも、ぜんぶ藤枝さんです。そういうのをひっくるめて、僕は、すごいと思う。そりゃあ、見ればすぐに彼氏だって分かりますけど、今だと思う瞬間を見つけることは、誰にだって出来ることじゃない。僕と違って、藤枝さんは才能あります。きっとプロのカメラマンになれると思います」

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    「なに言ってるんですか。藤枝さんみたいに、他人にいきなりカメラ向けることが出来る人が弱いわけないじゃないですか。僕は、短い間でしたけど、一緒に写真部が出来て楽しかったです。でも正直つらかった。写真の技術よりも、藤枝さんには、ぱっと人の心に踏み込む力がある。それが一番の才能だと思いました。どうせ僕は凡人ですよ。月並みなことしか言えません。ただ、すごくなる可能性のある人が、それを投げ出そうとしてるのを見て、腹が立つだけです」

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    引用おわり。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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